ホイッスラー展×国際音楽祭NIPPON×Girls Artalkスペシャル[前編]
内覧会レポート
「心のひだにそっと染み入る――ホイッスラー、色と形のハーモニー」
昨年12月より横浜美術館で開催中の「ホイッスラー展」、もうご覧になりましたか?
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)は、いまから180年前のアメリカに生まれ、パリで学び、19世紀末のロンドンやパリで「唯美主義」のリーダー的存在として活躍した画家。その生涯は、ちょうど大英帝国の繁栄を築いたヴィクトリア女王の時代と重なっています。
年で働く人々や風景を描いた版画や肖像画で成功した彼は、色彩と形のハーモニーに至上の美を見出し、音楽を連想させるタイトルを自らの作品につけました。当時一世を風靡した「ジャポニスム」の画家としても有名です。
内覧会に到着すると、さっそく本人のお出迎え。整ったひげとさりげなく落ちた前髪、気取った表情にダンディの片鱗が伺えます。
ホイッスラーらしい肖像画『ライム・リジスの小さなバラ』も(中央)。ライム・リジスの市長の娘、その名もロージー。印象派などではお目にかからないベラスケスのような色味と、不機嫌なお嬢さんの表情がとっても魅力的!
周囲には、代表作『灰色と黒のアレンジメント』が鎮座しています。
《灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像》 1872-73年 グラスゴー美術館 © CSG CIC Glasgow Museums Collection
悲しげな表情のカーライルは、スコットランドの歴史家にして批評家。ホイッスラーの母親の肖像画に感動し同じように描いてくれと依頼したそうで、構図も雰囲気も驚くほど似ています。まさにアレンジメント(編曲)。
おもしろかったのが映像展示『青と金のハーモニー: ピーコック・ルーム』。ホイッスラーが手掛けた室内装飾です。
富豪レイランドのロンドンのタウンハウスについて相談されたホイッスラーは、依頼主の留守中にデザインを勝手に変更してしまいます。完成したのは陽の光によって色合いを変えるピーコック・ブルーとゴールドの、きわめて耽美な空間。当然レイランドは大激怒し、ふたりは絶交しました。しかしその後もレイランドは、このまま部屋を使いつづけたそう。なんともダンディな、ツンデレエピソードがいとおしい!
念願の「ホワイト・ガール」たちにも会えました。
白眉は『ノクターン: 青と金――オールド・バターシー・ブリッジ』。
生で見た青は、印刷とまったく違っていました。
「ホイッスラーの表現する、一見して地味で完全に抑制された、微妙な色調に心の襞をそっとなでられるような感覚を覚えました。淡いのに印象深い、そんな作品に沢山触れられたと思います」(茂木)
青の濃淡を眺めながら、ショパンのノクターンが耳に流れ込んできたときの感動と言ったら。「物語」ではない圧倒的な「美しさ」に涙すること。それはまさに、音楽とおなじ感覚でした。
最後に、ホイッスラーのアトリエ。
壁に浮かんでいる蝶は、ホイッスラーが日本の家紋をヒントにイニシャル「JW」を図案化したもの。
ミュージアムショップには、横浜元町の老舗・近沢レース店からこれをレースパターンにあしらった、可憐で上品なハンカチなどが並んでいます。ダンディなヒゲシリーズもオススメ!
ダンディな「ホイッスラー展」は、3月1日まで開催中です。
取材: 茂木ミユキ、高野麻衣
文: 高野麻衣
撮影: チバヒデトシ
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昨年12月には、“音楽的画家”の展覧会にふさわしく、国際音楽祭NIPPONと横浜美術館のコラボレーションによるコンサートが開催されました。
girls Artalkでも、その展覧会とコンサートの両方をより深く楽しめるアートツアーを開催。アートツアーの模様は、後編でご紹介いたします。
【インフォメーション】
ホイッスラー展 (公式サイト)
横浜美術館 (〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
2014年12月6日-2015年3月1日