2016年3月に作詞デビュー40周年を迎えた森雪之丞氏。
そのデビューは1976年に放送された国民的人気テレビ番組の主題歌「ドリフのバイのバイのバイ」にはじまり、
最新作ではアニメミュージカル作品「映画プリキュアオールスターズ」を手がけるなど2400曲以上も作詞している。
キャンデイーズやももいろクローバーZなどの新旧アイドルに始まり、氷室京介氏や布袋寅泰氏といったロックミュー
ジシャン。そして、「キン肉マン」、「ドラゴンボール」、「おそ松くん」などの長く親しまれているアニソンのほか
にも…自らが注力している総合芸術の世界と言っても過言ではない舞台やミュージカルの楽曲。
2400曲以上から厳選した173トラックを収録した9枚組のアルバムを見ても分かる通り、森氏の素晴らしさは
ジャンルを自由に回遊できるところにあると思う。
今回、その秘密に迫るべく渋谷タワレコードで行われた森雪之丞作詞家40週年記念作品集「森雪之丞原色大百科」の
トーク&サイン会の模様を取材した。
会場につめかけた数多くのメディアと森氏の作詞に魅了されたファンの拍手に迎えられた森雪之丞氏。
アルバムを制作したプロデューサーである鈴木則孝氏とのトークが繰り広げられた。
デビュー当時、そして現在、「筋肉マン」の作者・ゆでたまご先生が描きあげた森氏。
キン肉マンが同ポーズで組み合わされたイベントポスターに触れ…自身の40年前を振り返り、懐かしそうに話した。
「当時は長髪で、men’sビギのジョーゼットという生地のスーツを着て、新宿ワシントン靴店で購入した男性用ハイ
ヒールを履き、宇野亜喜良さんが描いた裸体の女性3人の髪が巻きついた絵柄のネクタイ…と、ちょっとトンガっていた
青年でした。」
会場からは笑いがおきるなか、会話はアルバムの内容にうつり、制作の鈴木則孝氏から説明があった。
「当初は2枚組のアルバムを発売するはずが、森雪之丞さんの素晴らしさを伝えるには、
全然足りない…ということになり、各ジャンルに分けて9枚組で発売することになりました。」
その言葉の通り…
「雪之丞HIST0RY」(DISK-1,2)は、アイドルやロックスター、アニソン、大ヒット曲を収録した全40曲。
「雪之丞ROCK」(DISK-3)は布袋氏、氷室氏といったBOOWY勢のほか、hide、ToshiなどのX-JAPAN勢などロックス
ター全17曲、「雪之丞IDOL」(DISK-4,5)はキャンデーズ、山口百恵、女性アイドルに限定し、70〜90年代のヒット曲
から名曲までの全38曲。
そして、「雪之丞ANIMESONG」(DISK-6)では「ドラゴンボールZ」を始めとするアニメの定番として親しまれている
主題歌22曲を厳選。
近年、森雪之丞氏自身が力を入れている「雪之丞MUSICAL」(DISK-7)では他作品の以外にも、自身が手がけた「サイ
ケデリック・ペイン』、『ソング・ライターズ』などの劇中歌22曲が収録。
その中には松雪泰子氏、北乃きい氏、綾野剛氏といった一線で活躍している俳優陣の歌声が聴けるのも嬉しい。
また、「雪之丞MORE&RARE」(DISK-8)では、自身のポエトリーリーディングや異色曲を集めているだけでなく、
「OTONANO雪之丞」(DISK-9)は詩作の中で想い出に残る16曲を曲順にまでこだわってセレクトされている。
そして、会場に来ていたファンからのアンケートから森氏に向けての質問コーナーへと進行した。
Q:
作詞をしていて煮詰まった時、どんな気分転換をしていますか?
森雪之丞:
つまらない気分転換をしています(笑)
基本、歌詞は外出先では書かずに家のアトリエで書いているのですが…
他の音楽を聴いたり、映像を見たり、後は朝までお酒を飲んだりしていました。
最近、年齢的に朝まで飲めなくなってきましたが(笑)
皆さんは晩酌ってすると思うのですが、夜に作業するもんで晩酌はできないんです。
書いている歌詞はクレイジーでも、自分はフラットでいたいんです。
そんなフラットな自分からどれだけクレイジーな歌詞が書けるのかということが一つのテーマになっています。
Q:
作詞のアイディアにするヒントはどこから得ていますか?
