個性炸裂!アイディアの達人・アルチンボルド~Archive vol.1~
girlsArtalk読者の皆様、こんにちは。編集部の鈴木です。 アートの話をしていると出てくる、様々なアーティストの名前。有名な作品なら記憶にあるけれども、実は作家を良く知らない方も多いのでは。歴史的な芸術家をもっと理解することによって、作品や作家自身をより身近に感じてもらえたら、と今後アーカイブ記事を定期的に作成していきたいと思います。記念すべき第一回はアルチンボルドです。
野菜や果物を組み合わせ、人物に見せる摩訶不思議なこの絵を皆さんも一度はご覧になら れたことがあるのではないでしょうか? 作者の名前はジュゼッペ・アルチンボルド。1526年、イタリア・ミラノ生まれの画家です。
一体なぜ、肖像画を野菜や果物で描こうと思い至ったのか?
普段、私達が日常生活を送る中で、この野菜、何かの形に似ているな、この木の根は人の顔にも見える!くらいは思うことはあっても、それを肖像画にしてしまおうとは、なかなか考えませんよね。なぜ、アルチンボルドは人を「もの」で、しかも果物や野菜、あげく花や本で描こうと思ったのでしょうか?それは、意外にも頼まれていたから!アルチンボルドが生きた時代は大航海時代。当時、珍しい食べ物は富の象徴でした。フェルディナント一世の宮廷画家であったアルチンボルドは、権力を知らしめる為に、少々滑稽ともいえる肖像画を描いたのです。ブラックユーモア的な絵の裏側には、政治的な背景が潜んでいたのですね。
マルチな才能を発揮!演出家や発明家としての一面
アルチンボルドは最初から画家を目指していたわけではありませんでした。当初はステンドグラスを学んでいたのです。彼の興味の矛先は尽きることがなく、宮廷画家となってからも宮殿内の装飾や、衣装制作、祝祭の演出にまで及びました。遂には楽器の発明まで…!知性的な面を持ち合わせたアルチンボルド、とても意外ですよね。まるで天才、レオナルド・ダ・ヴィンチのようです。
想像力だけじゃない!技術も確かな画家
これがアルチンボルドの作品!?と驚かれる方もいるでしょう。奇怪、独創的、ときには良い意味でグロテスクとすら表現されるアルチンボルドですが、伝統的な宗教画を制作していた側面もあります。確かなデッサン力に裏打ちされているからこそ、繊細かつ緻密に食べ物を描きあげることが可能だったのです。可笑しみのある肖像画を圧倒的なリアリティを持って鑑賞者に訴えかけられるのは、実力が成せる技だったのですね。
今なお、愛され続ける理由は比類なきアイディア力にあり!
1593年にアルチンボルドは故郷、ミラノで亡くなりました。死因は腎結石と言われています。彼の画風を模倣するような作家は度々現れますが、彼を超えることはできません。やはり類まれなるデッサン力と知性に裏打ちされた作品達は、群を抜いているのです。 現在、アルチンボルドの作品はウィーンの美術史美術館やパリのルーヴル美術館にあり、日本には≪ソムリエ(ウェイター)≫(大阪新美術館建設準備室蔵)という作品があります。機会があれば是非、生のアルチンボルドの作品に会いに行って下さい。
一見すると、ふざけているように見えるアルチンボルドの作品。本当は、とても真面目な作品だったのですね。こうやって画家や作品の背景を知ると、よりアートが楽しんで頂けるのではないでしょうか?
今後もまた、さまざまなアーティストの知識をお届けしたいと思います!
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