篠田桃紅104歳!エネルギッシュな線に人生をみる
えっ、本当に104歳の人が描いたの?!
エネルギッシュな筆触とスタイリッシュなバランスの作品をみていると、まさか100歳超えの作家さんが描いたとは到底思えません。
日本を代表する書家であり美術家の篠田桃紅先生は、2017年3月28日でなんと104歳(!)の誕生日を迎えられました。100歳を超えた今でも、ピリリとお着物を着こなし、作品づくりにも余念がないというので驚きです。

今回の智美術館での展覧会では、1950年代の昔の作品から2017年の最新作まで全部で約50点弱の作品が並びます。80年以上制作を続けられている篠田先生の作品のなかから選りすぐりの作品たちばかりです。

まず、智美術館の入り口を入って正面にあるこちらの作品も、篠田桃紅先生のもの。今回の展示期間に限らずいつでも迎えてくれる、私も好きな作品です。

(左)「甃(いし)のうへ」1990年頃 、(右)「花のたね」1958頃
例えばこちらの屏風の作品は、今回のコレクションの持ち主、トールマンさんがアメリカのオークションで見つけたもの。
元々は銀泥で書かれた字だったのが酸化して色が変わって今の状態になっています。
書いてあるのは、下記の三好達治さんの詩です。
詩は篠田先生が選ばれているそうで、彼女の美意識の一旦が垣間見えるような気がしました。

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夢よりもふとはかなげに
桐の花枝をはなれて
ゆるやかに舞いつつ落ちぬ
二つ 三つ 四つ
幸あるは風に吹かれて
おん肩にさやりて落ちぬ
色も香もたふとき花の
ねたましやその桐の花
昼ふかき土の上より
おん手の上にひろはれぬ
三好達治「桐の花」、詩集『艸千里』(昭和14[1939]年)所収
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作品を見ただけでは、なかなか文字を読むことは難しそうですが、無理に読もうとせずに感じることが大切なのだとか。
ご本人も、
「言葉の意味を見るよりも、線の力、形を見て味わってもらいたい」
と仰っているそうです。


「Momiji もみじ」2016年
こちらは、朱のアクションペインティングのようなものに、ちはやふる の和歌がのっている2016年の新作です。
こちらの作品が出来上がったときに、篠田桃紅先生は、「素晴らしいものが出来たからみて欲しい」とトールマンさんに連絡をいれたという、ご本人自信作。
もともと書からはじまった篠田先生の作品は、墨象と呼ばれる墨と色と線で構成される抽象画や書の作品がほとんどで、いずれもやり直しのきかない一発勝負の描法です。
画面上にサッっと流れていく朱が、まるで紅葉が散る川面の反射のよう。
その上から書が流れてくるというのはなんとも素敵です。
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ちはやぶる
神代も聞かず 龍田川
からくれないに
水くくるとは
(在原業平)
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こちらの作品は、ちょっとめずらしいもので、KITTE名古屋オープンの記念に篠田桃紅先生デザインの切手をつくったときに採用された作品のひとつだそうです。
現存する作家の作品で切手を作ることはあまり例をみないことなのだとか。

篠田桃紅先生は、自分や創作には厳しいけれど、社交的で、ユーモアのある方なのだそう。
「篠田桃紅先生にしか引けない、彼女の線 がある」
と、トールマンさんも仰っていたように、お人柄が作品に出ているのでしょうか。80年以上も妥協することなく作品を作り続ける、そんな篠田桃紅先生と向き合ってお話をしているような気持ちになれました。


勢いのある線や、繊細な墨の滲みは生でみることに意味があると思います。
研ぎ澄まされた美意識がつくりだす作品と、100歳を超えてなお作品を作り続けている篠田桃紅先生のエネルギーをぜひ感じてみてください。
文・写真:新井まる
【展覧会情報】
篠田桃紅 昔日の彼方に
3月29日(水)~ 5月28日(日)
Toko Shinoda
in the autumn of my years…
会場:菊池寛実記念 智美術館
〒105-0001 東京都港区虎ノ門 4-1-35 西久保ビル
開館時間:11:00~18:00 ※入館は17:30までになります