イタリアや世界のバロック音楽会における最も名高い楽団のひとつであり、
日本でも人気が高い I Musici (イ・ムジチ合奏団)の来日コンサートに行ってきました!
I Musici (イ・ムジチ合奏団) の歴史は古く…
第二次世界大戦後のヨーロッパ。
誰もが復興に全力を注いでいた頃、その活動は物理的なものに限らず、
人々が持つ精神の強化も求められ、文化はその推進役を担っていました。
サンタ・チェチーリア音楽院で学んだ12人の若き才能溢れる音楽家が、
イタリア語の響きを持ち合わせ、尚且つ古の高貴な言い方である
「音楽家= I Musici (イ・ムジチ合奏団) 」と自らが名付け、
1952年にデビュー・コンサートを開催しました。
以来、60年もの歳月を経て設立メンバーが代替わりしても、
劣ることのない情熱溢れる音色は聴く者を魅了しつづけています。
今回の公演は、10月 日に発売したCDにも収録されている「中南米生まれの名曲集」から4曲と
過去に2500万枚ものCDを売り上げ、 I Musici (イ・ムジチ合奏団) の代名詞ともいえる
ヴィヴァルディの「四季」を演奏してくれました!
[1]「中南米生まれの名曲集」
■アンデルマル・ロメオ / 弦楽のためのフーガ・コン・パハリージョ
ピアノを独学で学ぶだけでなく、作編曲や指揮まで手がけた、ベネゼエラ生まれのアンデルマル・ロメオ。
ベネゼエラやコロンビアの”パハリージョ”と呼ばれる3/4拍子のダンスのリズムと、
クラッシックのフーガの要素を伴ったダンスの推進力を対比させている楽曲。
エピソード風のリズミックな変奏曲でした。
■ピアソラ / 「ル・グラン・タンゴ」
アルゼンチンの偉大なバンドネオン奏者であり、作曲家でもあるアストル・ピアソラが、
ロシアのチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチに献贈した作品。
伝統的なタンゴのリズムとジャズに触発されたシンコペーションが加わった「新しいタンゴ」。
最初の部分は不協和音を伴った強いリズムと歌謡的なメロディラインが組み合わさっています。
中間部分では感銘的で感傷的なヴァイオリンとチェロの対話が生まれ、
そして最後の部分では燃え立つようなダンスを彷彿させる楽曲でした。
■センパンテス / 5つのキューバの舞踊
父親からピアノの手ほどきを受け、幾つものピアノ賞を受賞し、ロッシーニやリストからも賞賛をあびた、
キューバで最も名声を博した音楽家でもあるイグナシオ・センパンテス。
特にピアノのための舞曲は、文化的伝統への特筆すべき貢献とされ、40曲以上にも及びます (驚)
各曲は1分~2分前後と短いにもかかわらず…耳を傾けていると、
ロマンチックな色彩が織りなすストーリーが思い浮かんできました。
■ピアソラ / 室内オーケストラのための3つの小品
バンドネオンを使用せずともアルゼンチン・タンゴを古典的なクラッシックの編成で実現した力作。
曲は3部構成になっています。
第1曲「前奏曲」ではオルガンが重低音のリズムを刻み、重々しくダイナミックに…
第2曲「フーガ」はコントラバスの刻むタンゴのリズムに、躍動的な旋律が各パートに登場。
中間部分以降、アンサンブルは一体となり、シンコペーションを多用しながら疾走します。
第3曲「ディヴェルティメント」ではヴァイオリンと低弦の対話で進行していきますが、
中程からピアノと弦楽の協奏曲的な掛け合いとなり、熱狂のうちに楽曲が終了する不思議な楽曲でした。
ここで中休憩が入り、物販コーナーを覗いてみると…
ヴィヴァルディの「四季」を収めたCDが売切れていました!
世界中で空前のバロックブームをもたらし、記録的なセールスを更新しつづける
I Musici (イ・ムジチ合奏団)の人気は本物のようです。
※こちらは売切れ前の物販コーナーです。
そして…その売切れとなったヴィヴァルディの「四季」が生で聴けちゃいました!
