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アートフェアを巡る二人旅(後編)  イギリスのユースカルチャーも感じられる「ジ アナザー アートフェア」「モニカ」をフォトレポート

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2017年12月4日

アートフェアを巡る二人旅(後編)  イギリスのユースカルチャーも感じられる「ジ アナザー アートフェ


 

アートフェアを巡る二人旅(後編)  イギリスのユースカルチャーも感じられる「ジ アナザー アートフェア」「モニカ」をフォトレポート

 

 

 

 

 

世界のトップギャラリーが集まるコンテンポラリーアートの見本市「フリーズ・ロンドン(Frieze London)」が、今年も10月5日〜8日の4日間、開催し多くの人で賑わいました。(フリーズのレポートは前編で、どうぞ)

 

この時期は、「アフォーダブル・アートフェア(Affordable Art Fair)」や「ロンドン アートフェア(London Art Fair)」など、ロンドンではいくつものアートフェアが開催されているので、見比べてみると面白そうです。

 

今回は、1980年代後半にイギリスの若手アーティストのムーブメントとなった「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(Young British Artists、略称YBA)」の立役者である「サーチギャラリー(Saatchi Gallery)」主催の「ジ アナザー アートフェア(The Other Art Fair)」と、ストリートアートを多く扱うフェア「モニカ インターナショナル アートフェア(Moniker International Art Fair)」を訪ねました。前回に引き続き、街やアートフェアの解説を、ロンドンでアート専門のガイドやツアーコーディネーターをしている吉荒ゆうきさんに依頼しています。

 

 

撮影にもご機嫌で応える、この辺りで有名なワンちゃん

 

 

この二つのアートフェアは、インドやパキスタン、バングラディシュなどのアジア系移民が多く住むイースト・ロンドンのブリックレーンで行われています。富裕層が住むウエスト・ロンドンに対してこのショーディッチ地区一帯は、あまり裕福ではない階層の人たちが暮らす地域ですが、近年若いアーティストが集まるようになりギャラリーやカフェが並び、おしゃれな街に変わっています。ロンドンで外食をすると高くてあまり美味しくないというイメージがありますが、カレーやパキスタン料理など安価で美味しい多国籍なアジア料理を楽しむにはこの辺りが、穴場だったりするそう!

 

 

こちらはトルコ料理のお店

 

 

アートフェアの会場を目指す途中、ストリートアートのメッカでもあるブリックレーンを散策。多くのグラフィティやストリートアートを見ることができます。

 

 

 

 

ゆうきさん:「ストリートアートはロンドン各地で見ることができますが、いい作品に出会える可能性が高いのは、ブリックレーンとショーディッチです」

 

ここから少し歩けば、かの有名なバンクシー(Banksy)の作品も何点か見ることができ、プラスティック板で保護されているものもあれば、ビルの看板に隠されてしまい、他の作家に上書きされて消されてしまうこともあるようです。オークションに出品されれば数千万円の値がつくこともある作品への扱いとは思えませんが、それもストリートアートのユニークな側面かも知れません。

 

 

 

 

あの切り裂きジャックの犯行現場になったという道から少し歩くと、会場になった元ビール工場の「トゥルーマン」があります。

 

 

  • アートが暮らしの中に自然にあることが分かる 「ジ アナザー アートフェア(The Other Art Fair)

 

 

 

 

この二つのアートフェアは会場が隣接しています。まずは「ジ アナザー アートフェア(The Other Art Fair)」へ。同フェアではインデペンデント(独立した)ギャラリーや作家個人が展示・販売を行っています。

 

 

 

 

 

 

ロンドンのグラフィックデザイナー、Dan Hillier(ダン・ヒリアー)のブース。イギリスのバンド「Royal Blood」のアルバムジャケットに使われた作品も

 

 

バーカウンターがある会場内で、一休み。ビールを飲み進める間にも、大きなキャンバスを抱えた来場者がチラホラ見られます。

 

 

 

 

