六本木・森アーツセンターギャラリーでは、『機動戦士ガンダム展 THE ART OF GUNDAM』と題した、
『機動戦士ガンダム』のアニメ制作に用いられた1000点にも及ぶ制作資料を通じて、
その輝きつづける魅力の真髄に迫る展覧会が開催中です。
『機動戦士ガンダム』
…女性でも一度はそのフレーズを耳にしたことがあるのではないでしょうか?
TV放送されてから35年もの歳月がたち、今尚シリーズ化されつづけている人気アニメ作品です。
スペース・コロニーや宇宙などの近未来を描くSF設定、キャラクターの複雑に重なる人間ドラマ、
兵器としてのスタイリッシュなモビルスーツとその戦い。
そのエンターテイメントの全てが観る者の心を捉えて離しません!
当時は放映しても視聴率が振るわず、52話の予定が43話に短縮されます。
ところが、熱心な視聴者からの声や雑誌等の支持を得て、TVでの再放送が決定します。
合わせて、放送終了後にはBANDAIからプラモデル「ガンプラ」が発売され、
1981年から3部作として上映された劇場版が大ヒットを記録し、
ガンダムは日本アニメ史上に確固たる地位を築きあげました。
それでは、その栄光の裏に隠された秘密を見どころと合わせて内容を紹介していきましょう!
まず、劇中で発せられた数々の名言で埋め尽くされた会場のゲートを通ると、
ホワイト・ベースのメインデッキで大気圏突入をめぐる戦いを体験できる特設シアターがありました。
目の前で繰り広げられる戦闘シーンでは、臨場感あふれる映像に魅せられ、思わず自然と力が入ってしまいます。
映像のラストには『哀・戦士』の楽曲が流れ、誘われるように展示会場に足を踏み入れました。
イントロダクションである素晴らしい演出には、『機動戦士ガンダム』を知らない人でも心が掴まれるはず!
写真:ホワイト・ベース
最初のブースでは、物語の産みの親である富野喜幸総監督(現在:富野由悠季)の
企画段階のメモなどが展示されていました。
脳内で溢れだすイメージを書き留めた「ガンボーイ」の原稿用紙には、
主人公を含めた26名の若者たちが、巨大機動歩兵「ガンボーイ」を中心に10万もの敵と戦う物語でした。
敵が地球人でないなどの違いもある一方で、ホワイトベースの原型「フリーダムフォートレス」が登場し、
登場人物の容姿や性格付けなど、名前以外の多くがガンダムに引き継がれました。
写真:ガンボーイ、制作机
美術監督の中村光毅氏が富野総監督の構想に沿ってイメージを視覚化した美術設定、美術ボード。
「企画段階からブラッシュアップを重ね、その度にイメージラフ画が描かれ、」という注釈を目にし、
この展覧会に使用されてない膨大なラフ画の存在に気付き、大変驚きました。
写真:スペースコロニー
キャラクター・デザインを手掛けたアニメーション・ディレクターの安彦良和氏が、
アムロやシャアら等身大のキャラクターを描いたレイアウト原画の数々。
当初、主人公や仲間たちは日本風の名前を与えられ、敵軍は異星人の設定だったようです。
キャラクターの性格付けや、軍服のデザインなどの多くの設定が、ガンダムに生かされていきました。
写真:キャラデザ
下記のお写真はガンダムやザクなど、スタイリッシュなモビルスーツをデザインしたメカニックデザイナー、
大河原邦男氏の精密な設定画です。
最初の設定では3m程度の想定でしたが、その強さを表すため18mになったそうです。
そして、ガンダムを引き立てるための「やられメカ」である「ザク」、「グフ」、「ドム」のラフ画も!
写真:メカデザ
キャラクターデザインやメカニックデザインの初期設定や決定稿だけでなく、
細部に至るまで修正点が書き加えられたラフ画。キャプションなどをつけて説明されています。
富野喜幸総監督の構想と作品世界を支える、3名のクリエーターの手によって生み出された姿や形が、
「ガンボーイ」から後の「機動戦士ガンダム」へと引き継がれていったのです。
そして、次のブースでは美術監督の中村光毅氏による「宇宙をめぐる美術」を中心に紹介されていました。
物語の舞台となる宇宙の人工居住地「スペース・コロニー」。
その概念自体もNASAが発表した「オニール計画」をヒントに着目して生まれたものです。
ですが、その無機質な外部とは裏腹に内部では、生活者目線の実用的なデザインに徹底されています。
ここでは、宇宙と地球のシーンに分類して展示されています。
写真:美術
ブースを抜けると…次には、名シーンを集めた膨大な数の原画が待っていました!
スーパーヒーローをあえて立てず、敵味方を交差させながら、平凡な少年アムロを中心に、
人々が対立しながらも理解しあい、尊敬の念や恋心を抱く、苦悩しながら成長していく姿が読み取れます。
多彩なキャラクターに性格を与えて深みのある演技を定着させたのは安彦良和氏です。
紙と鉛筆に注いだ情熱を感じながら、歩を進めて名シーンをめぐるたび、とても胸が熱くなりました。
描いたアニメーション原画(レイアウト、原画、修正原画)をもとに、ストーリーを追っていきます。
写真:原画
そして、モビルスーツの息もつかせぬ戦闘シーン!
次々に襲いかかるジオン軍の新型モビルスーツをガンダムが倒すアクションでは、
固唾をのんで見守った人も多いのではないでしょうか。
そんな画期的なメカニックデザインを構築し、数々の設定資料を描き上げた大河原邦男氏。
過去にタツノコプロでガッチャマンなどのメカニックデザインを担当していました。
TV放送後、モビルスーツがプラモデルとして商品化されると「ガンプラ」ブームを巻き起こしました。
商品は累計4億円以上を販売し、ガンダムの代名詞的存在になりました。
こちらの展示室では大河原氏の設定原画だけでなく、ガンプラを使用してモビルスールの名場面を再現していました。
何よりも感動を覚えたのは、原寸大のガンダムヘッド!
写真:資料
写真:ガンダムヘッド
そのほかには、今まで明らかにされることのなかった、シャア・アズナブルの過去が描かれる
ファン待望のOVA最新作『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の制作資料や映像だけではなく、
この秋スタースする、新シリーズ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の映像も公開されていました。
写真:ORIGINブース
そして、何と言っても特設ショップも大きな見どころのひとつ!
東京会場ではオリジナルグッズとして東京限定のガンプラが発売決定しました。
会期中には期間限定販売の商品も登場します。
ショップ内では35周年を記念した販売に合わせてプチ展示も行います。
そのほか、文具、雑貨、Tシャツなど、ここでしか手に入れられない魅力あふれる限定商品が販売されます。
写真:ショップ
今回の取材を通して…
『機動戦士ガンダム』が日本アニメ史上で独自の地位を築き、
一線を画す存在になったのかが理解できたような気がしました。
それは、情熱あるアニメクリエーターの手によって、作品世界が支えられているからではないでしょうか。
ガンダムだけではありません!
他のアニメ作品も同様です…製作陣の熱い想いが身を結び、
日本のアニメカルチャー全体を支えているのではないでしょうか。
『機動戦士ガンダム』を見たことがなくても充分に楽しめた展覧会!
皆さんも、アートという視点から輝きつづける魅力の真髄に迫ってみてはいかがでしょう。
【情報】
『機動戦士ガンダム展 THE ART OF GUNDAM』
開催日程:2015年7月18日(土)~9月27日(日)
会期中無休 10:00~20:00 (入館は19:00まで)
開催場所:六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリー
公式サイト:http://www.gundam-ten.jp
文 ・写真 / 新 麻記子