2016年5月28日(土) から8月21日(日)まで 原美術館にて、2014年秋の「開館35周年記念 原美術館コレクション展」
以来となる、全館を使った原美術館のコレクション展示を行うときいて、さっそく取材に行ってきました!
1979年の創立以来収集してきたコレクションは約1000点!
どの作品が今回の展示に選ばれたのか気になる人も多いはず。
今回は横尾忠則氏、クリスト&ジャンヌ=クロード氏、ウィリアム ケントリッジ氏をはじめとする絵画・彫刻・
ドローイング・映像作品が展示されています。
特に印象的だったのは、会場入り口を入ってすぐに目に入る、動物のような子供のような3人がかたどられて
いるオブジェのような加藤泉氏の作品。
※以下、同館の許可得て撮影しています。※
加藤泉「無題」2008年
私の肩ぐらいまである大きめな作品で、その表情に思わず惹きつけられ、ものすごく近づいてしばらく見つめていま
した。
加藤泉氏というと”不気味なのにどこかかわいい胎児”のイメージが強いと思いますが、今回の作品は私が知っている
もののなかでは、花を持っている子がいるので表情が穏やかに感じる作品です。
さらに二階には横尾忠則氏作品だけの部屋が!
以前原美術館で行った展覧会時に描き下ろした大きなカンバス3点を含む4点が展示されています。
横尾忠則「誰か故郷を想わざる」2001年
ビビットな色使いで、少しオカルティズムな作品たちの印象が強い人からすると、少しイメージと異なるかもしれま
せん。
特に2000年以降の代表的シリーズである、Y字路の『DNF:暗夜光路 2001年9月11日』と『DNF:暗夜光路 眠れな
い街』は、油彩で筆遣いを感じることのできるタッチで景色が描かれています。
横尾忠則
(右)「DNF: 暗夜光路 2001 年9 月11 日」2001年
(左)「DNF: 暗夜光路 眠れない街」2001年
横尾氏は景色をみつけたら写真を撮り、撮りためた写真をみながら描いているのだとか。
以前メディアの対談で横尾氏が「Y字路シリーズには意味なんてなく、ただフォルムに興味があるから描いているん
だ」というようなことをおっしゃっていましたが、今回展示されている2作品の片方は、米国でおきた同時多発テロで
ある9.11がテーマなのもあり、どのような気持ちで書かれたのだろうか?と想像してしまっていました。
学芸員さんの解説によると、『DNF:暗夜光路 2001年9月11日』(2001)は、描いている時にあのニュースが流
れ、”これ以上出来ない・・・”と筆をおいて完成としたそうです。
加藤氏の作品も『無題』ですが、見る側が勝手に色々と作者の意図を考えてしまうのも、アートの楽しみ方の1つか
な、と個人的には思っています。
また、その他にも中国を代表するアーティストであると同時に、積極的な社会活動でも知られる艾未未(アイ ウェイウ
ェイ)の貴重な初期作品『毛像組1』(1985)。
さらには日本から帰化してブラジル美術界の巨匠となり、昨年惜しくも亡くなったトミエ オオタケ(大竹富江)の絵画
『無題#1』(1987)も展示されています。
今回唯一の映像作品であるウィリアムケントリッジ氏『メモ』(1994)は、実写映像とアニメーションの融合がとって
も面白いです。
ウィリアム ケントリッジ「メモ」1994年
南アフリカの作家による映像作品ですが、3分間という短い時間の中にしっかりとストーリーがあります!
60歳くらいの方ですが美術を手がける前に演劇活動をしていたこともあり、演劇的な要素がみえます。表情豊かでなん
だかかわいらしいです。
クリスト&ジャンヌ=クロードによる作品群
そして常設展示作品もお忘れなく!
もともと個人邸宅として1938年に建てられたという建物自体が”アート”な佇まい。
西洋モダニスム建築を取り入れ、中庭を包みこむように緩やかな円弧を描いた空間デザインが特徴的です。
白い建物に天気や季節によって異なる自然の光が反射してとても綺麗。
膨大な敷地の中に”美術館”として建てられた建物とは異なり、住空間として使われていた面影がきちんと残ってるの
が、この美術館ならではの魅力的でしょう。
例えば浴室や洗面所などは元々の作りを完全に壊すことなく、むしろ活かしながらアーティストが息を吹き込み”アー
ト”として完成させています。
今回は原美術館のコレクションということで企画展との線引きはあまり考えずに建物全体を通して、”原美術館らし
さ”を感じられると思います。
隅っこのドアや、階段下などを覗くワクワク感がたまりません!
初めて行かれる方はアートを取りこぼさないよう、子供に戻った気分で”お家を探検!!”してみてくださいね。
キース ソニア「エスセシポールI」1982年
文: 山口 智子 写真: 新井 まる / 山口 智子
【開催要項】
みんな、うちのコレクションです
英題 It’s Our Permanent Collection!
会期 2016年5月28日[土] – 8月21日[日] 開館日数:74日
会場 原美術館
東京都品川区北品川4-7-25 〒140-0001
Tel 03-3445-0651(代表) Fax 03-3473-0104(代表)
E-mail info@haramuseum.or.jp
ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
携帯サイト http://mobile.haramuseum.or.jp
ブログ http://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
Twitter http://twitter.com/haramuseum
主催 原美術館
開館時間 11:00 am – 5:00 pm(水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日にあたる7月18日は開館)、7月19日
入館料 一般1,100円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高
生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引