東京都現代美術館で同時開催されていた3つの興味深い展覧会。
その3つを一挙ご紹介します!
《ガブリエル・オロスコ展‐内なる複数のサイクル》
(5月10日まで開催中)
ガブリエル・オロスコは、メキシコ出身でニューヨーク、メキシコ、パリを拠点に活躍している現代美術アーティスト。今回日本国内では待望の初個展です。
今回の個展は大きく9つの章に分かれており、
まず日常の一瞬の中にある新しい発見を捉えたような写真からはじまります。
オロスコはカメラマンなのか!?と思いながら、次の部屋に足を運ぶと、
今度はオロスコの代表作、「La DS」。
1950年代製のシトロンDSを分割して張り合わせた大きな車のオブジェが現れます。
特に印象的だったのが、ネットの代わりに中央に蓮の池が置かれ、四隅は丸みをおびている卓球台「ピン=ポンド・テーブル」。
これは実際に遊ぶことができ、形が違うことによって普通の卓球とは異なる動きを強いられるのが特徴です。
私がこの作品を前にして一番強く感じたのは「自分の心の変化」でした。
中央に蓮の池がなかったら私は絶対卓球をしていたと思いますが、もし、自分の卓球の下手さで生きた蓮を傷つけてしまったら…。と思ったらこのゲームをすることができなかったのです。
もちろん、遊ばなかったというのは私の選択なのでみなさんにはぜひこの奇妙な卓球台で遊んでほしいです!!
このようにしてオロスコの作品群は自然や日常の中の一瞬を捉えたものや、ピン=ポンド・テーブルのように新たな発見や体験を生み出すものなど、多彩でとてもインタラクティブ!
今回の個展は、そんなオロスコの魅力を過去作品からすべて楽しめるようになっているので
是非足を運んでみてはいかがでしょうか?
《未見の星座(コンステレーション)‐つながり/発見のプラクティス》
コンスタレーション…
一見無関係に並んでいるようにしか見えないものが、実は全体的な意味を含んでいるものに見えてくること。
コンスタレーションという言葉の意味のように、この展覧会は7人のアーティストたちを取り上げ、一見バラバラに見えるこの7人のつながりを発見し読み解くという多様な表現の展覧会になっております。
どの作品も非常に面白かったのですが特にわたしがおすすめしたい作品を3つ紹介します。
志村信裕「Dress」
この作品は東京都現代美術館があった場所がかつては海だったことにインスピレーションを得た作品。
今も眠る水の記憶に光を当てたいとつくられ、無数のリボンに小名木川と隅田川が合流する場所の夕景を投影した作品です。
その空間はただただ美しい光が広がっています。
太田三郎「Seed Project」
切手を使った作品で知られる彼の展示の中でも特に面白かったのが「奥の細道 1997」。
松尾芭蕉の奥の細道をモチーフに、奥の細道の中に登場する場所の郵便局の消印と奥の細道の記念切手で結んだ作品です。
「人と人を繋ぐ切手は「紙の宝石」とも呼ばれ、小さくても綺麗なものが多い。
そして消印の中には「時間」と郵便局名という「場所」が明記されており、これらを組み合わせることでさまざまな作品がつくれるだろうと考えた。
肉体はこの時間、今いる場所にしか存在しないということである。
人間は他者と「時間」や「場所」を共有でき、そのうえ想像力をもって一瞬のうちに見えない世界を旅することができるのではないだろうか」と太田さんはおっしゃっています。
SNSやメールが浸透している現代の中で、手紙、中でも切手と消印にロマンを感じられた作品でした。
淺井裕介「泥絵」
世界各地を巡り、その土地の土を使って絵を書いてきたアーティスト。
今回の展覧会では20メートルの壁に世界各地のに現代美術館の土を加えて描きます。
この絵は公開制作になり、会期中どんどん絵は広がります。
また会期最終日には消す作業も公開されたそう。
まるで森の中に紛れ込んだようにたくさんの生き物や植物の絵で壁が埋め尽くされており、圧巻のスケールとなっております。
《菅 木志雄 置かれた潜在性》
菅 木志雄、“もの派”の中心人物であり、日本を代表する現代アーティストのひとりです。
「もの派」とは1960年代から日本で主流になった石、木、紙、綿、鉄板、パラフィンといったものを作品とした現代芸術の動きです。
ものへの還元から芸術の再創造を目指しました。
今回の展覧会では石や木といったものの他にアルミやワックスなどを使った作品も展示されています。
また、ファン必見の菅木志雄氏の制作ノートも展示されていました!!
【インフォメーション】
ガブリエル・オロスコ展 -内なる複数のサイクル
会期
2015年1月24日(土)−5月10日(日)
休館日
月曜日(5/4は開館)、5/7
会場
東京都現代美術館(企画展示室3F)
開館時間
10:00-18:00 ※入場は閉館の30分前まで