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学芸員さん、教えて!いつの時代も世界の憧れ!パリジェンヌの魅力

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2018年1月11日

学芸員さん、教えて!いつの時代も世界の憧れ!パリジェンヌの魅力


 

学芸員さん、教えて!
いつの時代も世界の憧れ!パリジェンヌの魅力

 

 

肩ひじ張らない着こなし、自立したパーソナリティ…。その背景を彩るのはフランスの由緒ある建造物。そう、パリジェンヌはいつだって世界中の女性のアイコン的存在です。

 

そんなパリジェンヌに関する歴史を全網羅した「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」が世田谷美術館で2018年1月13日(土)~4月1日(日)の期間、開催されます。

 

今回、展覧会を鑑賞するにあたって、世田谷美術館の学芸員・塚田美紀さんに、そもそもパリジェンヌって?といった素朴な疑問からアメリカ・ボストンにまで影響を与えたパリジェンヌの存在まで、た~っぷりとパリジェンヌの魅力をお話しいただきました!それでは早速、お楽しみ下さい。

 

 

 


レギーナ・レラング《バルテ、パリ》1955年 Gift of Leon and Michaela Constantiner 2010.429 Münchner Stadtmuseum, Sammlung Fotografie, Archiv Relang

 

 

「パリジェンヌ」とは、パリに生きる女性のこと

 

でも私たちは女性の多くは、そこに「おしゃれ」自分らしく生きるクール大人の女性など、憧れを込めてさまざまな意味を加えているのではないでしょうか。

そんな憧れの存在としての「パリジェンヌ」。イメージの源泉はどこにあるのか?改めて考えてみるのが「ボストン美術館 パリジェンヌ展」です。

 

「ボストン美術館 パリジェンヌ展」は名のとおり、アメリカが世界に誇るボストン美術館のコレクションによって「パリジェンヌ」の姿を追いかけます。

 

18世紀から20世紀半ばまでの250年あまりを見渡すというから壮大ですが、それだけ多彩な作品がボストンにあるという事実そのものが、アメリカ人がいかに強くフランス文化やパリに憧れてきたかを示していて、興味深いですよね。

 

作品を選んだり、カタログの解説文の大半を書いているのは、同館キュレーターのケイティ・ハンソンさん。現代のアメリカで生きる一女性としてのこだわりも感じられる展覧会です。

 

 

 


キュレーターのケイティ・ハンソンさん

 

 

 

展示室に入って最初に目に入るのは、18世紀の豪華なドレス、その奥にはしゃれたティーセット。裕福な貴族の女性たちのきらびやかな生活をまず思い浮かべることでしょう。

 

お伝えしたいのは、彼女たちがそんなドレスを着こなしながら文学者や哲学者、科学者が集うサロンを開く知性あふれる存在でもあったこと。ティーセットも、単なる贅沢品というよりは上質なコミュニケーションのために使いこなされたツール、と見た方が面白いかもしれません。

 

 

 


《ドレス(3つのパーツからなる)》1770年頃 The Elizabeth Day McCormick Collection 43.1643a-c

 

 

 

19世紀になるとパリはファッション産業の中心地になります。階級の上下に関わらずおしゃれを楽しもうとする女性たちが街を闊歩し、ファッション誌がそれをリポートします。

 

ドレスはもちろん、手袋やバッグに靴、外からは見えないコルセットなどなど、おしゃれアイテムはたくさん。そんなアイテムへの欲望とともに、「パリジェンヌ」という存在への憧れが、大西洋の向こうのアメリカで高まるのです。

 

 

 

 
《ウェディンググローブ》1877年 Gift of Mrs. J. D. Cameron Bradley 50.3139a-b
《コルセット》1870–85年 Gift of Mary Finnegan 2013.616

 

 

 


《女性用靴》1865年 Gift of Miss Emily M. Babcock 46.625a-b

 

 

 

たとえばエレガントなドレスを着てツンとすました女性の肖像。パリジェンヌかと思いきやボストンの社交界の華といわれた美女です。

 

 

 


ジョン・シンガー・サージェント《チャールズ・E. インチズ夫人(ルイーズ・ポメロイ)》
1887年 Anonymous gift in memory of Mrs. Charles Inches’ daughter, Louise Brimmer Inches Seton 1991.926

 

 

 

ドレスは、当時パリで大人気だったデザイナーのウォルトのものを参考に、アメリカで仕立てたそう。絵には描かれていませんが、それこそ手袋から靴からコルセットまで、全身くまなくパリふうにキメていたかもしれません。

 

