interview

【映画】『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』安達寛高さん&桜井亜美さんインタビュー

NEWS

2015年3月30日

【映画】『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』安達寛高さん&桜井亜美さんインタビュー


【映画】『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』

小説家3人が、ペンをメガフォンに持ち替えて物語を描きだす。

 

今回、そのうちの2人にインタビューする機会を得た。

ポンポンと投げかけた質問に答えてくれる安達さんと桜井さん。 

小説家という職業に対して、どこか堅いイメージを持っていたことを、胸の中で反省しつつ…2人との会話を続けた。

 

 

 

ADACHI

 

安達寛高 (あだちひろたか)
主な執筆に「リストカット事件」、「くちびるに歌を」。乙一、中田永一、山白朝子の名義で活動する小説家。映画化された小説は多数。
写真集の文・構成を担当するなど多彩に活躍している。学生時代から自主映画を撮り続け、執筆と並行して監督業にも精力的に取り組んでいる。
監督作に、『一周忌物語』、3D映画『立体東京』などがある。

 

 

 SAKURAI

 

桜井亜美 (さくらいあみ)
1996年に小説家デビュー。主な執筆に、「イノセント ワールド」、「MADE IN HEAVEN」。現在は小説執筆のみならず、 映像制作でも精力的に活動。原案・共同脚本として『虹の女神 Rainbow Song』、『FUKUSHIMA DAY』監督 (共に岩井俊二プロデュース) 。「上野樹里の5つの鞄」の一編『ある朝、ひなたは突然に』の脚本などを手がけている。

 

今回、上映される3作品のオムニバスは『コーヒー』がテーマ。
ドリップされた物語はどれも異なる顔を魅せる個性的な仕上がり。
その発想の原点についてお話を伺ってみた。

 

girls Artalk 編集部:

企画としてコーヒーを主軸におきつつも、全く個性の異なる3作になっていることに驚きました。

3人とも物語のジャンルも被っていないし…一体、どのように制作されたんですか?

 

安達寛高さん :

自分より先に舞城さんと桜井さんが脚本をあげてきて、
「どうしよう!書かなきゃ!」と、悩んでたところ…

帰省して、ぼんやり親の車の助手席に乗っていた時に思いつきました(笑)
コーヒーのキャラクター性が「飲みすぎると眠れなくなる」と、いうところにスポットを当てて展開していきましたね。
それから、前回上映会をした際に

トークゲストに来てくださった押井守さんから「君の作品は” 死” をテーマにしているね。」と言われてから

何となく自分の中でそれを意識するようになっていたんです。

 

桜井亜美さん :

コーヒーって、“お茶” のことを指しますよね?
例えば、ナンパの時に「お茶しない?」とか、言い訳に使われることが多くて、

「飲む」という目的ではなく、行動のための手段になっているなぁ…って。
男女の関係においては、「飲む」というところに、とても深い意味を持ちます。
そして、飲んでいる間に状況が一変したりね(笑)
今回、視覚障害者をヒロインにしたのは…

知人に視覚障害者の方がいて“色”を説明する際に上手く伝えられなかったんです。
例えば、「赤」を説明したくても、イチゴみたい…リンゴみたい…に、~みたいって、使えないんですよね!
「炎が燃え上がった時に目蓋に当たってアツい感じだよ。と、」伝えて…

ちょっとだけ理解してもらえたんですけど 別のモードで言わないと分からないので、

ソレって作家としてのテーマになると感じたんです。
それともう1つは、目が見える人って” 視覚” に頼っていることが多くて、

目からの情報に支配されて騙されるんですよね。
目が見えない人は気配や呼吸を敏感に察知する能力が備わるんです。
自分はその感覚に興味があって…そこを「光と影の芸術」といわれる映画で描きたかったんです。

 

興味深い回答が返ってきた。
コーヒーが持つ効果や側面から掘り下げて生み出された物語。

 

girls Artalk 編集部:

物語をつくることに対しては小説家も監督も同じですが、そこにスタンスの違いや、難しさってありますか?

 

安達寛高さん :

監督の時は最初に予算みたいなものを考えちゃうんですよね。
場所代とか…今回は病院のスタジオを借りたんですけど、高くて…(苦笑)
この中だけで物語を成立させちゃおう!と、思いました。
それと…“監督”って現場を切り盛りしなきゃいけないから、

引っ張っていくような体育会系のイメージがあったんですが、

実際にやってみると文系の僕にでもできるものなんだなぁ。って、気づいたんです。
助監督に撮りたい場面を投げかけたりして…

大きな声を張り上げたり、虚勢を張らないんでもいいんだな。って (笑)

 

桜井亜美さん :

最初…小説家と監督って、すごく距離があると思っていたんです。
自分が映像を手がけるなんて考えてもいなかったんですが…

岩井俊二さんと出会って「創ればいいじゃん。」と、何度も言われるうちにその気になっちゃって(笑)
それで、はじめに『MADE IN HEAVEN』という予告作品を作りました。
それは初期衝動だけで作ってしまった作品だったんですけど…

創るということがとにかく楽しくて…自分の他の小説を土台にしたり、
新たに脚本を書いてたりして3分が10分、10分が30分というふうに、だんだん長くなっていきました。
自分の制作した作品を上映するたびに直さなきゃいけないところが分かってきて…

それでどんどんやっていくうちに…
結局、一つの世界を文字でつくる小説家も、映像でつくる監督も、

遠くない存在だということが分かったんですよね。
はじめは映画の、人を動かすところに戸惑いを感じたんですけど。

 

そこでふと疑問が浮かんだ…

 

 

girls Artalk 編集部:

今回、お二人は監督・脚本・編集を手がけられていますが、

役者さんへの演出などはどのようになさっているんですか?

