現在、東京オペラシティアートギャラリーでは、
『鈴木理策写真展「意識の流れ」』が9月23日(水・祝)まで開催中です。
約8年ぶりとなる東京での大規模個展では、新作を含めた約100点もの写真作品と映像作品が展示されています。
展覧会のタイトルである「意識の流れ」は、「見るという行為に身をゆだねると、とりとめのない記憶やさまざまな意識が浮かんできて、やがてひとつのうねりのような感情をもたらすことがある」という、本人の経験に基づいてつけられています。
<<海と山のあいだ>> 2013
一つ目に展示されている海の水面の写真は、海・空・光の三つの要素だけなのに泡立つ白色や、
きらめく光、そのバランスが絶妙です。
永遠に寄せて返す波の中から、一瞬を写し撮った写真はふたつとない一枚。
知っているシーンだからか、安心感に包まれます。
私自身、写真を選定する場面に携わることが多いので、この一枚が選ばれた理由を、
鈴木理策さんに是非聞いてみたいと思いました。
<<海と山のあいだ>>
<<Etude>>
何気ない水たまりや落ち葉の重なる風景は、日常のどこかで見たことのある場面なのですが、
きっと何も考えずに通り過ぎてしまっているのでしょうね…。
改めてじっくりと見れば、とてもユニークな構図で、光と陰が重なって作り出す奥行きが、
ずっと奥まで続いているようです。
そして、水面に映る木々も写真の延長に映っているのではなく、まるで存在してるかのようでした。
<<水鏡>> 2014
<<水鏡>> 2014
有名な光の画家を思い出す人も多いことでしょう。
写真の中で制止している空が水面に続いているようにに見えます。
写真作品をずっと見ていると、香りや温度、空気感までも感じてしまいそうなほど、
その場に存在しているような錯覚に落ちそうになります。
光のまぶしささえまぶたの裏に感じることができます。
それは、記憶の片隅にある「知っている」という感覚が、「見る」ことで呼び起こされるからでしょうか。
私は写真が記憶を結ぶことがあると思います。
赤ちゃんの頃の写真を見れば、その当時の背景や言葉、何故という理由を思い出すことができるからです。
写真は私達のとても身近な存在。
毎日のように見るSNSの投稿や携帯電話での撮影。
もはやデジタル写真が無い生活なんて考えられない状態です。
でも、フィルターで加工された色彩や合成された写真が身近であることは悪くはないですが、
現実の質感や色彩への感動に出会う機会が少なくなった気がします。
<<White>>
<<SAKURA>>
鈴木理策さんの写真には、不思議なほど安心感を与えてくれる力があります。
不自然な違和感や不安を感じさせない上に、難しく考えずに素直に受け入れられる、すばらしい作品だと思いました。
人は、「見て感じる」生き物だと思います。
自分の目で「見る」そして自分なりに「感じる」という行為の大切さを改めて実感しました。
また、私も、過去に仕事で一度しか撮影に関わったことのないほど、今はあまり見ることのない、
8×10(エイトバイテン)で撮影している非常に珍しい写真展です。
美しい自然の空気感を是非味わってください。
[展示会詳細]
鈴木理策写真展「意識の流れ」
Risaku Suzuki – Stream of consciousness
http://www.operacity.jp/ag/exh178/
会期: 2015年7月18日(土)〜9月23日(水・祝)
東京オペラシティアートギャラリー(3Fギャラリー 1・2)
開館時間:11:00 ─ 19:00 (金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日、ただし9月22日は開館)、8月2日(全館休館日)
入場料:一般 1,200円(1,000円)、大学・高校生 800円(600円)、中学生以下無料
同時開催「収蔵品展 052 水につながる 寺田コレクションの水彩画」「project N 61西村有」の入場料を含みます。
収蔵品展入場券200円(割引は無し)もあり。
( )内は15名以上の団体料金
障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。
Arts友の会会員は無料。(会員証をご呈示ください)
割引の併用および払い戻しはできません。
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
鈴木理策 すずきりさく プロフィール
1963年 和歌山県新宮市生まれ
1987年 東京綜合写真専門学校研究科修了
1990年 初の個展「TRUE FICTION」(吉祥寺パルコギャラリー、東京)開催
1998年 初の写真集『KUMANO』を上梓
2000年 第25回木村伊兵衛写真賞を受賞
2006年 第22回東川賞国内作家賞、平成18年度和歌山県文化奨励賞受賞
2008年 日本写真協会年度賞受賞
2006年〜 東京藝術大学美術学部先端芸術表現科准教授