メディア・アートの最前線を五感で感じる!アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」
2017年、NTT東日本が運営する文化施設であるICCは20周年を迎えます。オープン以来、最先端テクノロジーを使ったメディア・アート作品を紹介してきた会場の企画展アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」が”スゴイ”と聞きつけて、さっそく取材に行ってきました!!
★ココがスゴイ!!3大ポイント!★
①テクノロジーによる表現の先駆者である”ART+COM”(以下;アート+コム)と、話題沸騰の売れっ子プログラマー真鍋大度さん率いる“Rhizomatiks Research”(以下:ライゾマ)の国境や世代を越えた競演!
②止まっていないアートです!だから五感で感じ、入り込む!
③見るひとに”簡単にはわからせない”アート!これを読んだら思わず友達に説明したくなってしまうかも!?
ではまず①「テクノロジーによる表現の先駆者である”ART+COM”(以下;アート+コム)と、話題沸騰の売れっ子プログラマー真鍋大度さん率いる“Rhizomatiks Research”(以下:ライゾマ)の国境や世代を越えた競演!」から説明します。
アート+コムもライゾマも、メディア・アートが基盤としてきたテクノロジーによる表現を、社会の中で実践的に機能させている超有名集団です。
しかし、そもそもメディアアートって何?という方もいらっしゃるかと思います。定義は色々ありますが、一言でいうと”最先端のテクノロジーを使った芸術”です。
イメージのつく方が多いと思う例を挙げると、ライゾマが手掛けるPerfumeのライブでの映像演出(紅白のステージをみて”なんだこれは!?”と見入った方も多いのでは?)や、リオの五輪閉会式でライゾマティクスリサーチが手掛けたプロジェクションマッピングはメディアアートに分類されます。
いまでこそメディア・アートは広く知られていますが、1988年にドイツで生まれたアート+コムはこの分野の開拓者的存在といえます。ちなみに今回アート+コムの方々も来日されていました。真鍋さんは以前、ドイツのBMWのショールームで彼らの行った展示を見に行ったというエピソードも披露し、アート+コムのことを「意識せざるをえない存在」だと語っていました。ライゾマは、去年で会社設立から10周年の節目を迎えたところなので、2社には20年程キャリアに差があります。国も世代も異なる2つのスーパーテクニカル集団が同じスペースで競演するというのは、かなり面白い企画です。
レセプションにてライゾマの真鍋大度さんに突撃質問!
②「止まっていないアートです!だから五感で感じ、入り込む!」
本題である、本展作品についての話に移ります。今回は、先にアート+コムの作品を見た上でライゾマが制作したそうです。共通するマテリアルは”光”と”反射”、そして”音楽”です。
どちらの作品も”色”が美しく、また作品は”動きます”!
どういった動きをするのかは、是非自分の目で見てのお楽しみにして欲しいのですが、私が見て感じた感想を一言でいうと、”空間に入り込んでしまう感覚が気持ちいい”です。
テンションは少し異なるのですが、どちらの作品も、見ているうちに気が付いたら時間が過ぎてしまうので、スケジュールが詰まっている方は要注意です!
同じくレセプションにてアート+コムのユッシさんと。
③「見るひとに”簡単にはわからせない”アート!これを読んだら思わず友達に説明したくなってしまうかも!?」
これについては2社の違いから説明しましょう。今まで共通点を挙げてきましたが、決定的に違うのは、観客に”見てほしい、伝えたいモノ”でしょう。まずアート+コムはユッシさんがおっしゃっていた「私たちはテクノロジーや技術を見せたいのではありません。むしろ見る人には(テクノロジーを)感じないでほしい。それよりも”emotion”を伝えたいのです。今回は色と、流れるような動きでそれを表現しています。」という言葉が印象的でした。
実際に作品を鑑賞したところマシーンの無機質さを感じず、”流れる”ようだったり”零れ落ちる”ような動きが滑らかで”自然”だなぁと思ったので、ユッシさんにその秘密はなにかを質問しました。
「音をメカニックにしなかったことが大きいと思います。音楽と動きを連動させているのだけれど、音楽を流し続けるのではなくてあえて少し遅らせてずらしたり、強弱をつけている。動かしては曲を構成・作曲し連動させて、また構成し直して・・・とトライ&エラーを何か月も繰り返しながら制作しました。また動きも上下左右と奥行きを徹底的にプログラミングしてsmoothな動きを生み出しています。」とのことでした。
一方でライゾマの真鍋さんは今回の作品のポイントを以下のように語っていました。
「パッと見て、どうなっているかわからないような、少し複雑な技術を駆使しています。例えば今回の作品は直接床に映像を映し出しているように見えたと思いますが、実はミラーに色の照明を当てて反射させています。そうすると本来鏡を通せば歪みが出ますよね?そこを複雑に計算し最初に鏡に映す段階で歪みを作っているのです。」と聞いて素直に驚きました。”なんかすごそう・・・”と惹かれる作品がその説明を聞くと”そうだったのか!!凄すぎる!!”に変わり、友達に仕組みを説明したくなっちゃいました。
最後に・・・
本展は、作品自体は大きく2つのインスタレーションと、4つの画面に流れる過去の作品映像のみなので少ないですが、”ささっと見る”ことはおそらくできないと思います。なぜなら立ち止まって見入ってしまうから・・・。
世の中を変える新しい技術や取り組みを行っているテクノロジー集団2社の競演はゆっくりとご覧になるのをお勧めします。
私は今回取材してみて、改めて両社のテクノロジーだけではなく、その哲学や思想に惹かれました。
また、2017年も始まったばかりということで真鍋さんに今年やりたいことを質問したところ
「表舞台に立ちたい!今まで実は裏方ってやりたかったわけじゃないんだけどあえてそこに挑戦していたというところがあって・・・でも今年は自分が舞台で踊って、プログラムもやるっていうのに挑戦したいと思って既に準備をしています。」と教えてくれました。
とってもお忙しそうなのでダンス練習なんてできないのでは?と伺うと
「実は月の半分くらいはあえて空けるようにしてるんです。面白いことって結構急にくるでしょ?その時に動けるようにしておきたい。ダンスの時間も作っていますよ!」とのこと。今後の活動も楽しみで仕方ありません。
アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」展は会期が3月20日までなので”アートの最先端”を是非お見逃しなく。
文 : 山口 智子
model : 渡辺 香織 ・山口 智子
写真: 丸山 順一郎
◆開催概要◆
アート+コム/ライゾマティクスリサーチ
光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」
会期:2017年1月14日(土)—3月20日(月・祝)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA
〒163-1404 東京都新宿区西新宿3-20-2
東京オペラシティタワー4階
開館時間:午前11時—午後6時(入館は閉館の30分前まで)
*金曜日,土曜日は開館時間延長 午前11時—午後8時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日,保守点検日(2/12)
入場料:一般・大学生 500円(400円)/高校生以下無料
*( )内は15名様以上の団体料金
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]