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【前編】傑作映画とともに振り返る!第28回東京国際映画祭レポート

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2015年11月23日


【前編】傑作映画とともに振り返る!第28回東京国際映画祭レポート


第28回東京国際映画祭が10月31日で閉幕した。
映画祭の魅力は一般公開前に注目作品をチェックできることは
もちろんのこと、国内外の映画製作者との交流も大きな魅力のひとつである。

本年東京グランプリ・最優秀女優賞に輝いた『ニーゼ』の
ホベルト・ベリネール監督のインタビューに続き、
ここではインディペンデント映画だからこそ作家性が強く、
エネルギッシュな光りを放つ国内外の3作品をピックアップしたい。

直接お話しを伺ったエピソードも織り交ぜながら、
前編・後編に渡って本年東京国際映画祭を振り返る。

 

まずは個性豊かな日本のインディペンデント映画を集めた日本映画スプラッシュ部門の中から2作品を紹介する。

 

◇『ケンとカズ』(日本映画スプラッシュ部門作品賞受賞) 

自動車工場での整備士を隠れ蓑に、覚せい剤を売りさばくケン(カトウシンスケ)とカズ(毎熊克也)。
ケンは、交際相手が妊娠し、家庭を築くため、足を洗おうと決意する。
しかし、悪友カズの暴走は日に日に増し、闇組織を裏切る行為がふたりを危機的状況に追い込んでいく・・・

 

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俳優陣が素晴らしい。特に主演ふたりの目の表情に引き込まれる。
また、弟分テルを演じる藤原季節の兄貴を慕う人懐っこさが、緊張感溢れる本作の中で心和ませてくれて魅力的だ。
ハードボイルド一直線、観ている間中固唾を飲んでスクリーンに終始釘付けとなった。
この映画の力強さはどのような製作過程を経て生み出されたのか、監督と主演のお二人にお話しを伺った。

小路紘史監督は本作が初の長編となる新人監督だ。
ポン・ジュノの『殺人の追憶』や、ヤン・イクチュンの『息もできない』にも影響を受けているとの言葉通り、
本気度満点のスリリングなシーン展開が繰り広げられている。
撮影期間は40日間、連日撮影に明け暮れ、監督、俳優も心血を注いだ作品だ。
2年の製作期間を経て、ようやく完成した。
「日本で一番の映画を作ってやろうと思って作った作品。
ここからまた映画を大きく育てていきたい」と小路監督は語る。

 

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▲アウトローな役どころを演じる主演のカトウシンスケさん・毎熊克也さん(右から)

 

理性的でささやかな幸せを望むケン役のカトウさんは「100回は読んだであろう脚本。
そうして役やシーンの大事なことや瞬間に気が付けた」と語る。

暴走列車のごとく波乱を生み出す役どころの毎熊さんは「過激な暴力シーンは枕を
殴って役作りに備えた。すると、殴るほどに役の実感や怒りへの理解に繋がった」と話す。

 

音の使い方も効果的で、そのシーンの、不穏、恐怖、一瞬の希望
などを引き立て、無音のシーンはシリアスな緊張感をもたらしている。

お話したのが一般上映前の試写後とあって、生の反応に喜びと安堵の表情が伺えた。
作品が人目に触れる前の緊張が解けた様子で、映画作りにおける純粋さと
ひたむきさが清々しくもあった。映画は来年公開される。

詳細は公式ツイッターにて決定次第発表となるのでチェックしたい。

 

【予告】

 

【『ケンとカズ』公式ツイッター】
https://twitter.com/kentokazu_movie

 

 

◇『下衆の愛』

40歳を目前にしながらも夢を諦めきれない自主映画監督テツオ(渋川清彦)は、
映画監督とは名ばかりで女優を家に引っ張り込み、自堕落な生活を送っている。
ある日、才能溢れる新人女優との出会いにより、新作映画の実現に向けて
最後の賭けに出るが現実の壁が立ちはだかる・・・。

 

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©Third Window Films

 

『グレイトフル・デッド』が30ヶ国以上の映画祭で上映された内田英治監督の最新作。

インディペンデント映画界の底辺に巣食う人々の葛藤を描いた本作は、渋川晴彦、
内田慈、忍成修吾、木下ほうか、津田寛治、古舘寛治と実力派がそろって、それぞれの個性が炸裂。
異様なエネルギーを放ち、テンポ良く、最後まであっという間に魅せられてしまう。
下世話な人間の巣窟のような物語だが、皆、映画への一途さがどこか憎めず愛おしい。

 

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(c)Third Window Films

 

個人的に印象深いのは、役にありつくためなら色仕掛けで手段を選ばない女優役の内田慈が女の業を見事に体現。
女の業の深さがやがて思わぬ方向に周囲をかき回していく。
また、無垢な新人女優が人気女優の階段を駆け上る中での葛藤。
言い寄ってくる映画監督にサディスティックに激昂するシーンは圧巻だ。
その振る舞いの背景にはそうまでしなければ平常心を保てない彼女の悲しさすら感じ、目頭が熱くなった。

 

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▲内田英治監督とプロデューサーのアダム・トレル氏(左から) 上映後のQ&Aは大変な盛り上がりとなった。

 

観客からは本作で様々な映画監督が登場し、一体どれに自らを投影しているのか内田監督に質問が及んだ。
対して、内田監督は、「これまで色々なプロデューサーや先輩監督に翻弄されて
きた立場として助監督のマモル役の立場で描いたつもりです(笑)」と述べていた。
内田英治監督とプロデューサーのアダム・トレル氏との息のあった
軽快な掛け合いに観客席からも終始笑いの渦が巻き起こっていた。

それもそのはず、プロデューサーのアダム・トレル氏のキャラクターが本作に負けず劣らず濃くユニークなのだ。
日本語を巧みに操りながらとにかく明るくファンキーなキャラクターの持ち主で、
内田監督の映画作りにおけるプロフェッショナルぶりと本作の映画製作現場について饒舌に語っていた。
これまではイギリスに日本映画を配給しており、本作では遂に日本映画のプロデュースを手掛けた。

「最近の日本映画は面白くない。パッションが底を尽きかけたけど、この映画は本当に好きで50回くらい見た。
(今回の映画製作で)またパッションが戻ったんだよね。だから絶対観てね!」とトレル氏は語っていた。

2016年4月2日よりテアトル新宿にてレイトショー公開が決定している。

 

【予告】

【『下衆の愛』公式URL】
http://www.gesunoai.com

 

映画祭期間中、会場で各作品の映画監督・プロデューサーや出演者にばったり会い、
観た作品の映画の情報交換をしたり、国境や世代を越えてたくさんの出会いがあった。

取材させて頂いた製作チームの明るさに日本映画界にまた
新たな風が巻き起こるかもしれない、という予感すらした。

たくさんの人が入り混じる場、それが映画祭という場であり、濃密かつ豊かなひと時であった。

 

後編に続く

 

文・写真:川嶋一実