たくさんのアートに出会えた! 3331アートツアーレポート
girls Artalk代表・新井まるがコンダクターを務めた、3331アートツアーでの模様をお届けします。
会場である3331 Arts Chiyodaは旧・錬成中学校の校舎をリノベーションし、
約10軒の個性あふれるギャラリーとクリエイティブ系の事務所が併設している総合文化施設です。
最近では、魔法少女たちの友情を描いたアニメ『まどかマギカ』や西尾維新の小説をアニメ化した『化物語』など、
制作会社シャフトの軌跡を追った『MADOGATARI展』で話題を呼んでいる、今、最も熱いスポットと言っても
過言ではありません!
そんな3331ギャラリーの魅力は、多数のギャラリーが存在することで、様々なジャンルの
作品に触れられるだけでなく、素晴らしい作品を生み出す若手作家に焦点を当て、
その作品を惜しみなく展示しているところにあります。
アートツアーでは併設しているギャラリーを回遊しながら作品を鑑賞するだけでなく、
在廊している作家さんやディレクターさんに作品についてお話しを伺うというものです。
滅多に聞けない作品の意図や経緯について伺うこともアートツアーの楽しみですね!
今回、お邪魔させていただいたのは、Bambinart Gallery、Gallery Jin、KIDO Press、アキバタマビ21、
Gallery OUT of PLACE TOKIO、AIR 3331の6つのギャラリーです。
まず、はじめにBambinart Galleryというギャラリーを訪れました。
12月13日(日)まで謝花翔陽さんが中心となり、自身が選出した造形作家4人によるグループ展を開催しています。
展覧会のタイトルにもなっている『3/2, 4』。
“3”は3次元のもの=立体である造形作品を制作し、”2”は2次元のもの=平面である絵画作品に挑戦し、
そして”4”は4次元表現への可能性を探る意図もありますが、同時に4人という意味が込められています。
現在、武蔵野美術大学に在学している永井天陽さん。
かわいいバービー人形やぬいぐるみなどをアクリル板で包み込んだメタラクションシリーズという作品。
骨壷からインスピレーションを受け、内側に”人”が入っている状況を不思議に感じ、
そういうことが日常にもあるんじゃないかと思い作り始めたと話してくれました。
髪や体の一部が出ているのはパッケージ感を払拭することに加え、外側のアクリル板と内側の物体を同じに
捉えて欲しいという願いが込められています。
そして、あまり画を描かないので手こずったという平面にある絵画作品は、
造形を作成する際に用いる塑造・粘土を描いたそうです。
粘土で物体を形成する際に見えるのは表面だけですが、その粘土の内部がどうなっているのか気になり、
そこからヒントを得て平面の絵画を制作したとおっしゃっていました。
こちらの作品は宮坂直樹さん。
在廊していなかったためディレクターの米山さんにお話しを伺いました。
立体作品では目に見えない電気の流れから、普段何気なく駆け巡っているものを、
意識を造形するスタンガンの作品や、ワインを飲むには人が動かないというところから、
人の動きを造形するワイングラスの作品を展開していました。
平面作品ではクラゲの行動をドライヤーで追ってできた刻印を発表しています。
造形物を作るというところではなく、その観念そのものを彫刻するという考えのもと、
自分の意識を超えたところで作品が完成するという大変面白い作品です。
熊谷卓哉さんの作品からは論理を構築して制作した過程が伺えました。
発表された3次元の立体作品では※MASSと言われる肉体的な西洋彫刻に対して、
弥勒菩薩などに代表されるMASSがない日本式彫刻を目指して制作されました。
そして、台座と物で”彫刻”として成立するのではないかという提案もしています。
“MOVE=動く”をメタファーとして持ち運びができる台座は、屏風を彷彿させて日本を意識
していると同時に、自分の領域を広げて場所を展開するのに、必要な”足”の役割を果たしています。
屏風を意識したという台座の表面は、スマートフォンを意識し、※マチエール感を反映させたと仰っていました。
古来から屏風に描かれた日本画は絵の具や金箔を用いることでボコボコしていますが…
そこには私たちが普段から使用しているスマートフォンのツルツルした画面を意識することでリアリティを表現
しています。
※マチエール感…美術で、絵画の絵肌、彫刻の質感など、作品における材質的効果。また、表現されたもの固有の材質感。
また、台座の上に飾られている黒色の造形は神社の鏡を意識しているだけでなく、
黒色を用いることで「死」を意味し、数字の[0]虚無の状態を表しているとのことでした。
2次元の平面作品では上記にもあったマチエル感を反映させ、
「無意識」と「意識」をテーマにおいた作品を発表しています。
そして、本展覧会で中心となりメンバーを選出した謝花翔陽さんは、
かつて平面作品中心に制作していたという経緯をお持ちの作家さんです。
学部で彫刻を、大学院で現現代美術を学んだあと、彫刻作品に
対する強い憧れを抱き、現在は造形作品を制作しつづけています。
自身が彫刻を制作することを深く考える際に、原始時代まで遡り彫刻の歴史にまで迫ったそうです。
人間が一番はじめに何を作るのかということに対して想いを馳せながら、人間の形を模倣するところか
ら始まったのではないかという仮説を立て、自分は人体を作ろう!と模倣したのが今回の作品です。
彫刻は”MASS”や”MOVE”という概念のもと”生命感”を出すには
どうすればいいかということが命題だと言われているそうです。
特に彫刻は固まっているものなので、そこに動きをもたらすにはどうすればいいのか?
