9月19日から東京・江戸川橋の永青文庫で開催中の『春画 -SHUNGA- 展』。
通常の浮世絵では使用されていない鮮やかな極彩色が使われるなど、
高い技術によって描かれており世界的にも評価を獲得している春画。
ですが…今までその過激な性描写に対して物議を醸しだし、
国内の博物館や美術での大規模な展示は見送られてきました。
待望の日本初開催となる今回の展覧会では、大英博物館をはじめとするイギリス、デンマーク、
日本の美術館、国内外の個人のコレクションにより集められた名品133点が展示されます。
会期中には展示の入れ替えが行われるなど、見どころが尽きない内容となっております!
girls Artalk編集部ではその大規模個展を取材してきました~!
『プロローグ』では展覧会開催にあたってのご挨拶と、
男女2人のふれあいを描いた作品数点が展示されていました。
ここでは大衆が利用していた銭湯での様子や、
愛を交わす前の仲睦まじく触れ合う姿など、
比較的控えめな表現のものが集められています。
そして、『プロローグ』が展示されている細い廊下を抜けて大広間に入ると…
そこには全て『肉筆』で描かれた春画が展示されていました!
こちらの版画などの印刷技術を用いらない人の手によって描かれる『肉筆』の章では、
「偃息図(おそくず)」と呼ばれていた平安時代の春画を思わせるような
「小柴垣草紙(こしばがきぞうし)」や「稚児之草紙(ちごのそうし)」から、
徳川将軍や大名家の絵画制作に仕えた狩野派の燦爛な描写が楽しめます。
実際、展示作品の制作年数に注目してみると、
平安時代後期頃から『春画』が存在していたことが分かりました!!
背景に金箔を使用された絵巻物や屏風絵などの豪華な作品を見ていると、
大名クラスの上流階級まで親しまれていたのだと感じます。
また、男女の睦まじい姿のみならず、同性愛、妖怪画、ストーリー、構図に至るまで…
現在に息づいている性的表現が存在していることに大変驚きました。
階段を降りて続いて登場するのが『版画の傑作』の章です。
ここでは、喜多川歌麿、歌川国芳、葛飾北斎らといった、
日本が誇るスーパースター級の浮世絵師が手がけた
約40点もの版画や版本が展示されています。
作品を巡れば、巡るほど…当時の暮らしぶりだけでなく、衣装から階級などが分かります。
そして、大名歌の作品が数多く残されている『版画』では、
今まで『春画』を見たことがない鑑賞者へ対して、
解読が難しい文言の訳があったことに主催者側の愛を感じました。
そして、縦9センチ、横13センチ弱の小さな春画を集め、
庶民にも広く愛された『豆判』も見どころの一つです。
今回、展示されている作品はすべて初公開とのこと!
貴重な数々の作品がお目にかかれますよ~。
絵師の思考が凝縮された小さな『春画』である値段もサイズもお手軽だった『豆判』は、
江戸時代の人の懐にそっと忍ばせ、こっそり見たり、皆んなで見せ合っていたそうです。
その風景を思い浮かべると、思わず笑みがこぼれてしまいます。
エロティシズムに対してオープンだった様子が伺える『春画』から、
日本の歴史の中で多くの人々と共にあったことが展覧会の構成から分かります。
また、『春画』に描かれているユーモア溢れる性風俗からは
”笑い”と”悦び”が存在し、”幸せ”が表現されていると思いました。
今後、展覧会に合わせて開催されるイベントとしては、
申し込みを締め切った、10月10日(土)『江戸文化と春画』をテーマにした講演会や、
11月28日(土)『春画展開催記念シンポジウム』が行われるほか、
11月7日(土)と12月5日(土)には着物を着て来場すると
男女問わず入場料が800円になる『着物DAY』も開催されるなど、
より春画を身近に感じられるイベントも予定されています。
今一度、日本文化である『春画』からエロティシズムを
見つめ直してみるのもいいかもしれません。
【情報】
『春画展』
2015年9月19日(土)~12月23日(水・祝)
前期:9月19日(土)~11月1日(日)
後期:11月3日(火・祝)~12月23日(水・祝)
※会期中展示替えあり
会場:東京都 江戸川橋 永青文庫
時間:9:30~20:00 ※日曜日は、9:30〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(祝休日の場合は開館)
料金:1,500円
※18歳未満入場禁止
春画展の公式ホームページ:http://www.eiseibunko.com/shunga/
春画展の公式ツイッター:https://twitter.com/EISEI_SHUNGA
文 / 新麻記子