“完成”しないアート初来日!『リビングルームⅡ』ミシェル・ブラジー展
”いま、この瞬間はもうこない・・・”ということを、時に忘れてしまいます。
同じ服を着て同じ場所に行っても、髪の毛は毎日少しずつのびているし、場所に流れる空気も毎日毎分毎秒違う・・・考えれば当然のことなのに。
忙しく生きる人々に今一度大切なことを気づかせてくれるアーティストが初来日しました。
ミシェル・ブラジー氏(Michel Blazy)モナコ生まれで、フランス・パリ在住にて活躍するアーティスト。
1990年代より、日用品や自宅の庭などで採取した植物などを用いた作品を制作しているという彼。
”自然とテクノロジー、有機物と人工物といった相反するものを調和させる世界を提案している。”
という彼の展覧会をさっそく取材してきました!
正方形のガラスが沢山埋め込まれたような、光が部屋に美しく降りそそぐ素敵な建物”銀座メゾンエルメス”の8階。
オープニングが行われた夜と後日取材に行った昼では全く異なる表情になり、訪れた鑑賞者をタイトル通り”リビング”のようなくつろぎの空間へと誘ってくれます。
まず、向かって正面に大きくかけられたカーペットには、なにやら曲線が大胆に描かれています。
Le lâcher d’escargots |2009 かたつむり、カーペット|サイズ可変| Edition 2/3 Snails, carpet |Dimensions variable | Edition 2/3 Photo: Martin Agyroglo / Frac Île-de-France, Paris
Courtesy of the artist and ART :CONCEPT,Paris
よく近づいてみるとそこにはカタツムリが数匹・・・!
次の部屋にある一種泥絵のように見える作品も説明を読んでびっくり!
なんと茶色い部分はチョコレート、白い部分は生クリーム、さらにはネズミがかじった跡・・・。
ブラジー氏は作品制作時に、”衛生的ではない”イメージの持つ生き物に役割を与え、自由に参加させることがあるそうです。
”クリーンで静的なギャラリースペース”というイメージを覆すブラジー氏の空間は、まさに”実験室”のようです。
そして、ブラジー氏を有名にした”日用品×植物”のシリーズは、人の手が加えられているのになぜか違和感がなく”オシャレ”でした。
さらに全4脚あるイスには、四季にちなんだ名前がついていて、それぞれ異なるフレーバーのスモークが優しく香ります。座ることもできるので包まれてみてください。
私が特に好きだったのが『ワインを飲む壁』というこちらの作品。
上の写真が初日で、下の写真が4日後。
本当にグラスに入った赤ワインを壁がすっていて、じんわりとシミが拡がっているのです。
どの作品も一般的な絵画とは異なり”完成形”ではなく、見る時間や日によって”成長”したり”腐敗”したり・・・現代人が彼の作品を”詩的だ”というのがうなずける展示でした。
触ることこそNGですが、写真撮影OK!近づいてよく観ることもできるので、ゆったりと鑑賞してみてください。
入場はFREE、会期中にも変化し続ける展示なので、何度でも是非足を運んでみてください・・・!
文 : 山口 智子
写真 : 丸山 順一郎 ・山口 智子
【基本情報】
◾開館日: 2016 年9月16 日(金)~ 2016 年11月27日(日)
◾開館時間:
月~土 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)
日 11:00~19:00(最終入場は18:30まで)
◾休館日: 不定休 (エルメス銀座店の営業時間に準ずる。)
◾入場料: 無料
◾会場: 銀座メゾンエルメス フォーラム (中央区銀座 5-4-1 8 階 TEL: 03-3569-3300)
◾主催: エルメス財団
◾協力: Art : Concept
◾後援: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
◾HP:http://www.maisonhermes.jp/ginza/gallery/