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楽しみながら挑戦し続けた生涯「シャガール -三次元の世界」

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2017年10月9日

楽しみながら挑戦し続けた生涯「シャガール -三次元の世界」


 

楽しみながら挑戦し続けた生涯「シャガール -三次元の世界」

 

今年はとにかくシャガールが盛り上がっていますね!
3月からポーラ美術館で開催中の『ピカソとシャガール 愛平和の賛歌』も”巨匠2人の対話”というユニークな切り口でしたが、今回の東京ステーションギャラリーで始まった『シャガール -三次元の世界』もタイトルからして斬新。
本展は、絵画や版画作品のイメージが強いシャガールが、晩年に取り組んだ彫刻にフォーカスした展覧会です。彫刻・陶器が約50点も展示されるという大満足の内容となっています!
早速、日本初公開作品が目白押しの”皆さんの知らないシャガール”に出会える本展を2つのポイントに絞ってレポートしちゃいます。

 

 

①絵画から彫刻へ

 

 

会場入ってすぐに広がる空間には、シャガールの作品の中でも特に有名な『誕生日』が出迎えてくれます。
名画『誕生日』と共にその約50年後、自身の作品を再構築して制作した彫刻が並べて展示してあるのです。
何歳になっても精力的に新しいことに取り組んだシャガールが、60歳を超えてから始めた三次元への挑戦。元になった絵画が約半世紀という時間を経て三次元になり、私達の目前に…なんとも贅沢な空間です。

 

鑑賞するとただ二次元から三次元にした、という訳ではない様子。
絵画はシャガールの誕生日に花束を持って彼の部屋を訪れたベラ、彼女にキスをしているシャガールの体は喜びで宙に浮き、恋人たちは今にも開いた窓から飛び立ちそう…という場面です。対して彫刻も一見、構図は同じですが、ロケーションは屋外です。月のある背景はどうやら夜空…絵画のシーンの後、高揚した二人は本当に空を飛んで行ったのでしょうか…?

 

シャガールの作品は一見、その色彩や構成から非現実的な印象を受けますが、多くはこのような彼自身の体験を基にしています。それゆえシャガールは自身のことを”リアリスト”と話していたそうです。
そんな彼だからこそ、より現実に近い三次元の世界に興味を持ったのはごく、自然なことかも知れません。

 

 

 

 

②シャガールの彫刻の3大特徴

 

 

プレス向けの解説では、館長が展覧会の設計段階や搬送についても触れながら熱く魅力をかたってくださり、シャガールへの愛を強く感じました。
館長曰く、シャガールの彫刻には大きく3つの特徴があるそうです。

 

 

○石彫りの彫刻が多い

画家が彫刻を作るときに石で作ること稀だそうです。あのルノワール、ドガも晩年には手が上手く動かなくなる等の理由から彫刻を作っていますし、ピカソも作品を残しています。しかし、彼らは粘土をこねて塑像(そぞう)を作っていました。
シャガールが彫刻を始めたのは63歳という年齢。にも関わらず、楽に形をつくれる塑像ではなく彫像にも挑戦しました。
もちろん粘土での作品も展示されています。まるで小学生の子供が初めて粘土に触れたときのように無邪気な笑顔を見せて制作している写真もあり、新しいことへの挑戦を楽しんでいた様子が伺えます。

 

 

○複数のモチーフを彫刻にしている

上に挙げた巨匠達もそうですが、20世紀の芸術家達の彫刻は単独のモチーフを作品にしていることが多いです。例えば人物の胸像や動物等、ある1つのモチーフを作品にします。
一方、シャガールはというと、今回展示されている『アダムとイブ』に見ると、円筒上の1つの作品中にアダムとイブ、動物、さらには樹木等複数のモチーフで構成しているのです。
もし、この作品にインクをつけてコロコロと転がしたら一つの絵になるのでは!?
と思ってしまうほど、一つのシーンを一つの彫刻作品で表しているのです。

 

 

○「素材の前では、謙虚で従順でいなけらばならない」

シャガールの作品が制作する石の彫刻は、元々の石の持つ形を残して作品にしていることが特徴です。制約がある中で作品を作ることも楽しんでいたのでしょうか。
絵画や塑像のように好きに形を作ることができない石像に挑戦し、素材自身の物語を形にすることを目指していたのかも知れませんね。

 

いかがでしたでしょうか?

上記のポイントからも年齢を重ねても飽くことなく挑戦し続けたシャガールの生涯がわかるかと思います。
本展はタイトルからも三次元にフォーカスしていますが、絵画からもそのことが伝わってきました。
キュビズム的な立体の捉え方や視点の置き方を勉強しているような作品もあります。しかしシャガールはそこからキュビズムを追及していくということではなく、研究の中でキュビズムの技術や考え方を栄養のように吸収し、更に自分の学と技術を磨いていく…。

 

気づけばどの作品も”シャガールらしい”作品になっていました。
私はそこに彼の最大の魅力があると強く想いました。

 

 

 

 

様々な角度から彼のアート作品の魅力を伝える本展は私達に”シャガール”を三次元で見せてくれるかも…?
12月3日(日)まで、金曜日は20時まで開館中なのでお見逃しなく!

 

 

文:山口 智子
写真:新井 まる

 

 

 

□開催概要□

 

展覧会タイトル
『シャガール 三次元の世界』

 

会期:2017年9月16日(土)~12月3日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
休館日:月曜日(9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
開館時間:10:00~18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館30分前まで
入館料:一般1,300(1,100)円、高校・大学生1,100(900)円、中学生以下無料
※( )内は前売料金。7月1日(土)-9月15日(金)販売
ローソンチケット(Lコード=35700)、イープラス、CNプレイガイド、セブンチケットで事前にご購入のうえ、ご来館ください
※20名以上の団体は、一般800円、高校・大学生600円
※障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添者1名は無料)
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201709_chagall.html

 

 

【シャガールについてもっと知りたい方はこちらもどうぞ!】
ポーラ美術館が叶えた2人の”対話”「ピカソとシャガール~愛と平和の賛歌~」

安心感を与えるベラ ~一途に愛される女性になる方法~

 

 

 



Writer

山口 智子

山口 智子 - Tomoko Yamaguchi -

皆さんは毎日、”わくわく”していますか?

幼いころから書道・生け花を始めとする伝統文化を学び、高校では美術を専攻。時間が許す限り様々な”アート”に触れてきました。

そして気づいたのは、”モノ”をつくることも大好きだけれど、それ以上に”好きなモノを伝える”ことにやりがいを感じるということ。

現在、外資系IT企業に勤めながらもアートとの接点は持ち続けたいと考えています。

仕事も趣味も“わくわくすること”全てに突き動かされて走り続けています。

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