2016年2月28日、東京丸の内ビルでメディアアートフェスティバル「AMIT(Art, Media and I, Tokyo) 2016」が
開催された。
フランス語で友達を意味する「AMI」という言葉を含む、AMITは東京の「都市」で「テクノロジー」×
「アート」×「私」が出会い、繋がりを見出していくことがコンセプトである。アーティストによる展示と
ワークショップ、トークセッション、ライブパフォーマンスの4つのプログラムで構成されていた。
カンカン、コツコツ、しゃらんしゃらん、コーンコン、カシャカシャ・・・
「AMIT2016」の会場に響く不思議な音、音、音。
音に誘われて行ってみると、フライパン・ビー玉・スコップなど、誰もが一度は目にしたことのある
日用品が使われた沢山のオブジェが自ら奏でていた。
AMITのプログラムの一つ「カナデルエキシビション MESHで奏でるワークショップ」で作られた
オブジェの展示だ。
ワークショップ名にある「MESH」とは、「瞬間的にプログラミングが出来るクリエィティブな
スマートDIYキット」。
「MESH」は合計7種類で、オレンジ色の「LEDタグ」、緑色の「ボタンタグ」、エメラルド色の
「人感タグ」など、色毎に様々な機能をもつ。
また、「MESH」専用のアプリケーション上で、「MESH」タグのアイコン同士を結ぶことで、
誰でも簡単に「MESH」を動かすことが出来る。
例えば、「ボタンを押すと、電気を光らせたい」場合は緑の「ボタンタグ」とオレンジの「LEDタグ」の
二つの「MESH」を使用し、またアプリ上では「ボタンタグ」と「LEDタグ」のアイコンを結んで
プログラムが完成する。
参加者は、カラフルな「MESH」に参加者の持ち込みと主催側で準備したフライパン、ビー玉、スコップ、
洗濯バサミ、スプーンなど、ありとあらゆる日用品を、紐やクリップで括りつけて、思い思いの音を奏でる
オブジェを作っていく。
ソニー株式会社の「MESH project」とアーティストの加治洋紀さん・小林椋さん ・原淳之助さんの
コラボレーションで実現した当ワークショップ。
「MESH project」のお一人、齊藤隼人さんとアーティストの原淳之助さんにお話を伺った。
「参加者の皆さんが楽しそうに作っているのが印象的でした。準備する側としても嬉しかったですね。
…予想もしていなかった作品も出てきました。」とワークショップを振り返る齊藤さん。
ワークショップの事前に、テストで何パターンかオブジェを作っていた齊藤さんと原さん。
良い意味で「予想外の作品」を教えてもらうと、原さんが選んだのはエメラルド色の「人感タグ」と、
透明な瓶とビー玉を組み合わせたオブジェ。
「MESH」が人の動きを感知した際に生みだす動きで、紐で吊るされた瓶を傾けることで、中の数粒の
ビー玉がしゃらん、しゃらんと澄んだ音を奏でる。
「(日用品同士を)ぶつけて音を鳴らす作品が多いのに、(瓶の中のビー玉を)傾けてずっと鳴り続けていて
オシャレ」で、「これ、良い使い方だなあと」と感心されたそうだ。
今回の参加者は、子供と大人を合わせて13名。
過去の「MESH」ワークショップに参加した経験者もいた一方で、ほとんどの参加者は「MESH」を
触るのは初めてだったそうだ。
しかし、ワークショップ当日は、「音を奏で”何か”をつくる」と最小限の説明にとどめ、「このMESH又は
この道具を使って下さい」など具体的な説明をしましたが、参加者には出さなかったようだ。
その理由は、「敢えて先入観をもってほしくなかった」からと齊藤さん。
また、「デバイスの使い方が分からない、などプログラムの質問については指示を出しましたが、
「何を作るかについては、動いて音がなるもの、とアイディア的な意味でのアドバイスはしていない」と
原さんも話す。
決められた手順に沿って作ってもらうのではなく、どんな作品が出来上がるのかどうか、参加者はもちろん、
主催者も分からない。ワークショップの進行を見守っていたお二人は「果たして作品は完成するのか」と
心配にはならなかったのか、とふと疑問に思った。
「ドキドキしました!形になるのかは正直不安でした。」と、笑いながら話してくれた齊藤さん。
しかし、今回のワークショップのテスト試作を行った際、齊藤さん自身が「気付いたら夢中になっていた」
ので、「MESHを使って楽しんでもらえる自信」があったそうだ。
最後に「MESH」の魅力について「小学生から大人までの幅広い年齢層まで楽しめること」と齊藤さんは
話してくれた。
「メディアアートは、複雑な機械やプログラミングなど、人によっては少しとっつきにくいイメージが
あるかもしれません。MESHでテクノロジーと遊んでいるうちに、自然とメディアアートに対する心理的な
敷居が下がってくるんじゃないかと思います。」
確かに、「科学技術」と聞けば、「難しそう‥」と反射的に苦手意識をもつ人も一定数いる。
そう思う人たちにも、「MESH」を使ってもらえば、難しいプログラムや複数の道具を使う必要もないため、
誰でも簡単にアーティストになれる楽しさが伝わっていくはずだ。「MESH」は科学=難しいイメージを
するりと変えてくれ力を持っているように思えた。
また、当ワークショップの作品解説はとてもシンプルで、「MESH」と、ワークショップの二点を説明した
のみだ。
作品毎に、使用した「MESH」や、日用品がどういった音を奏でるのか、などの具体的な解説は全く
設けてない。説明し過ぎない展示方法のおかげで、齊藤さんが言われたように見る側も「先入観」を
持たずに、目の前のオブジェの音に耳を傾けることが出来るようだ。
ビー玉の音を、きちんと聴いたのは、何年振りだろう…もしくは初めてだったかもしてない。今まで
「見る」又は「使う」ことで知ったつもりだった日用品達。身を粉にする思いで、せかせかと働く日常では
聴きそびれていた音たちだったが、そんな忙しい日常からふっと離れた私の耳にも、「AMIT2016」が
奏でる音色は心地よく届いた。
文・写真:鹿島遥
【情報】
AMIT (Art, Media and I, Tokyo) 2016
日程: 2016 年 2 月 28 日(日)
時間: 11:00〜21:00
会場: 丸ビル 1F マルキューブ(東京都千代田区丸の内 2-4-1)
「AMIT」
「遊び心を形にできる MESH | First Flight」
https://first-flight.sony.com/pj/4/遊び心を形にできる%20MESH
「MESH TM」
http://meshprj.com