アートの“今”をとくと堪能!アートフェア東京2022
2022年3月11日(金)~13日(日)まで、東京国際フォーラムにて開催された、アートフェア東京2022。現代美術から古美術までが一堂に会した、国内最大級のアートフェアの中から、特に注目したい作品をピックアップしてご紹介していきます。
これが正真正銘の“ストリート”アート
グラフィティの施された鉢に咲く花や、まだらに見える西洋画の花は、どこか重たくずっしりとした印象を与えます。それもそのはず、これらはすべてアスファルトを素材につくられた作品たちです。標識などの道にまつわる事象をモチーフに作品を展開する、田村琢郎によるものです。
アスファルトから顔を出す植物の生命力は、確かにストリートアートの負けん気の強いパワフルさと通ずるものがあります。
そして、横断歩道の下に眠る西洋画の花たちは、もし、道路が整備されていない世界であったら、このように花が咲き乱れていたかもしれないという想像を搔き立てられます。文明化によって、当たり前に存在していた自然の数々が当たり前ではなくなった事実を、改めて感じさせてくれる作品です。
まるで美術館!?鴨居玲の代表作も!
昭和の伝説的画家・鴨居玲の作品が並ぶ日動画廊は、美術館を訪れたかような落ち着きを感じる空間。中央に位置する今回の目玉作品《蛾》を筆頭に、鴨居の象徴的なモチーフである酔っ払いや老人の人物画が並びます。
人間の真髄を捉え、表情や肌質、シルエットにまでそれを昇華させる、たぐいまれな観察眼。そして油彩特有の重たいタッチの裏に垣間見える、鴨居自身の精神面での葛藤。それらをじっくりと鑑賞でき、見本市ながら展覧会のような満足感がありました。
アートフェアに“自販機”!?
The vending machine, Ryan Gander
突如ブースに現れた1台の自動販売機。休憩がてらに飲料を買えるのかと思いきや、実はこれも作品の1つ。コンセプチュアルアートの旗手とも称される、イギリスのライアン・ガンダーによる作品です。
よく見てみると、売られているのはペットボトルではなく、本物の石や3Dプリンターでキャスティングされた石・札束などなど。お値段はなんと299ドル。実はこの値段設定、設置する国の自動販売機で購入できるクレジットカードの上限額に応じて変わってくるのだそうで、日本ではフランスやイギリスに比べてかなりお安く手に入れられるんだとか。ランダムならではのドキドキも楽しみながら、アートに参加できる面白い作品です。
超絶技巧の“花”たち
一面文字通りの銀世界。鋳金作家の高橋賢悟が超精密鋳造法で作り上げた花々が壁を彩ります。生花を型どった型に金属を流し込んでつくられた鋳物の花は、生命の息吹を残したまま時間が止まったかのよう。葉脈の1つ1つまで感じることができる超絶技巧は息を呑む美しさです。
国内外のギャラリーが一堂に会し、昨今のアートマーケットの盛り上がりを肌で感じられた、アートフェア東京。アートの現在を堪能したとともに、アートシーンのこれからにも期待を膨らますことのできる機会となりました。
文=荒幡温子
写真=新井まる
【アートフェア情報】
アートフェア東京2022
開催期間: 2022年3月11日(金)~13日(日) ※会期終了
ホームページ: https://artfairtokyo.com/