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こちらから見る、そちらの世界。「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」@国立新美術館

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2015年7月9日


こちらから見る、そちらの世界。「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」@国立新美術館


日本のマンガ、アニメ、ゲーム世界に類を見ない多様な表現で、社会情勢の変化や進化するテクノロジー作品世界に投影し、私たちに現実や未来を提示してくれます。

 

作品と作品との関連性を汲み取りながら、その時代の社会やテクノロジーを考察していく本展では、日本のマンガ、アニメ、ゲームが与える私たちの意識やライフスタイルへの影響だけでなく、日本社会の重層的な側面に触れられます。

 

お越しになった方に注意してほしいのが、漫画家・手塚治虫が亡くなった1989年から現在までの約25年間焦点をあてている点です。紹介するテーマや作品が、日本のマンガ、アニメ、ゲームのすべてではないということを念頭に入れて展覧会をお楽しみください。

 

それでは、8つに分けられた構成にそって、ピックアップして紹介していきましょう!

 

第1章 現代のヒーロー&ヒロイン

変身や必殺技を武器に、仲間と団結して、目的を成し遂げる。

7月18日から大阪会場でも展覧会が開催される『NARUTO -ナルト- 』や、昨年連載20周年を迎えた『名探偵コナン』。その他にも今年デジタルアニメ化された『美少女戦士セーラームーン』や、幼少期に憧れていた『少女革命ウテナ』など、『友情』や『正義の心』に支えられたヒーロー、ヒロインたちを作品とともに紹介しています。こちらのブースでは誰もが興味を持ちやすいところから深い作品世界へのイントロダクションになっています。

 

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第2章 テクノロジーが描く「リアリティー」ー 作品世界と視覚表現

1990年代以降のパソコンや携帯電話、そしてWindows95発売に伴うインターネットの普及は、私たちのライフスタイルを一変させました。情報発信技術とインターネットの広がりは、その情報の伝達速度だけでなく、コミュニケーションのかたちに大きな変化をもたらしました。

テクノロジーの発達は私たちの生活を豊かにしてくれます。

掃除を手伝ってくれるロボットや体に装着できる小型カメラなどは身近になりつつ、マンガ、アニメ、ゲームではデジタル技術の映像表現を用いた作品などが主流になってきています。

 

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GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』や『イノセンス』、『機動警察パトレイバー』や『イヴの時間』。

コンピューターによって人工的に構築された現実感と現実を差し替える仮想現実や、現実の一部を改変する技術を用いる拡張現実。ロポットやAIといったテクノロジーネットワーク社会背景とした世界観を持つ作品や、制作技法として3次元CGなどのデジタル映像技術を駆使した作品が紹介されています。

デジタル映像技術の進歩は私たちに視覚的表現の新たな可能性を提示してくれています。

 

第3章 ネット社会が生み出したもの

私たちに親しまれている作品の中にはネットで人気を博して別ジャンルに展開されたものが多数あります。

テジタル技術を駆使した制作技術とインターネット社会の広がりによって、マンガ、アニメ、ゲームを作り、共有するプロセスは変化してきました。作品の共有作り手と受け手(読者や視聴者、プレーヤー)直接つなぎ、その関係性は創作にフィードバックしていくサイクルとなっています。インターネット上での情報共有やコミュニケーションが新たな作品を生み出すベースになっています。

 

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第4章 出会う、集まる ー 「場」としてのゲーム

ゲームはひとり部屋にこもって遊ぶもの…、それは今や古い見解です。

ゲームボーイの登場以降、テレビの前を離れたプレイが可能になりました。

ワイヤレス通信で同じゲームを仲間と共にプレイできるようになり、その後インターネット上の仲間と協力してミッションをクリアできるようになりました。ゲームの世界では他者とのコミュニケーションが必須になってきています。

その一方ゲームセンターでは、画面の中で他のプレーヤーとコントローラーごしに対戦し、強いプレーヤーはちょっとした有名人にもなりました。

やがて家族連れやカップルも楽しめる音楽やダンスのゲームが次々と登場し、プレイすること自体がひとつのパフォーマンスと言ってもいい作品も多く生み出されてきました。

プレーヤー自身が遊ぶだけに留まらず、観客の目を引く作品の「実演者」としての役割を持ち、作品の「完成形」を押し広げる役割を担うだけでなく、ひとつの場をつくる要素としても活躍しています。

プレイすることによってその周りにいる観客をも巻き込んだ体験の共有へと繋がっていきます。

 

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第5章 キャラクターが生きる=「世界」

アイドルのプロデュースやプロスポーツチームの監督、クラスのあの子と交際…

現実ではなかなか叶わない夢も、マンガ、アニメ、ゲームの作品世界では体験できます!

