ムーミン作者の半生を描いた、映画『TOVE/トーベ』
Bunkamuraでの上映は11/4まで
大切なのは、
自分のしたいことがなにかを、
わかってるってことだよ。
ースナフキン
トーベ・ヤンソンの半生と、知られざるムーミン誕生の舞台裏を描く情熱の物語。
現在公開中の映画『TOVE/トーベ』が話題になっています。
© 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved
第二次大戦後のフィンランドを舞台にした、
自由と芸術を愛した情熱的で繊細でポジティヴな、とあるアーティストの物語。
「ムーミン童話」シリーズを読んでいなくても(もしくは忘れていても)、魅力的な造形で描かれるトーベの熱量の高い生きかたを観ているだけで十分に楽しく元気の出る、
好きだった方なら記憶の中のあの作品に対する印象が大きく変わるので、本棚を探してシリーズを読み返したくなる、そんな映画になっています。
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彫刻家だった父ヴィクトル(ムーミンパパ)、左翼系政治家で作家のアトス・ヴィルタネン(スナフキン)、「自分たちだけに解る言葉」で語り合う関係だったヴィヴィカ・バンドラー(トフスランとビフスラン)、晩年まで人生を共にするパートナートゥーリッキ・ビエティラ(トゥーティッキ)といったいくつかのキャラクターたちの原型となる恋人や家族が、幻想的だが比較的乾いた描写の多かった原作のイメージからおおきく外れた人間的かつ情緒的な展開とともにトーベの前に現れることで物語は進んでいきます。
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現在のフィンランドはLGBTQの権利保障に対して先進的な国の一つになっていますが、映画の舞台となる1940年代では同性愛は処罰の対象でした。劇中に社会状況の描写はありませんが、ともすれば奔放なだけにも見える彼女の行動そのすべては、実は強い抑圧の下での自由への信念に基づいていて心を打ちます。
そういった「抑圧された女性」のお話でもありつつ、あまりそこへ偏らない演出なのは、
自由さ、アナーキズムに対する全肯定がテーマの大きな核となる部分である為で、(その点に抵抗さえ感じなければ)彼女の姿勢は時代を超えて男女問わず勇気を与える力強さに満ちています。
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遠い記憶の中の「児童文学なのに何処かザラついたわかりにくさを含む魅力」がどこから来ていたのかを理解することであらためて原作への評価も高くなる、という伝記映画としての機能性という側面から見ても非常に優れた作品。
トーベのダンスと共に始まるオープニングカットで使われるメインテーマを含め音楽の使い方にも監督の才能を感じます。
【作品情報】
映画『TOVE/トーベ』
監督:ザイダ・バリルート
脚本:エーヴァ・プトロ
撮影:リンダ・ワシュベリ
音楽:マッティ・バイ
編集:サム・ヘイッキラ
アルマ・ポウスティ(トーベ・ヤンソン)
クリスタ・コソネン(ヴィヴィカ・バンドラー)
シャンティ・ローニー(アトス・ヴィルタネン)
ヨアンナ・ハールッティ(トゥーリッキ・ピエティラ)
ロベルト・エンケル(ヴィクトル・ヤンソン)
公式サイト https://klockworx-v.com/tove/
新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
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