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ふとよぎる懐かしい虚しさ 桑原正彦展「fantasy land」【今週のおすすめアート】

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2017年6月20日

ふとよぎる懐かしい虚しさ 桑原正彦展「fantasy land」【今週のおすすめアート】


【今週のおすすめアート】
ふとよぎる懐かしい虚しさ 桑原正彦展「fantasy land」

 

〜girls Artalk的♡おすすめポイント〜

♡東京生まれの桑原正彦さんは近代化への違和感や失われゆく人間性を描き続けてきました。

♡消費される為だけの存在の悲しみをユーモラスさを持って作品に投影しています。

♡淡いトーンで描かれるモチーフたちの佇まいは、どれも現代人が有する、気だるさや虚しさに通ずるものがあります。

♡本展に寄せられた彼の言葉がまるで一篇の詩のように素敵なので全文ご紹介します♪

 

 


Untitled, 2017
acrylic on canvas
33.3 x 24.2 cm
©Masahiko Kuwahara

 

 

 


Untitled, 2016
acrylic on canvas
18.0 x 14.0 cm
©Masahiko Kuwahara

 

 

~アーティストコメント~

子供の兄とわたしは

祖父に連れられて、ハゼ釣りに行った。

幾つの頃だったか。

コンクリートに囲まれた小さな浜辺。

油の広がる海は虹色に光っていた。

 

黒く臭う川。

家の中に溢れる石油化学製品。

増え始めた新建材の住宅。

問題のある加工食品。

 

 

わたしのいた風景。

わたしの一部。

 

 

洗浄。

消去。

新しい包装。

絶え間のない開発、新しい商品。

景色は次第に、白く、明るくなり、

わかりやすい汚れは少しずつ透明になって、

夢の中に溶けていった。

 

 

知らない国。

祖父母、父、母、家の犬や猫たちもとおにこの世界を去った。

 

 

わたしの暮らす地域はこの十数年で姿を変えた。

土壌を浄化した工場跡地は小さな街になった。

新しい道と集合住宅。商業施設、総合病院や公園……。

 

 

きれいな街。

白っぽい、明るい街。

 

 

由来を洗った商品と、

それによく似たわたし。

 

 

静かな書き割りの中を歩いてゆく。

ヒトも、動物も、食べ物も、

とても遠い。

ここが何処か忘れた。

(桑原正彦「fantasy land」2017年)

 

 

 

 

 

【展覧会情報】
桑原正彦展「fantasy land」

会期:2017年6月23日[金]- 7月22日[土]
場所:小山登美夫ギャラリー
住所:東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
Tel:03-6434-7225
Fax :03-6434-7226
開廊時間:火~土曜日 11:00~19:00
休廊日:日、月曜日 及び 祝日

 

 

【♪このアーティストが好きな人にはこの方達もおすすめ♪】
~背景と溶け合う鳥たち~伏黒歩 さん
河原シンスケさん
生命に対する無償の愛しさ 衣川明子さん