特に表現や技術の進歩によってキャラクターが歌い、踊るようになったことで、音楽はキャラクターが持つ重要な「個性」となっています。今ではボーカロイド・ソフトウェア「初音ミク」を文字通りプロデュースし、楽曲をインターネットに公開することで、真の意味で「プロデューサー」になれるのです。

90年代以降、キャラクターは物語のストーリーに必ずしも従属した存在でなくなりました。

ヒーローやヒロインとは違う「個性」や「魅力」を持つキャラクターが集まることにより、キャラクターが生きる空間としての「世界」が確立され、そこに群像劇としてストーリーが生み出されていくようになりました。

 

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第6章 交差する「日常」と「非日常」

「涼宮ハルヒの憂鬱」などの不思議な仲間との学園生活が描かれている、日常に近い世界の中で非日常が紛れ込む作品や、「新世紀エヴァンゲリオン」などの制服を着てロボットを操縦するシーンが印象的な、非日常の世界に日常を取り入れた作品。また、「らき☆すた」などの作中の思い出・名シーンをめぐる聖地巡礼を目的とするような、現実の中に非現実を重ねるといった日常と非日常が交差する作品の数々が紹介されています。

 

第7章 現実とのリンク

マンガ、アニメ、ゲームは時に現実社会から強く影響を受けた作品を生み出します

そのジャンルの中でもマンガは世相に素早く反応し、その時に応じたテーマを多彩な表現で描かれてきました。恋愛や学園ドラマ、料理や職業、震災などの大きな出来事など…私たちの実生活にリンクする共感しやすい題材選ばれています

特にこちらの展示ブースでは、実社会と繋がりがあるテーマを持つ作品を中心に、マンガの作画を用いて紹介してくれています。

 

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第8章 作り手の「手業」

マンガ、アニメ、ゲームにおけるなめらかな動きやリアルな映像表現。これはITや映像技術の進化だけで表現できるものではありません。技術を使う作り手の「ワザ」や「思い」がこめられてこそ、世界に類を見ない映像表現が生まれ、見るものに感動を与えてくれているのです。

こちらのブースではマンガ「GANTZ(ガンツ)」の制作風景を映像で紹介したり、アニメ「マクロスプラス」の有名なミサイルのシーンを作画とセル画を用いて解説してくれたり、ゲーム「グランツーリスモ6」のリアルな映像を追求するため、レーシングカーのレーザーによる3次元での計測風景をおさめた写真を展示していました。最後には手塚治虫の原作アニメ「メトロポリス」の作画やセル画、風景画で締めくくられていました。

 

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時を経て変わったもの、時を超えて受け継いだもの…この四半世紀の間で複合メディア表現として深化しつづけている日本のマンガ、アニメ、ゲーム。今後の未来を展望することができ、私たちの想像力や創造力を養えると内容になっています。最近ではクールジャパンの大きな波に乗り、海を超えて大きなムーブメントになっています。これを機会に日本のマンガ、アニメ、ゲームの文化に触れそれらが齎した日本社会の側面に触れてみてはいかがでしょうか。

 

【展覧会概要】

 

ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム

 

会期:2015年6月24日(水)~8月31日(月)

休館日:毎週火曜日

開館時間:10:00-18:00、金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)

会場:国立新美術館 企画展示室1E

主催:国立新美術館

観覧料:当日1000円(一般) 500円(大学生)

    

【国内巡回予定】

 

会期:2015年9月19日(土)~11月23日(月・祝)

休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)

会場:兵庫県立美術館

 

文 / 新麻記子   写真 / 洲本マサミ