ゆうきさん:ロンドンではアートにそれほど関心のない人でも、家の壁に絵を飾ったりします。私が以前住んでいた家は賃貸でしたが、作品を飾るフックが付いていました。それだけアートが身近なのかも知れません」

 

筆者:「日本人は、展覧会で鑑賞することはあっても、なかなか作品を購入するまでに至らない気がします。それは自分も含めてですが…。あと、印象としてはコミケ(コミック・マーケット)に近い気がします。作家がブースに立って作品を勧めてくるので、購入することがそれほど遠いものに感じません。フリーズと比べて近い距離感を感じるこの会場の方が、庶民の私には居心地がいいですね(笑) 今日はどれか買ってみるのもありかなぁと思えてきました」

 

ゆうきさん:「お土産にぜひ一枚!(笑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

窓の落書きは来場者が描いたものでしょうか

 

 

  • 街のストリートカルチャーを感じる 「モニカ インターナショナル アートフェア(Moniker International Art Fair)

 

 

 

 

前述したように、ストリートアートのメッカでもあるブリックレーン。アーティストたちは神出鬼没で、明日には落書きとして消されてしまうかも知れない作品が街中に溢れる地域です。

 

 

 

 

モニカの会場になった場所はいつもいろいろなイベントが行われるスペースで、その地下はヴィンテージの洋服店なんだとか。中に入って会場まで上がる階段の壁も落書きだらけで、この雑多な感じはフリーズにはないかも知れません。

 

 

 

 

入り口でまず登場するのが、部屋の真ん中を横断する線路。ストリートアートが多く出品されるアートフェアだけありますね。ストリートアートはニューヨークのグラフィティが起源で、ライターと呼ばれるアーティストたちが電車やトンネル、高架下などに描いたことで知られています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ると、ストリートアートを中心に、比較的手ごろな作品が展示・販売されています。

 

こちらはゆうきさんによるとストリートアートの中でも、有名な作家の作品なのだとか。

 

 

 

 

 

 

そしてバンクシー(価格は要相談!)や、ストリートアーティストの大御所 STICKの作品が販売されるブースも。

 

 

 

 

 

 

 

 

イースト・ロンドンで盛んな、パブやクラブ、カフェなどのユースカルチャーをそのままに詰め込んだような会場構成。ストリートのいかがわしい雰囲気も(ゆうきさん曰く、今ショーディッチ地区は、比較的安全なので安心して観光を楽しめます、とのこと)会場に漂います。

 

 

 

 

 

 

 

 

大イベントとして知られる「フリーズ」に対抗しているともとれる、全く同じ日程に開催。会場にはフリーズとは全く階層の違う客層が訪れるため、イギリスが抱える格差も体感できます。

 

 

文・写真:石水典子

ガイド:ArtLogue代表 吉荒ゆうきさん

(公式サイト http://www.artlogue.net)

 

 

【概要】

「The Other Art Fair」

会期:2017年10月5日〜8日

会場:The Old Truman Brewery

住所:91 Brick Lane, E1 6QR, London, UK

公式ホームページ:http://www.theotherartfair.com

 

「Moniker International Art Fair」

会期:2017年10月5日〜8日

会場:The Old Truman Brewery

住所:91 Brick Lane, E1 6QL London, UK

公式ホームページ:https://www.monikerartfair.com

 

 

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Writer

石水 典子

石水 典子 - Noriko Ishimizu -

ライターです。

元々は作家志望でしたが、藝大受験で4浪し断念。予備校生時代に周囲にいた、アーティストの卵たちの言葉に影響を受けた10代でした。

今は、取材することで言語化されていない言葉を引き出し文章化するインタビュアーとして、アートの現場に関わりたいと思っています。

そして今、興味があることは場の活性化です。

 

好きなアーティストは、ヨーゼフ・ボイス、アンゼルム・キーファー、ダムタイプ、ナムジュンパイクなど。日本根付研究会の会員で、江戸時代から続く細密彫刻、根付(ねつけ)の普及に努めています。