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坂本龍一+高谷史郎のインスタレーションが期間限定公開

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2021年8月26日

坂本龍一+高谷史郎のインスタレーションが期間限定公開


坂本龍一+高谷史郎のインスタレーションが期間限定公開

 

 

隅田川をひとつの舞台に見立てた参加型の音楽とアートのフェスティバル「隅田川怒涛」。そのプログラムのひとつとして、音楽家・坂本龍一と美術家・高谷史郎の共作である《water state 1》が9月5日まで開催中です。

 

会場は東京スカイツリーから程近い、どこか懐かしさを感じる下町・東向島。曳舟駅から10分ほど歩いた、大通りの裏手に位置しています。こんなところに?と思ってしまうようなローカルな場所にあるので、お越しの際はご注意ください。

 

 

 

 

制御された水滴が織りなす風景

 

本作は、水そのものを素材としたインスタレーション。まず入口から中に入ると、内部は外とは一転、白と黒のコントラストが効いた凛とした空間が広がります。

 

 

中央には黒の箱。その上には鏡のように反射する、漆黒の水盤がピンと張られています。

 

天井部分には水盤と同じ広さをもつ水滴落下装置が吊られており、18×18の計324ヶ所のグリッド状に配置されたノズルから、落としたいタイミングにプログラミングされた水滴が落下する仕組み。

 

地球上の生命を支える根源的な物質であり、環境条件によってその様態を自在に変える「水」。落下した水滴は水面で波紋となり、互いに干渉し、作品を包む坂本龍一の繊細なサウンドと微かに変化する照明と重なり合いながら「水」へと還っていきます。

 

 

 

着想は坂本龍一のふとした思いつき

 

きっかけはニューヨークにいる坂本龍一から高谷史郎への一通のメール。坂本がシャワーを浴びていたときに風呂場の水面に広がる水滴の波紋をみて、インスタレーションにできないかという相談からこのプロジェクトがスタートしたそうです。

作品の構想を進める中、水滴を制御し、自在に落下させることができる装置を山口情報芸術センターのYCAMインターラボが開発。水の様態の変化を表現した庭のような本作が完成し、2013年に初公開となりました。

 

 

波紋のパターンは3種類あります。

ひとつは、展示会場を含む広範囲の気象データから降雨の位置情報を取り込んで、時間的・空間的に圧縮した1年分を水盤上で再現したもの。約30分の回ごとに異なる年のパターンが再生されます。目の前の水盤に広がる波紋のパターンを見ることは、観察者自身を含む広い範囲の環境を俯瞰していることにもなり、不思議な感覚を覚えます。

ふたつ目は、リアルサイズで降る雨を再現したもので、時間的・空間的に等倍での表現となり、雨の日の切り取られた空間がそこに現れます。最後のひとつは、異なる周波数を重ねてつくる細かい波のようなパターン。

一時的に静寂になるタイミングでパターンが切り替わるので、いまどちらのパターンか見比べてみるのも面白いかもしれません。

 

 

この夏限りの隅田川バージョン

 

今回の展示では隅田川スペシャル版として、隅田川から実際に取水した水を濾過して作品に利用。落下した水滴は天井の装置に戻るという循環する仕組みをとっており、蒸発した分だけを後から補給しています。

また、中央の作品を囲むように四方には大きな石が配置されているのにも気が付きます。隅田川の源流を辿った先の秩父から採取した、古くは約3億年前のものもあるという石たち。現地の素材を使い、その土地ならではの「庭」が出来上がるのもこの作品の魅力でしょう。

 

 

 

展示は完全予約制。予約可能な日時を公式WEBサイトで確認のうえ、この機会にぜひ参加してみてください。

 

文=鈴木隆一

写真=新井まる

 

 

【展覧会情報】

「隅田川怒涛」water state 1(インスタレーション)坂本龍一+高谷史郎

会 期  2021年8月22日(日)~9月5日(日)

時 間  平日12:00〜20:00、土・日10:00〜20:00

会 場  東京都墨田区東向島3-22-10 (北條工務店となり) Google Map

アクセス 東武スカイツリーライン・東武亀戸線「曳舟駅」西口出口より徒歩9分

バス「東向島広小路駅」より徒歩1分

参加費  無料、事前予約制 ※事前予約を公式WEBサイトにて受付

 

 



Writer

鈴木 隆一

鈴木 隆一 - Ryuichi Suzuki -

静岡県出身、一級建築士。

大学時代は海外の超高層建築を研究していたが、いまは高さの低い団地に関する仕事に従事…。

コンセプチュアル・アートや悠久の時を感じられる、脳汁が溢れる作品が好き。個人ブログも徒然なるままに更新中。

 

ブログ:暮らしのデザインレビュー
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【好きな言葉】

“言葉と数字ですべてを語ることができるならアートは要らない”

by エドワード・ホッパー