【6/5まで限定公開】世界にたった3つしかない国宝
曜変天目を見に行こう!
「宇宙だ!」
漆黒の釉に玉虫色に光り輝く大小の斑文のある茶碗をひと目見てその宇宙のような世界に吸い込まれそうになって
しまいました。
それが国宝の茶碗、『曜変天目』です。
国宝 「曜変天目(「稲葉天目」)」 建窯 南宋時代 12-13世紀
陶芸作品は古いものから現代の作家さんのものまで度々見る機会はあったのですが、これ程までに美しい器は今まで
見たことがありませんでした。
自然光に照らされた器は絶妙な色合いで、見る角度によって、青、黄色、ピンク色……と斑文の色が変わります。
より鮮明に細かい部分までみようと、単眼鏡で覗き込んでいると、カラフルなプラネタリウムにいるような気分に。
ずっと観ていても飽きない神秘的な器です。
曜変天目 [部分]
曜変天目は南宋時代(12~13世紀)、中国福建省の建窯で作られたもので、世界に三碗しかないとてつもなく貴重な
茶碗です。現在その全てが日本に伝わっているというのだから驚きです。
曜変天目が作られた当時は中国ではお茶がとても流行し、特に黒い器『天目』が大流行したのだそうです。
天目は、火の温度や焼き具合によって絶妙な斑文が現れることがあり、その中でも玉虫色に光るものだけを
曜変天目と呼んでいます。
茶碗自体のフォルムもとても美しく、かなり腕の良い職人さんが特別に手がけたものだそう。
まさに技と偶然の生み出した奇跡の茶碗と言っても言い過ぎではありません。
曜変天目[正面]
静嘉堂文庫美術館で現在見ることのできる曜変天目は、元は徳川将軍家の什宝だったものが江戸時代初期に淀藩主の
稲葉家に伝わり、後に岩﨑小彌太の所有になったのだとか。
岩﨑小彌太は「天下の名器を私に用うべからず」と、生前一度もこの茶碗を使用することがなかったそうで、それ程
曜変天目をとても大切にしていたそうです。
曜変天目と同時に展示されているのが、『油滴天目』です。日本では曜変天目の次に高い評価を得てきた天目茶碗で、
黒い釉薬の上に銀色の斑文が、まるで油の滴が水面に散ったように見えることから名付けられたそうです。
重要文化財「 油滴天目」建窯 南宋時代 12-13世紀
静嘉堂文庫美術館の油滴天目は、朝顔形に大きく開いた口が印象的な、曜変天目とは異なり大振りのどっしりとした
茶碗です。
今見てもモダンでカッコいい!と感じました。
「いい焼き物は想像通りの重さ」
これは学芸員さんから伺ったお話ですが、焼き物は持った時に想像通りの重さが良いとされているそうです。
気になる曜変天目と、油滴天目の重さはというと……。
★曜変天目:276g
★油滴天目:741g
だそうです!
実際に器を持ってみることは出来ませんが、同じ重さをお家で測って持ってみて、曜変天目を想像してみるのも
また面白そうです。
国宝の曜変天目は企画展のテーマによって2〜3年に一度程度の頻度でしか公開されないそうで、今回のように
自然光の元に展示されているのはとても珍しいのだとか。
期間限定での公開は6/5(日)までなので、このチャンスをどうかお見逃しなく!
また、開催中の企画展では、あの若冲が『釈迦三尊像』を描く際にお手本にしたという絵も展示され
ていて、一見の価値ありです。
伝 張思恭「文殊・普賢菩薩像」 元時代・14世紀
森のように広い美術館の敷地内には沢山の木々が植えられているので今の時期は新緑がとても綺麗。
ピクニック気分でお出かけしてみるのもオススメです。
文:新井まる 写真提供:静嘉堂文庫美術館 (※写真の無断掲載を禁じます)
【情報】
静嘉堂文庫美術館
〒157-0076 東京都世田谷区岡本2-23-1
TEL.03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.seikado.or.jp
<開催中の企画展>
「よみがえる仏の美〜修理完成披露によせて〜」
会期:2016年4月23日(土)〜2016年6月5日(日)
休館日:毎週月曜日
開館時間:10:00〜16:30(入館は16:00まで)