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ココ最近で1番面白い! 宇宙的視点を持つ小川信治とは?

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2016年9月17日

ココ最近で1番面白い! 宇宙的視点を持つ小川信治とは?


ココ最近で1番面白い! 宇宙的視点を持つ小川信治とは?

 

 

ー人間にとっての最後のフロンティアは、宇宙や時間。

   人間一人一人にとって最後のフロンティアは、心。

   スケールの大きな謎と、小さな心、それを繋いでいきたいと思っている。ー

 

小川信治

 

 

そう語るのは本展覧会の主役、小川信治さん。

「世界とは何か」をテーマに作品制作をしてきたアーティストです。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチやフェルメールといった誰もが見覚えのある名画を忠実に模写し、そこから登場人物を抜き去った『Without You』シリーズ。

どこかで見たことがあるような、無いような…そんな気分になる風景画は、左右対称/非対称 が重なり合った不思議な世界。

モノクロの写真かと思いきや、なんと緻密な鉛筆画だというので驚きです!

 

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確かに、近寄ってみると……鉛筆の筆跡が。すごい!!!

 

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小川さんの作品の魅力は超絶技巧だけではありません。

むしろ、技術はあくまで手法であり、彼の魅力は視点だと思いました。

たとえば…この対になった絵は見覚えがあるようで、どことなく違和感がありませんか?

 

 

 

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実は、もとは一つの絵画作品。鈴木春信の《鞠と男女》という作品がもとになっています。

画中にいる2人の登場人物が、それぞれ1人ずつ消失した場面が描かれている『連続体』というシリーズです。

 

 

 

このシリーズでは、いくつもの世界が同時並行的に存在する可能性が可視化されているそう。

量子論の考え方だー!と、宇宙好きの私としてはかなり興奮してしまいました。

 

 

 

小川さんの作品を初めて観たのですが、その視点に既にメロメロ……。

彼の持っている宇宙的視点により、異なるアプローチで表現されている作品は、まだまだ続きます。

 

 

 

『Behind You』というシリーズのこちらは、元となるイメージを丸め、接続部分を想像で補うことでつなげて筒型にし、最初に持っているイメージの中心で切断して広げるという手順で制作されています。

 

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モチーフが2次元から3次元に、そして再び2次元へと操作されるうちに、画面中央にいた人物は左右に別れ、周辺にあったはずの風景が、想像の部分を含めて中央に現れるという仕組み。

 

 

 

……いやいや、言葉で説明されても難しいよ!

ということで、展覧会リーフレットの絵をハサミで切り抜き、実際のプロセスを遡ってみました。

 

 

 

伝わるといいのですが、こんな感じです。

 

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この『Behind You』シリーズのことを小川さんは「あなた以外の世界の全てを表現するシリーズ」と定義しているそうです。

 

 

 

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小川さんは今までは絵画中心でやってきたアーティストだったそうですが、本展覧会では珍しいインスタレーション作品もあります。

 

それが、最後とその前の展示室に及ぶ2つの作品なのですが、謎解きのような構造になっています。

 

Processed with VSCO with e2 preset

Processed with VSCO with e2 preset

Processed with VSCO with 4 preset

Processed with VSCO with 6 preset

 

この作品は、まさに百聞は一見に如かず!

 

私がココで説明しては面白くなくなってしまうので、ぜひぜひ実際に体験していただきたいです。

 

 

ちょこっとヒント?を書くとしたら……

 

①「壁」に注目!

②異なる時間と空間

 

ということでしょうか?! これだけ読んでもサッパリ……?だと思うので、ぜひご自身の眼で確かめてください。

 

 

 

展示室の外には、わかりやすい「鑑賞ガイド」も置いてあるので、これを読めばより作品の理解が深まりそうです。

 

Processed with VSCO with 7 preset

 

 

 

 

まだまだ紹介しきれていませんが、長くなったのでこのあたりで留めておくことにします……。

 

 

そんな、宇宙的魅力がたっぷり詰まった本展覧会は、首都圏の美術館では初となる小川さんの個展なのだそう。

 

 

どうして今までこんなに魅力的な作家さんを知らなかったんだろう!

というくらい、本当に衝撃を受けたし、すっかり小川さんの魅力に取り憑かれてしまいました。

 

ちょっと足を伸ばしてでも、観る価値アリ!の小川信治展は、10月30日までの開催です。お見逃しなく。

 

 

 

文・写真 = 新井まる

 

 

 

【展覧会情報】

小川信治 -あなた以外の世界のすべて-

会期:2016/9/7~10/30

休館日:9月26日(月)、10月3日(月)

会場:千葉市美術館

            千葉市中央区中央3-10-8

 

【たのしい関連イベント】

■対談「小川信治のグランドツアー、その思考と制作」

【講師】小川信治、平芳幸浩(京都工芸繊維大学 美術工芸資料館准教授)

【司会進行】畑井恵(当館学芸員)

9月24日(土)14:00より(13:30開場予定)/11階講堂にて/聴講無料

先着150名(当日12:00より11階にて整理券配布) 

■ワークショップ(事前申込制)「お・か・し な オブジェ」

10月2日(日)/14:00より/11階講堂にて/対象:中学生以上/定員20名

参加費500円

「オブジェ」ってなんだろう。美術の世界で使われる言葉を、身近な素材から考えます。チョコ、キャンディ、クッキーにマシュマロ。お馴染みのお菓子を使って、見たことのないオブジェ作りに挑戦。最後はコーヒーを飲みながら、おかしなオブジェが並ぶ風景を楽しみましょう。  

※申込締切 9月21日(木)必着



Writer

【代表】新井 まる

【代表】新井 まる - MARU ARAI -

話したくなるアートマガジン「ARTalk(アートーク)」代表

株式会社maru styling office 代表取締役

 

イラストレーターの両親のもと幼いころからアートに触れ、強い関心を持って育つ。大学時代からバックパッカーで世界約50カ国を巡り、美術館やアートスポットなどにも足を運ぶ旅好き。新卒採用で広告代理店に就職し3年間勤務の後、アパレルEC部門の販促に約1年間携わる。人の心が豊かになることがしたいという想いから、独立。2013年にアートをカジュアルに楽しめるwebマガジン「girls Artalk」を立ち上げる。現在は「ARTalk(アートーク)」と改名し、ジェンダーニュートラルなメディアとして運営中。メディア運営に加え、アートを切り口にした企画・PR、コンサルティングなどを通じて、豊かな社会をめざして活動中。

好きなものは、自然と餃子と音楽と旅。

 

●Instagram: @marumaruc   

話したくなるアートマガジンARTalk(アートーク)」