[2]ヴィヴァルディ / ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8
ヴェネツィアで司祭をつとめ、聖職者としても活躍した、アントニオ・ヴィヴァルディは、
バロック時代を代表する作曲家の一人として、高い人気と評価を獲得しています。
四季折々の自然と人との営みを描いたソネット(14行詩)が掲げられ、
その内容が独奏協奏曲の形式のうちに音化されている「四季」は、
息もつかせないドラマチックな展開で43分の演奏時間さえ忘れてしまう楽曲です。
「春」や「秋」の優しい季節を過ごす緩やかな情景を彷彿させる音色に対して、
CMなどでも使用される「夏」の3楽章や「冬」の1・2楽章は、
息もつかせぬ緊張感で心臓が締め付けられて苦しくなりました。
アンコールではヴィヴァルディの楽曲、リベルタンゴ、日本の童謡である「赤とんぼ」が披露され…
あたたかい感動に満ち溢れ、その中には涙を浮かべる人もいました。
その粋な計らいに会場からは惜しみない拍手とともに幕を閉じました。
そして、公演終了後のサイン会では長蛇の列…
本公演を通して、I Musici (イ・ムジチ合奏団) は”再生”を繰り返していると感じました。
以前から在籍しているメンバーの経験値が、新しいメンバーのエネルギーを支え、
新しいメンバーの表現方法が、以前から在籍しているメンバーに刺激を与えるなど、
互いに尊重しあいながら、良好な関係性を築いています。
それは、演奏からも理解できます…ヴィヴァルディ「四季」に囚われていた理念を覆し、
タンゴのリズムやジャスのシンコペーションを用いる中南米の名曲を演奏することで、
I Musici (イ・ムジチ合奏団)の新しい形を模索しながら躍進していく姿勢が伺えました。
このツアーは10月末まで…あなたもその”再生”を目の当たりにしてみてはいかがでしょう。
【コンサート情報】
■10月9日(金) 19:00 川越/ウェスタ川越 【プログラムC】
【問】ウェスタ川越 049-249-3777
■10月11日(日) 16:00 鹿児島/宝山ホール(鹿児島県文化センター) 【プログラムB】
【問】宝山ホール 099-223-4221
■10月17日(土) 14:00 大阪/ザ・シンフォニーホール 【プログラムA】
【問】ABCチケットインフォメーション 06-6453-6000
■10月18日(日) 14:00 神奈川/横浜みなとみらいホール 【プログラムA’】
【問】神奈川芸術協会 045-453-5080
■10月20日(火) 19:00 東京/紀尾井ホール 【プログラムD】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960
■10月22日(木) 19:00 秋田/アトリオン音楽ホール 【プログラムC】
【問】秋田アトリオン事業部 018-836-7803
■10月24日(土) 19:00 東京/サントリーホール 【プログラムA】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960
■10月25日(日) 15:00 豊田/豊田市コンサートホール 【プログラムA】
【問】豊田市コンサートホール 0565-35-8200
【プログラムA - ローマ派・コレッリの生徒たち&「四季」】
コレッリ: 合奏協奏曲 ニ長調 op.6-4
ヴァレンティーニ: 合奏協奏曲 イ短調 op.7-11
ロカテッリ: 合奏協奏曲 ハ短調 op.1-11
***
ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集 「四季」 op.8
【プログラムA’】
カストゥルッチ: 合奏協奏曲 イ短調op.3-4
ヴァレンティーニ: 合奏協奏曲 イ短調 op.7-11
ジェミニアーニ: 合奏協奏曲第12番 ニ短調 「ラ・フォリア」
***
ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集 「四季」 op.8
【プログラムB - ヨーロッパ発、南米の作曲家たち&「四季」】
ロメロ: 弦楽のためのフーガ・コン・パハリージョ (ベネズエラ)
ピアソラ: ル・グラン・タンゴ (アルゼンチン)
セルバンテス: 5つのキューバの舞曲 (キューバ)
(キスマーク、高級な夜の女、笑い、もう泣かないで、3つの衝撃)
ピアソラ: 室内オーケストラのための3つの小品 (アルゼンチン)
(プレリュード、フーガ、ディヴェルティメント)
***
ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集 「四季」 op.8
【プログラムC - with 荘村清志】
ジェミニアーニ: 合奏協奏曲第12番 ニ短調 「ラ・フォリア」
ヴィヴァルディ: リュート(ギター)協奏曲 ニ長調 RV93 (ギター: 荘村 清志)
ヴィヴァルディ: 弦楽のための協奏曲 ニ短調 RV127
ジュリアーニ: ギター協奏曲第1番 イ長調 op.30 (ギター: 荘村 清志)
***
ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集 「四季」 op.8
【プログラムD - with 荘村清志】
ジェミニアーニ: 合奏協奏曲第12番 ニ短調 「ラ・フォリア」
ヴィヴァルディ: リュート(ギター)協奏曲 ニ長調 RV93 (ギター: 荘村 清志)
ヴィヴァルディ: 弦楽のための協奏曲 ニ短調 RV127
ジュリアーニ: ギター協奏曲第1番 イ長調 op.30 (ギター: 荘村 清志)
***
ロメロ: 弦楽のためのフーガ・コン・パハリージョ (ベネズエラ)
ピアソラ: ル・グラン・タンゴ (アルゼンチン)
セルバンテス: 5つのキューバの舞曲 (キューバ)
(キスマーク、高級な夜の女、笑い、もう泣かないで、3つの衝撃)
ピアソラ: 室内オーケストラのための3つの小品(アルゼンチン)
(プレリュード、フーガ、ディヴェルティメント)
【CD情報】
コンチェルティ・ロマーニ&コンフルエンシア [2Blu-spec CD2]<日本来日限定盤>
4000円 / MHCC-30002
1952年以来、そのメンバーを変えながら一般の人々とクラシック音楽の世界をつないできたイ・ムジチ。
彼らが2015年の来日公演を前に、そのプログラム同様、ラテン魂溢れる音楽と、コレッリ派のイタリアというまったく異なる二つの音楽アルバムを発売。本作はその二枚をカップリングした日本限定盤。
文・写真 / 新麻記子