 

安達寛高さん :

僕は演出には2種類あると思っているんですが…
1つは「何秒こちら側を向いて…それから、歩き出して…見上げて下さい。」と、いうような身体的に動いてもらう指示。
そして、もう1つは「こういう気持ちを思い描いて下さい。」と、いうような内情的に訴えかけて、間を作ってもらったり、表情を作ってもらう指示ですね。
その2つを役者とのやり取りの中で織り交ぜながら探っていきます。

 

桜井亜美さん :

私も同じですね。
それと、主人公が視覚障害を持っているということで、

視覚障害者の方たちにお話をうかがって生活ぶりを教えていただきました。

私たちが普段使いがちな「ああいうのとか、こういう感じ」というような曖昧な口調ではなく、
皆さん、喋りかたとかすごくはっきりしていて明瞭なんですよね。

言葉ですべてを伝えきるっていう意識からなんでしょうけど。
だから、そのへんに注意を払って役者さんに指導しました。

 

 

脇を固める実力派揃いの俳優さんや女優さん。そちらの演技も見逃したくないものだ!
続けて、作品の見所を教えてもらうと…

 

 

安達寛高さん :

ピーンと張り詰めた現場の空気感が反映された子役の演技…と、編集力ですね!

結構、上手く繋がらなくて苦労したんです(笑)
でも、その中で、わざと目線を外したり、違和感のある繋ぎかたをしています。

 

桜井亜美さん :

視覚障害者の役を演じるにあたっての演技ですね。
多くの映画やドラマで描かれる障害者の純粋無垢なイメージが逆差別だと感じたんです。
障害者だってひとりの人間ですから、欲望もあるし、主張があるし、わがままだったり振り回してしまったり。
それを普通に入れた人間ドラマとして機能するストーリーが作りたかったんです。
そして、女としてのリアルに触れているところが見所ですね。

 

 

落ち着いた面持ちの安達さんと、とても明るく溌剌としている桜井 さん。

会話のキャッチボールに熱中していたら、あっという間に時間が過ぎていた (笑)

紙から映像へ…苦くて優しい芳醇オムニバス映画作品が誕生した。

相違点がとても面白いと感じたインタビューを経て、劇場にドリップされた物語をもう一度観に行きたいと思う。

 

 

 

『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』
渋谷ユーロスペースにて 2015 年 3 月 28 日(土)~4 月 10 日(金)2週間限定レイトショー

 

bokutachi-omote-shusei

 

*上映中のイベント情報
◎ アフタートーク 上映後22:45過ぎ~23:10 (20分間予定)
3/29(日) 岩井俊二さん、安達監督、桜井監督
4/ 2(木) 行定勲さん、安達監督、桜井監督
4/ 3(金) 本広克行さん、安達監督、桜井監督
4/ 4(土) 鈴木杏さん、安達監督、桜井監督
4/10(金) 安達監督、桜井監督

*来場特典情報
ご来場の皆さまに、監督作家陣が書き下ろした特別短編小説集を限定プレゼント!
3名による合計200枚の短編書き下ろし小説集。
監督陣の名前が小説のタイトルに!?

「舞城王太郎」 著 安達寛高(乙一)
「舞城王太郎」 著 桜井亜美
「安達くんと桜井さん」 著 舞城王太郎
※お1人様につき1冊のプレゼントになります。
※特典はなくなり次第配布終了となります。予めご了承ください。

 

『Good Night Caffeine』 監督・脚本・編集: 安達寛高 

 

Good Night Caffeine

出演: 中村邦晃 庭野結芽葉 贈人 熊谷美香 小深山菜美

撮影:金子雅和/照明:吉川慎太郎/録音:高田伸也/

美術:黒川通利 /スタイリスト:小海綾美/ヘア メイク:タナカタカヒロ/助監督:川口力/制作担当:十文字智/

エンディング曲:「Atelier」齋藤紘良

 

 

『花火カフェ』 監督・脚本・編集: 桜井亜美

 

花火カフェ

出演: 小松彩夏 吉村卓也 小橋川よしと

撮影:中村夏葉/照明:渡辺大介/録音:大川裕紀/美術:黒部通利・布部雅人/

スタイリスト:鍋嶋えりな/ヘアメイク:小島 真利子/助監督:大橋翼/制作担当:杉山優

 

 

『BREAK』  監督・脚本・編集: 舞城王太郎

 

BREAK

出演: 佐藤貴史 岸井ゆきの 中原和宏 酒井健太郎 蒲公仁 樟葉 愛下哲久 大政知己 葛堂里奈 酒井義

撮影:舞城悠二郎/照明:後藤謙一/録音:治田敏秀 /美術:三ツ松いこ/衣裳:永野桃子/

ヘアメイク:小島真利子/助監督:金林剛/制作担当:最上勝司/音楽:小山嘉崇/

エンディング曲: 「for now」ルイ子 _

 

企画:篠﨑真哉

プロデューサー:土井美奈子・川島正規・金子美里
アシスタントプロデューサー:橋本真紀子

製作・制作・配給:リアルコーヒーエンタテインメント

日本/2015年/105分/カラー/ステレオ

©2015 REALCOFFEE ENTERTAINMENT

公式HP : www.realcoffee.jp
twitter : realcoffee_eiga
facebook : www.facebook.com/realcoffee.bokutachi

文 / 新 麻記子