大使館と聞いて「そんな他国政府のお膝元で…?!」と、少し驚かれる人もいるかもしれません。
しかし、案ずることなかれ…度々、大使館では面白い写真展が開催されているのです。
今回、6月17日まで駐日スペイン大使館で開催中の『三+三写真展』を取材してきました。
本展は日本人3名とスペイン人3名からなる計6名の写真家による展覧会。
国、文化、言語の違いも然ることながら、”写真”という表現においては同一です。
作品を眺めていると異なりを見せながらも、不思議と通づるものがあるように感じました…。
例えば、こちらの感覚が揺さぶられる赤石隆明さんの作品。
日常に溢れているイメージとイメージの中の風景を組み合わせていますが、PC上でデジタル処理をして作成された
ものなのか?それとも、このような造形物を制作し、撮影に挑んだものなのか?アーティストご本人に聞いてみたい
作品です。
それに対比しているように展示されている、JULIALLERENAさんの作品も感覚が揺さぶられます。
白い布をくしゃくしゃに丸め、空中から落下させたところを、シャッターで捉えていますが、不思議と光や影の加減か
ら彫刻のような造形物にも見えてしまう不思議な作品です。
こちらは飯沼珠実さんが手がけた作品。
写真を眺めていると優しい木漏れ日を浴びながら、森の中を散歩しているような気分が味わえます。
撮影をする際にフィルムのようなものでレンズを遮っているせいか、所々緑の葉や木々の枝の色彩が切り替わって
おり、様々な視点で景色を見ているかのような不思議な錯覚に陥ります。
それに対比するのはDIANAKUNSTさんの作品です。
こちらは自然とは真逆のリゾート都市をテーマに撮影したものでしょう。
海辺で照りつける太陽と戯れる無数の人たち。そして、ビーチに隣接するのは高くそびえ立つ複数のホテル。
ビーチリゾートで休日を謳歌しているように見えますが、客室のベランダでくつろぐ姿はどこか疲れているようです。
こちらは絵画のような水谷吉法さんの作品。その美しいコントラストに目を奪われてしまいます。
白と黒の直線が交互に並ぶ横断歩道。その上を走る黄色いタクシーや人力車、そして鮮やかな傘をさす歩行者たち。
水谷さんにお話を伺ったところ「白と黒のハッキリした違いを出すため、敢えて雨の日を狙って撮影を敢行した。」と
のことでした。
それに対比しているように展示されているのは、JUANJOSELORENZOさんによる作品。
桟橋の接合部分や建造物など街中にあふれる景色を中心に撮影していますが、その綺麗なコントラストのせいか不思
議と絵画のように見えます。
6人からなる作品は異るように見えますが、眺めていると自ずと共通項が見えてきます。
国、文化、言語は違えど…作品を捉える視点や感性は似ているかもしれません。
駐日スペイン大使館という場所で素敵な発見ができました。
皆さんも大使館に入れるチャンスを利用して、写真展から何かを発見してみてはいかがでしょうか。
文:新麻記子 写真:新井まる
【情報】
『三+三写真展』
会期:6月3日〜6月19日
会場:駐日スペイン大使館 展示スペース
〒106-0032 東京都港区六本木1-3-29
時間:10:00-17:00
休み:土・日
料金:無料