これまでの多くの彫刻作家は試行錯誤してきたのだと知りました。
今回、謝花さんが制作した作品は”生命感=エネルギー”という要素で「電気」、
加えて”動き”という要素で「回転」を用いることで、ある種の生命感を生み出そうという試みが感じ取れます。
そして、本作品は自身が彼女と別れたことをセンシティブに作品に反映させたもので、
彼女が「いい子になりなさい。」と諭して、リロ&スティッチのアニメ作品を見せたそうです。
そのことから頭部がディズニーキャラクターでお馴染みのスティッチを象っています。
作家さんから直接をお話しを伺うことで重厚感がある作品の意図や経緯が理解できました。
また、理論で構築する作家さんや感情を反映させる作家さんなど、作品が生み出される
過程にも対照的で、様々な背景があるのだと気づくことができました。
続いて、一同が足を向けたのはGallery Jinです。
12月6日(日)まで数多くの絵本や文庫本の挿絵を手がけている早川純子さんの個展が開催されていました。
約半年ほど長期滞在していたインドネシアのジャワ島にある古都・ジョクジャカルタから帰国した早川さん。
そこで出会ったものなどを展示しています。木版、木口木版、ドローイングなど約20点が展示。
「りすのすり」「いかしかい」などの回文を用いた作品が、とてもポップで可愛らしく筆者の目にとまりました。
こちらは作品を制作する際に用いられるビュランという細い表現ができる道具を見せていただきました!
そして、Gallery Jinの隣にある版画工房も併設されたギャラリーKIDO Pressを訪れました。
こちらは12月27日(日)までオージュンさんの個展を開催しています。
展覧会タイトル『紙相撲』とあるように、両サイドの壁に展示されている作品を、見比べてみるとあることに
気付ます。片面の壁にはクレヨンや鉛筆を用いて描かれた作品、そしてもう片面の壁には版画作品が展示されて
います。
見比べてみても大差がなく、教えられてわかりました。
ツアーに参加された方々も見比べようと真剣な眼差しを向けていました!
続いて、多摩美術大学が運営する、卒業生を中心とした若手作家のための
作品発表の場であるアキバタマビ21に伺いました。
この時、開催されていたのは3大学の交流展で4名の教授がそれぞれ選出した作家の作品展示をしていました。
中でも、大変驚いたのは田島大介さんの作品です!
