”芸術ってなんだろう?” 回る、 「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」!
漫画家・しりあがり寿さん自身初となる美術館での個展が、7月3日より東京・練馬区立美術館で開催されています。
しりあがり寿さんは、文藝春秋漫画賞や手塚治虫文化賞・優秀賞を受賞し、現在は朝日新聞に『地球防衛家のヒトビト』を連載している傍ら、近年では様々なものを回転させるインスタレーション作品を発表しています。
今回の展覧会は、漫画の原画展示・墨絵インスタレーションなど、これまでの作品にふれながら、新作の回転作品を中心に、大きく2つの章にわかれています。
【 第1章 マンガなど】
■マンガの代表作原画
しりあがり寿さんの作品を知らない方でも、気軽に楽しむことができる展示内容です。シュールで独特な世界観にじわじわ引き込まれます。私は、展示されていた2003年の『真・ヒゲのOL薮内笹子』カバーイラスト原画が気になりました。
1986年に誕生した『ヒゲのOL薮内笹子』。真実の愛を見つけるまで、ヒゲを生やしつづけるOL笹子のギャグマンガです。
その他にも、東日本大震災の日本をテーマにした『あの日からのマンガ』や、朝日新聞に2002年から連載している4コマ漫画『地球防衛家のヒトビト』など、約60点もの原画が展示されています。
第1章の終わりには、実写で撮影した動画をもとにアニメーションとして描くロストコープによる「ゆるめ〜しょん(ゆるいアニメーション)」が、真っ暗な部屋の中に大小合わせて約60点の液晶モニターに映し出されています。
特に、2014年にフランス・パリで開催された葛飾北斎の展覧会「Hokusai」に伴って、作成されたゆるめ〜しょん『Voyage de Hokusai』(北斎の旅) は、北斎が旅をする様子が独特なタッチでゆる〜く描かれており必見です!
【 第2章 回転作品 】
本展の象徴的作品でもある、「芸術ってなんだろう?」という問いの答えを明らかにしてくれるような作品《回るヤカン》です。その答えはヤカンのみぞ知るという印象を受けました。ぜひ展覧会に実際に足を運んで見て欲しい
作品です。
■回転派
こちらの展示室ではもしも「回転派」が印象主義を掲げた「印象派」のように、回転主義を掲げた人たちがいたら?と考えさせられます。この空間にある、石膏像や絵、本など全てが回転し、なんとも奇妙!
■まわる歴史
こちらの展示ではまさに回る歴史博物館となっており、インスタレーションや彫刻、アニメーションなどの作品が紹介されています。私が気になった作品は《縄文人の暮らし》です。縄文人が回転する土器を被っているのですが、どことなくシュールな雰囲気を醸し出しています。縄文土器が帽子に見えてきます。
新作■回る白昼夢
私たちが普段気に留めないような領収書、携帯など、日用品が約600点がゆる〜く回転しています。誰かに宛てた手紙やメモに書かれた文章の内容に思わず笑ってしまいました。細部にまでギャグ要素がちりばめられているのは、しりあがり寿さんのこだわりなのかもしれません。
■ダルマ
私が印象に残ったのは12個のダルマがくるくると回転している作品《回転体は行進するダルマの夢を視る》です。耳を澄ませるとダルマたちがそれぞれ同じ歌っていることに気がつきます。「俺は強いんだぞー!」と聞こえてくるはずです。12個のダルマの歌声はそれぞれ違うので、ぜひダルマに近づいて違いを楽しみながら聞いてみてください。
本展覧会の終盤にある、新作の短編映画《 回転道場 》も見逃せません。回転道場の老師演じるしりあがり寿さんから、「回転」を通して物事は多角的な視点で見ることができるんだぞ!と喝を入れてもらえます。
展示室以外にも、回転している赤い色のネジのインスタレーションがいくつもあります♡
グッズ販売パラパラ漫画のようにイラストが動くメモ帳をお勧めです。
ゆるいようで、核心をついているような作品たち。しりあがり寿さんの漫画作品が好きな方も、現代美術が好きな方も、小さいお子さんから大人まで楽しめる展覧会です。
また東京・練馬区立美術館の後は、愛知県と兵庫県の美術館を巡回します!
是非、お見逃しなく〜。
文 : 矢内 美春 写真 : 新井 まる・矢内 美春
【展覧会情報】
「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」
《東京》
会期:2016年7月3日(日)〜9月4日(日)
休館日:月曜日
開館時間:午前10時~午後6時 ※入館は午後5時30分まで
会場:練馬区立美術館
《愛知》
会期:2016年9月17日(土)~11月6日(日)
会場:刈谷市美術館
《兵庫》
会期:2017年1月14日(土)~3月5日(日)
会場:伊丹市立美術館