そしてこの自信に満ちたクールな表情。これこそがパリジェンヌとされていたようで、憧れの大きさがわかります。ちなみに彼女はこのとき2児の母、おなかには3人目もいたとか。妻になっても母になっても自分らしいセクシーさを失わないのがパリジェンヌ、とよく言われますが、当時はフランスはもちろんアメリカでも、女性はいわゆる良妻賢母というコースに乗ることが強く期待されていたのです。では、彼女はこの先どんな人生を歩んだのか…。気になるところですね。

 

 

余談ですが、キュレーターのケイティさんのお気に入りは、下のボストン女性の肖像画。いっそう意志が強そうなのが印象的です。

 

 

 


ジョゼフ・フロランタン・レオン・ボナ《メアリー・シアーズ(後のフランシス・ショー夫人)》1878年 Gift of Miss Clara Endicott Sears 30.766

 

 

 

女性たちをめぐる物語の豊かさという点でいえば、この展覧会の最大の目玉はエドゥアール・マネの大作《街の歌い手》。ギターを片手にさくらんぼを食べながら居酒屋から出てくる女性の、何とも凛とした佇まい。

 

 

 


エドゥアール・マネ《街の歌い手》1862年頃 Bequest of Sarah Choate Sears in memory of her husband, Joshua Montgomery Sears 66.304 

 

 

 

当時、女性が自力で稼いで生きていくのは並大抵のことではなかったと思うと感慨深いです。ほぼ等身大の全身像で、ということは従来なら王侯貴族のような重要人物を描くフォーマットを使ってマネが彼女を表現しているのも、興味をそそられます。

 

保守的な批評家からは不愉快に思われたようです。モデルを務めたのはヴィクトリーヌ・ムーラン《草上の昼食》《オランピア》など、このあと大きな物議を醸していくマネの他の作品にも登場しますが、モデルで生計を立てながら、自身も画家として活動の機会を拓いていった女性です。自ら表現することへの思いを手放さずに生きたのですね。

 

美術界の古い制度が壊れていく19世紀後半は女性画家たちが存在感を増してくる時代、本展でも印象派の中心にいたベルト・モリゾや、パリに出て成功したアメリカ人のメアリー・カサットの作品をご紹介しています。

 

 

 


メアリー・スティーヴンソン・カサット《縞模様のソファで読書するダフィー夫人》1876年 Bequest of John T.Spaulding 48.523

 

 

 

ちなみに《街の歌い手》ですが、最終的に買っていったのはボストン在住のサラ・チュート・シアーズ。実家から莫大な遺産を継いで、自分のアートコレクションを築いた富裕層の女性ですが、カサットとの親交があったようですし、シアーズ自身も優れた水彩画や写真作品を残しています。

 

時代の変化のなかで表現し行動するパリとボストンの女性たち、その力強いネットワークを《街の歌い手》ほど見事に伝える作品はないかもしれません。

 

 

他にもご紹介したいことは山ほどありますが、会期中にはレクチャーやトークなどもありますので、続きはそちらで!

 

 

【今回教えていただいた学芸員さん】


撮影:平間至


塚田美紀(つかだ・みき)
2000年から世田谷美術館勤務。展示作品と鑑賞者をつなぐユニークな身体表現のワークショップなどを手がけてきたほか、展覧会のポイントをレベルを落とさずわかりやすく伝えるトークなどが得意。「パリジェンヌ展」の担当ではあるが、どちらかといえばスペイン語文化圏を得意分野とするラテン系学芸員。最近担当した展覧会は、5年がかりで準備した「アルバレス・ブラボ写真展―メキシコ、静かなる光と時」(2016年)。

 

 

【展覧会概要】
「ボストン美術館  パリジェンヌ展  時代を映す女性たち」
会期:2018年1月13日(土)〜4月1日(日)
会場:世田谷美術館
   〒157-0075 東京都世田谷区砧公園1-2
Tel: 03-3415-6011(代表)
開館時間:10:00−18:00
※入場は17:30まで
休館日 月曜日
※2月12日(月・振替休日)は開館、翌13日(火)は休館
観覧料(税込)  一般:1,500(1,300)円、65歳以上:1,200(1,000)円、大高生:900(700)円、中小生:500(300)円
※( )内は団体(20名以上)
※障害者の方は500円(介助の方1名まで無料)、大高中小生の障害者の方は無料
※リピーター割引/会期中、本展有料チケットの半券をご提示いただくと、2回目以降は団体料金でご覧いただけます
主催 世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)、ボストン美術館、NHK、NHKプロモーション
展覧会公式HP:http://paris2017-18.jp/index.html

 

 

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Photographs©Museum of Fine Arts, Boston