ダンボールで緻密に再現された戦艦と、上空から見下ろした視点で描かれた都市の絵画です。
その精密な作品が国内外に評価され、今最も注目を浴びている作家さんの1人として、活動の幅を広げているそうです。
また、同フロアで展示されている齋藤春佳さんの作品は、
田島さんの無機質な作風と対比して、ポップで明るく躍動的でした。
こちらのリボンには一つ一つ、絵柄が描かれています。
その一つ一つに目を凝らしてみると、彼女の記憶の断片が読み取れます。
同ギャラリーの隣のフロアではパフォーマンスをすることが作品になる
インスタレーションを手がけた迎英里子さんの作品と、
荒々しい木の削りカスまでが作品の一部である高山陽介さんの作品が展示してありました。
そして、一行が歩を進めたのは作家が在廊してるGallery OUT of PLACE TOKIO。
或る晩「死は烈しい 死は生きたことの証だからだ。」という結論に達し、
「それ」唐突に理解したというイギリスの詩人ジョン・キースの詩にある
『Why Did I Laugh Tonight?』という一節を展覧会タイトルに用いた2人展。
陶芸と写真に共通している焼くという行為から、褪せることのない不変の世界、
作品に宿る”永遠”を汲み取るというもの。
衣類を身につけていた時の記憶を時間をかけて丁寧に作品化しようとした山本優美さんの作品は、
レースやシワなどがまるで本物のような布の質感で、「陶芸」だと言われなくては分からないほどのものでした。
所々キラキラしている水のようなものは焼くときに用いられるガラスの成分が含まれて居る釉薬です。
「ネガポジ反転を繰り返し、影の中に複層的な精神を見出す」
三宅砂織さんが在廊していたので、作品についてのお話を伺いました。
感光紙の上に影を落とし、プリントして定着させるという、フォトグラムという技法を用いているのですが、
三宅さんの場合は既存の画像=写真をよく見ながらトレースし、強化ポリエステルフィルムという透明のフィルムに
描き、暗室で光を当てて影が落ちた感光紙をプリントすることでモノクロが反転するという工程を経ています。
なので、作品の白の部分は黒で塗るなど…頭の中でネガポジを反転させて描いているという細やかな作風です。
もともと絵画を描いていたという三宅さん。
次第に人の精神性や物の考え方に興味を持つようになったそうです。
フォトグラムという技法を用いるのは絵画の起源でもある、一つのメタファー
”影”の重要性に気づいたことがキッカケだと話してくれました。
私的なイメージを投影させた写真であるにも関わらず、社会的、歴史的、地域的な存在であることなど、
イメージを媒介した人間の在り方や精神的作用に、三宅さんは絵画を見るという視点を通し、
考察しながら作品を制作しています。
最後にAIR 3331を訪れました。
滞在制作中の台湾出身のテキスタイル作家、ファッションデザイナーでもある、
チ ティエンさんのショートメッセージプロジャクトに参加しました。
銀杏や笹の葉と再生紙を使い、1枚1枚紙を作ったそうです。
彼女が現在制作中のインスタレーションで、みんなが書いたメッセージが作品の一部になるというものです。
こちらの出来上がった作品は12月4日(金)−18日(金)まで展示されるとのことです。
今回、初めてアートツアーに参加してみて…
作家さんが思い描く独自の解釈を用いた思想だけでなく、
それを反映させた制作過程に触れられたことに感動しました。
また、鑑賞者である私たちも作品の見方、新たな驚きや発見があったりと、大変楽しむことができました!
アートという表現にはまだ見ぬ可能性が宿っていますが、それを理解してこそアートの楽しみ方が理解できます。
このようなツアーをまた企画して、楽しさを広めていきたいと思います。
文 / 新麻記子 写真 / 3331 Galleries
【girls Artalk関連イベント】
アートエバンジェリスト協会主催 アートサプリウォーク
新井まる会長と行く丸の内エリア
日付:2016年1月30日(土)
時間:13:00-16:00
集合場所:12:50 JR東京駅丸の内北口(予定)
定員:20名 ※満席になりましたら締め切ります。
参加費:3500円(資料、 管理費込)※消費税別
申込方法:contact@ae-salon.com
上記アドレスに「1/30イベント参加希望」と明記の上、メールをお送りください。
こちらから申込受付メールをお送りし、ご入金確認後、お席の確定になります。
【会場情報】
3331 Arts Chiyoda
【ギャラリー情報】
◆Bambinart Gallery
http://www.bambinart.jp/index.html
◆Gallery Jin
◆KIDO Press
◆アキバタマビ21
◆Gallery OUT of PLACE TOKIO
◆AIR 3331
【会場関連イベント】
N3331 クリエイティブナイト
日時:2016年1月28日(木)
時間:20:00-22:00
会場:カフェ&和酒 N3331
参加費:シングル 3500円 / ペア 6800円 /
フード+1ドリンク
詳細・申込:http://n3331.com/event/
ポコラート全国公募vol.5 受賞者展
会期:2016年1月7日(木)~1月20日(水) 会期中無休
時間:12:00-20:00 (入場無料)
会場:3331 Arts Chiyoda 1F メインギャラリーB
詳細: http://www.3331.jp/schedule/003142.html
ポコラート全国公募vol.6 全国公募 参加募集
募集期間:2015年12月1日(火)~ 2016年2月11日(木・祝)
<審査員:作品部門>
会田 誠(美術家)
鴻池 朋子(美術家)
保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)
中村 政人(アーティスト、東京芸術大学教授、アーツ千代田 3331統括ディレクター)
<審査員:ワークショップ部門>
大月 ヒロ子(IDEA,INC.代表取締役)
藤 浩志(美術家、十和田市現代美術館館長)
中村 政人(アーティスト、東京芸術大学教授、アーツ千代田 3331統括ディレクター)
詳細: http://www.3331.jp/schedule/003142.html