ブリヂストン美術館からモネ・ピカソも駆け付けた
~石橋美術館物語 1956久留米からはじまる。~
青木繁、坂本繁二郎、古賀春江ら洋画家たちを生んだ街である福岡県久留米市。
東西の名画を観られる美術館として、今から60年前に開館した石橋美術館が、この秋より久留米市美術館へと変わ
るという知らせが耳に入った。
石橋美術館という名では最後となる展覧会には、青木繁や坂本繁二郎をはじめとする久留米出身の画家たちの作品に
加えて、現在休館中のブリヂストン美術館から、セザンヌ、ピカソ、ルノワール、モネらの絵画たちも応援に駆け付
けるというではないか。
これまでの60年の歩みをたどる『石橋美術館物語』はどんなものだろう。
豪華な顔ぶれを一目見ようと、いざ久留米市に向かった。
空へとのびる入道雲が夏を想わせる午後。石橋美術館のある石橋文化センターの庭園には大きな噴水があり、訪問者
たちに束の間の涼を与えてくれる。美しい庭園のある自然豊かな美術館とあって、この日も訪れた人々は思い思いに
休日を過ごしていた。
今回の「石橋美術館物語」の先導役は学芸員の森智志さん。「紹介したい作品が沢山ありすぎまして」と語る森さん。
60年記念ということもあり、選りすぐりの作品の顔ぶれから学芸員さんたちの気合が感じられる。
本展は、7つの章立て分かれており、はじまりの第1章「東西の名画を」では、ここ石橋美術館の開館記念展に訪れた
人々による人気ベスト8の作品が迎えてくれた。
青木繁の「天平時代」、ポール・セザンヌによる「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」に、開館記念
展の目録の表紙を飾ったというパブロ・ピカソの「女の顔」が当時の目録とともに飾られている。
当時の新聞の切り抜きや写真から、訪れた人たちは60年前へと思いを馳せる。
ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」/石橋財団ブリヂストン美術館蔵
第2章「より多くの人に」では藤島武二の作品をはじめ、石橋美術館を代表する作品がならび、第3章では久留米の
画家・坂本繁二郎の作品をめぐる構成だ。石橋美術館の創設者である石橋正二郎は、高等小学校時代に教師であった
坂本繁二郎に図画を学んだ過去があるという。それから30年後、坂本は石橋に願いを託す。「郷里出身の天才画家で
ある青木繁の作品を買い集め、小さな美術館でもよいから建ててもらいたい」と。
坂本繁二郎「放牧三馬」/石橋財団石橋美術館蔵
ここではフランス留学時代の作品「帽子を持てる女」をはじめ、八女移住後に取り組んだ馬をテーマにした「放牧
三馬」や「窓の馬」などの坂本作品が観られる。
第4章では日本の近代で初めて国の重要文化財に指定された青木繁の代表作「海の幸」をはじめ、今回の展覧会の
メインビジュアルでもある「わだつみのいろこの宮」は必見だ。
青木繁「海の幸」/石橋財団石橋美術館蔵
青木繁「わだつみのいろこの宮」/石橋財団石橋美術館蔵
フィナーレの第7章「ともに楽しむ」では、クロード・モネ「睡蓮の池」にはじまり、石橋財団によって修復され
見事によみがえった松本豊太「二人の少女」と、藤田嗣治「横たわる女と猫」が並ぶ姿は圧巻だ。
日本美術史においてひときわ色褪せない輝きを放ち続ける青木繁と坂本繁二郎を生んだ久留米という街。
彼らが生まれたこの場所で、60年という年月を彼らの作品とともに歩んできた石橋美術館。
またとない最後の“物語”が、この夏あなたを待っている。
文 ・写真 / 永田菜海
【情報】
特別展
石橋美術館物語 1956久留米からはじまる。
会期:2016年7月2日(土)~8月28日(日)
休館日:毎週月曜日(7月18日、8月15日は開館)
開館時間:10時~17時(入館は16:30まで)
会場:石橋美術館 (839-0862 福岡県久留米市野中町1015)
入館料:一般800円(600円)、シニア600円(500円)、大高生500(400円)、中学生以下無料
※( )内は団体料金、シニアは65歳以上
※前売券はチケットぴあ、ローソンチケット取扱い店などにて500円で販売(Pコード767-240)、Lコード85093)