森雪之丞:
自分自身、歌詞のために取材やデータを書き溜めたりということはしません。
しかし、自分が訪れた旅行先の景色、香り、温度…様々なことを覚えています。
歌詞のテーマは別にあるのですが、その世界観にフィットするよう、いつでも思い出せる状態でいます。
そういった意味では”生きていること”が詩作の原点になっているのだと思います。
Q:
氷室京介さんのラストライブには行かれましたか?また、行かれたのならどんな想いで見られましたか?
森雪之丞:
初日と最終日に行きました。
最終日には“これが氷室京介だ”と完璧に出しきって素晴らしいステージでした。
ライブは引退ということですけど、音楽は作っていくと思うので、
僕の言葉を求めてくれればまた一緒に出来たらと思っています。
Q:
森雪之丞さんにとってアル・パシーノとアラン・ドロンはどちらが魅力的ですか?
森雪之丞:
皆さん、当時の日本ではアル・パチーノではなくアル・パシーノだったんですよ!(笑)
どちらが魅力的とは言えないですね…だからこの楽曲の歌詞が生まれたわけですから。
と、最後の質問は榊原郁恵氏のもので、本人が花束を贈りに会場に駆けつけた。
1977年に歌手デビューした榊原氏は、4枚目のシングルとして森氏が作詞・作曲した「アル・パシーノ+(たす)アラン
・ドロン<(より)あなた」を提供された。
森氏がタクシーの車内で1番の歌詞を書き上げた秘話を明かせば…
「アラン・ドロンは知っていたけど、アル・パシーノは知らなかったんですよ。
アラン・ドロンの『太陽がいっぱい』だって年齢的に共感できるところがなかった。」
と、新人アイドルらしからぬ歌詞に笑顔でクレームしたが…
「この曲のおかげで日本レコード大賞などの新人賞をいただきました。
ありがとうございます。」と恩師とも言える森氏に感謝を示しました。
また、当時のレコーディングを振り返り…
「レコーディングにコーラスとかで参加してませんでした?
すごくそっちのほうがはっちゃけて楽しんでましたもんね。
今は年相応のおじさんになられましたけど、あの頃ははっちゃけたイケイケのお兄さんで、
ちょっと近寄り難かった。そばに行ったら何かされるんじゃないかみたいな。」と笑いながら懐かしむと…
森氏は照れ笑いしつつもタジタジになりつつも…
「そうだった?…デビューしたての郁恵は学生服で泣いてたよね。」と気遣いながらも、
「あんな突っ込む子じゃなかったのに、人間って変わるもんですね。」と会場の笑いを誘った。
そして、榊原氏が退出してからは「森雪之丞原色大百科」を購入したファンとのサイン会が始まった。
CDBOXの中にある詩集に自分のサインに加え、訪れたファン本人の名前と日付を入れ、一人、一人、丁寧にコミュニ
ケーションを取り、あたたかな微笑みを浮かべる森氏。
こうして作詞家という魅力に触れられた1時間に及ぶイベントは幕を閉じた。
SONYのOTONANOサイトでは「原色大百科講座」という新コーナーを開設し、毎月森氏と豪華ゲストとの熱いトーク
が繰り広げられるが始まるだけでなく。
この夏、差別や偏見を捨てて再生する過程を描いた映画「キンキーブーツ」をミュージカル化し、シンディー・ローパ
ーが音楽・作詞を手がけたことでも大きな話題を集めている大ヒット作品が、日本版として小池徹平氏と三浦春馬が
初タッグを組んで笑いと感動を私達に届けてくれる。
その訳詞をしているのが森氏である。ミュージカル鑑賞の際には歌にも注目してほしい。
40年という年齢の重みを感じさせる内容に仕上がっている記念作品集「森雪之丞原色大百科」。
だが、これからも森氏のパレットには原色だけでなくバラエティに豊んだ色が彩られることだろう。
文:新麻記子 写真:大塚日出樹
【情報】
森雪之丞原色大百科
【完全生産限定盤】
発売日:2016/05/25発売
品番:MHCL-30372
価格:¥18,000+税
【仕様】
高品質Blue-spec CD2仕様,三方背BOX,三面デジパック×3(9枚組)
ブックレット:詩集(216P)歌詞カードではない、詩集としての歌詞
手引き(120P)総論、アイドル、ロック、アニソン、ミュージカル、
各ジャンルごとの多彩な執筆者と、セルフライナーによる手引き
※40年に渡る詩作を集大成した“大百科”“雪之丞”自身に迫る内容
http://www.110107.com/mob/pageShw.php?site=OTONANO&ima=0424&cd=yukinojo_40th
【プロフィール】
森雪之丞
http://www.mori-yukinojo.com/live/