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『デミタスコスモス ~宝石のきらめき☆カップ&ソーサー~ 展覧会』

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2015年3月18日

『デミタスコスモス ~宝石のきらめき☆カップ&ソーサー~ 展覧会』


 

 

 

優雅な休日の午後に美味しいお菓子を食べながら一杯の美味しいコーヒーを飲み、ゆったりと過ごせる時は贅沢なひと時。

雑念を取払い、ゆっくりとした時の流れと空気を感じ、美しいものを心で感じる…。

それは、忙しい日々を過ごせば過ごすほどつい忘れがちになってしまう大切な時間です。

 

 

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出典元:http://sweetapolita.com/2011/06/ruffles-roses-a-madish-tea-party/

 

 

これまで東京やニューヨークのカフェ巡りをしたり、茶道でお茶のこころを学んできた私にとって、お茶を飲むことはとても大切な日常の習慣の一つです。

今回は2月7日から4月5日まで三井記念美術館にて行われている「デミタス コスモス 〜宝石のきらめき★カップ&ソーサー~」展に伺ってきたので、ご紹介いたします。

一つのコーヒーカップ(カップ&ソーサー)を通して、デミタスコーヒーカップにみえる「ジャポニズム~小さな日本~」を発見出来るかもしれませんよ!

 

 

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デミタスは、食後に濃い味わいのコーヒーを飲むための、フランス語で「半分のカップ」を意味する小ぶりの器のことです。一点一点のカップを彩る美しいデザインでもよく知られています。

 

「デミタス コスモス ~宝石のきらめき★カップ&ソーサー~」展では、東京在住の鈴木康裕・登美子夫妻が 40 年にわたり丁寧に収集されてきた18~20世紀初頭のセーヴルやマイセン、KPMベルリン、ミントン、ロイヤルウースター、ロイヤルクラウン ダービー、コールポートなど、ヨーロッパの名窯で作られた作品を展示しています。

 

鈴木康裕・登美子夫妻が デミタスをコレクションし始めたのは、昭和 42 年、おふたりが結婚した当初のことでした。

夫婦に共通する趣味がなかったため、お互いに好きだったコーヒーにちなみ、デミタスを集めてみようと考えたのが収集のきっかけだったそう。1ヶ 月に1点ずつデミタスを購入してゆき、現在では総数 500 点を超えるコレクションに成長しました。

どれも、小さな中に繊細なきらめきを持つ美しい作品ばかり。

 

「ロイヤルクラウンダービー」は 1748 年頃、アンドリュー・プランシェ(1727-1805)により、イギリス・ダービーに開窯したメーカー。 1775 年にクラウンの称号を得た後、1848 年に一度は閉窯しますが、まもなく工場は再開。さらに 1877 年にはダービークラウン社を設立し、1890 年にはロイヤルの称号も与えられました。

 

 

~デミタスにみる「ジャポニズム」~

 

 

19 世紀後半から20世紀初頭、西洋では浮世絵や工芸品などの日本美術が大流行しました。

浮世絵の大胆な構図や 色彩感覚、工芸品に施された独特の装飾や文様に感化され、西洋の人々の美意識は大きく変化し、「ジャポニズム」という現象を生みだしました。ゴッホ・ルノワール・ホイッスラー・ラリック等多くの芸術家がこの時代に日本美術からインスピーションを受け、新たな美術様式が生まれるきっかけとなりました。

このような「ジャポニズム」の流行を背景に、植物文様や流れるような曲線を特徴とする芸術様式、「アール・ヌーヴォー(新しい美術)」が誕生します。デミタスにも植物の図様やハンドルのかたちなどに「アール・ヌーヴォー」の影響がみられるものがあります。

 

 

~文化交流がもたらすものとは!?~

 

 

美術が発展するのは、「ソト」のものが「ナカ」に入って来る時、あるいは文化交流が行われた変化の結果であるのではないでしょうか。

日本も16世紀半ばから17世紀にかけて行われていた、南蛮貿易がきっかけで西洋の文化や武器が日本に伝えられました。鉄砲やパンやカステラ等もその時に日本に初めて伝えられたもの。

まだ電気やインターネットが発明されていなかった時代、異国から学問、生活様式、芸術、文化等を学び、新しい知識や技術をリ・クリエイトすることで、日本もフランスも新たなものを創造しようとする原動力が生まれたのでしょう。

カステラもデミタスカップのよう、日本人がポルトガルから伝えられた南蛮菓子(カステーラ)を日本独自に作ったもの。ポルトガルから伝わったお菓子をリ・クリエイトした結果、カステラが誕生したのです。

常に、芸術・文化は異なるもの同士が摩擦し、融合することで新しいものが創造されます。リ・クリエイトが上手に出来た時代は文明も同時に栄えるのでしょう。

 

 

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展覧会の売店にはとても可愛いデミタスチロルチョコもありました。(3月18日現在、完売しているようです)

皆さんも、デミタスコーヒーカップにみえる「ジャポニズム~小さな日本~」と出会いに、三井記念美術館を訪れてみては如何でしょうか!?

 

特別展「デミタス コスモス ~宝石のきらめき★カップ&ソーサー~」

会期:2015年2月7日(土)~4月5日(日)※月曜日は休館

会場:三井記念美術館(東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階)

三井記念美術館公式ウェブサイト

http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

 

 

 

 

 

 

 

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出典元:http://userpages.umbc.edu/~ikwok1/336/project3/

 

 

アリス「あなたがた、もうすこしはましな時の使いようがあると思うわ」

ぼうし屋「時は生きものだぜ。あんたが時ともし仲良くさえすれば、時計(time)に何を注文しようと、時(TIME)のやつが大抵はやってくれるはずだぜ。喧嘩さえしなければな。

たとえばさ、朝の九時、勉強のはじまる時刻(time)だとしてごらん。

あんたが、時(TIME)にほんの一言耳打ちしてやりすれば、時計はまたたくうちにひとめぐりさ!一時半、昼ごはんの時刻と来るんだぜ!」

アリス「そうだったらすてきね、きっと」

ルイスキャロル作『不思議の国のアリス』より

 

 

 



Writer

Yuria Yoshida

Yuria Yoshida - よしだ ゆりあ -

青山学院大学文学部卒。
ロンドン大学院ゴールドスミスカレッジ​教育学部修了。
大学在学中より​世界中​の美術館巡りなどを通して、日本と西洋の​文化的な​つながりを模索する。
在学中、ニューヨークにある​The Art Students League of New York​にアート短期留学​。卒業後、オハイオ州​にあるDenison​大学​で日本語・日本文化教師​として勤務。

 

パリにある国連ユネスコ本部のお庭でコンテンポラリーなお茶会を開くこと​と​絵本を出版すること​​が夢。​
ルイス​・​キャロル​など、​​イギリス児童文学​に興味があり​。
好きな作家はヴィクトル=マリー・ユーゴー​とキャサリン・マンスフィールド​​とジョンロック​​。
​好きな詩は、W.H.オーデン作 「1939年9月1日」。