〓Miwa Yanagi STP.
デコトラ×演劇?!
やなぎみわステージトレーラープロジェクト『日輪の翼』
公開リハーサルレポート @ KAAT神奈川芸術劇場
皆さんは、ヨコハマトリエンナーレをご存知でしょうか?
数ヶ月にわたり横浜美術館や新港ピアをはじめとする各スポットで、国内外のアーティストによる様々なアート作品に
触れられる芸術の祭典です。最近では2017年に開催されることに加え、スプツニ子!さんなどのディレクター陣が発表
され、さらに大きな注目を浴びています。
2014年に開催された横浜トリエンナーレでは『華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある』という展覧会タイト
ルのもと、民族間において生じる争いといった避けては通れない国際的テーマを背景に、会場を訪れた鑑賞者に対して
未来についての問題定義を投げかけてくれたとともに、数多くの表現アプローチから芸術の良心や未知なる芸術に触れ
ることができました。
その出展作品の一つにやなぎみわさんの移動舞台車(ステージトレーラー)『花鳥虹(カチョウコウ)』があります。
台湾で独自の発展をとげた移動舞台車はタイワニーズ・キャバレーとも呼ばれ、荷台の背が大きくもちあがり鮮やかに
光り輝く舞台が出現する仕様になっています。
そんなステージトレーラーに魅せられて舞台車での演劇公演を企てた彼女は、自らがデザインするだけでなく、日本で
の走行のために改良し、舞台公演のために試行錯誤しました。
そして、KAAT神奈川芸術劇場とともにトレーラーを舞台に中上健次さんの『日輪の翼』に描かれるオバたちの聖地
巡礼に重ね、中上ゆかりの熊野の新宮をはじめ横浜を起点に各地を巡りながら上演される前代未聞の演劇プロジェクト
を立ち上げました。
今回、5月28日に開催された『日輪の翼』の公開リハーサルの模様をレポートします。
現在、ステージトレーラーは大阪にある造船場の倉庫に格納されており、KAATのスタッフがスチールデッキで組んだ
本番を想定したステージで稽古をしています。
ステージの上にはバンドが使用するギターアンプやドラムセットなどが組まれています。
そして、演出家・現代美術作家のやなぎみわさんからリハーサルが始まる前に、「KAATでリハーサルがはじまった時
には涙が出るほど嬉しかった。」など現在に至るまでの紆余曲折した経緯や作品についてのあらすじを簡単に説明して
頂きました。
『日輪の翼』公開リハーサルの様子 やなぎみわさん
ストーリーは1場から9場まである壮大な物語です。今回のリハーサルでは1、4、5場を披露してくれました。
オバたちがカラスやフクロウといった鳥の鳴声を真似する”鳥鳴き”のシーンでは、会場から大きな拍手がおきたり、
”鳥鳴き”に参加する観客の姿も見られました。
『日輪の翼』公開リハーサルの様子 オバたち
例えば、聖地を訪れた際に箒を持って掃除をするオバたちの姿…こちらは聖地に対して”掃き清める”という意が込め
られているなど、所々やなぎさんが細かい解説を入れてくださったおかげで、その動作や所作が意味していることが
深く理解できました。
『日輪の翼』公開リハーサルの様子
そして、オバたちと若い衆が伊勢から一宮に移動する際には、その中にいる一人のオバが抱えていた過去から、若年
層が知らない日本の重い歴史が紐解かれるなど…今日までの国の成り立ちについて深く考えさせられました。
時折、やなぎさんはお稽古を中断して…オバたちの演技に対して時代や場面背景の説明からセリフのニュアンスに
ついて指導する場面がありました。
また、バンドによる激しい演奏と俳優によるヴォーカルとがマッチしたライブも見どころの一つです。
その他にもこちらの場面ではポールダンサーによる妖艶なダンスやロープを使い天空を舞うサーカスパフォーマンス、
そして美しく躍動的に踊る俳優陣の姿など…そのすべてに目を奪われてしまいます。
『日輪の翼』公開リハーサルの様子
リハーサルが終了すると6月24、25、26日に赤レンガ倉庫でおこなわれる公演だけでなく、さらには和歌山、香川、
大阪のツアー公演に向けて熱い意気込みを話してくれました。
やなぎさんは“ロードムービー”ならぬ”ロード舞台”だということに加え、公演を巡業をすることでその土地を活性化
する意図があるそうです。
新内などジャンルも出自も多彩な出演者たちが様々な趣向を凝らし、やなぎさんによる独創的な中上健次さんの世界を
織りなしていきます。
前代未聞である「デコトラ演劇」の証人として、横浜赤レンガ倉庫の野外公演を鑑賞しに、足を運んでみてはいかが
でしょうか。
パラソフィア京都国際現代芸術祭における二条城でのイベント風景 2015 年3 月6 日
撮影:表恒匡
文・写真:新麻記子
【情報】
やなぎみわステージトレーラープロジェクト『日輪の翼』
原 作:中上健次
演出 ・美術:やなぎみわ
音楽監督:巻上公一
脚 本:山﨑なし
公演日程
6/24(金) 18:30
6/25(土) 18:30
6/26(日) 18:30
※開場は開演の30分前
会場:横浜赤レンガ倉庫 イベント広場(野外公演)
【チケット情報】
チケット発売中 !
チケット料金
▼全席自由/入場整理番号付き
◉前売一般
4,000円
◉U24チケット
2,000円
◉高校生以下割引
1,000円
◉シルバー割引
3,500円
◉当日
4,500円(各種割引はなし)
※各種割引チケットについては、チケットかながわ(電話窓口)のみでのお取扱いとなります。
※未就学のお子様のご入場はお断りしております。
チケット取り扱い
▼チケットかながわ
0570-015-415(10:00-18:00)http://www.kaat.jp/
▼チケットぴあ
0570-02-9999 [Pコード 450-619] http://pia.jp/kaat/
▼イープラス http://eplus.jp/ (PC・携帯)
▼ローソンチケット
0570-084-003 [Lコード:34809] http://l-tike.com/play.kaat
※本公演は野外公演のため、台風などの荒天時は中止の可能性があります。
公演当日12時に開催の有無を決定し、KAATウェブサイトhttp://www.kaat.jp/ 及び
やなぎみわオフィシャルHP http://www.yanagimiwa.net にてお知らせします。
※上演時間は約2時間半を予定しております。
【出演者】(五十音順)
<オバ>
重森 三果 (和楽アーティスト)
SYNDI ONDA (歌手)
ななな (クラウン)
檜山 ゆうこ (ボイス・パフォーマー)
南谷 朝子 (俳優)
<若衆>
石蹴 鐘 (サーカス・パフォーマー)
上川路 啓志 (俳優)
辻本 佳 (ダンサー)
西山 宏幸 (俳優)
村岡 哲至 (俳優)
<若い女>
サカトモコ (サーカス・パフォーマー)
藤井 咲有里 (俳優)
MECAV (ポールダンサー)
<楽隊>
Saro (タップミュージシャン)
嶋村 泰 (ギタリスト)