ウルトラテクノロジスト集団チームラボ。
発表する作品は海外で軒並み高い評価を得ている。
10月末までミラノ万博で公開していた「HARMONY, Japan Pavilion, Expo Milano 2015」(http://www.
team-lab.net/all/other/harmony.html)は、長蛇の列ができ、トップ3に入るほどの人気で成功を収めた。
girls Artalkでも、ここ最近「クリスタルユニバース」(http://www.team-lab.net/all/art/crystaluniverse.html)、
「Flowers in the Sandfall」(http://www.team-lab.net/all/art/flowers-in-the-sandfall.html)といった
新作を立て続けに紹介した。
デジタルアートで革新的な作品を作り続けるチームラボのクリエーションの源はどこにあるのか?
今回、チームラボ率いる猪子寿之さんにこれまでの作品を振り返りながら、お話を伺った。
インタビューは水道橋にあるチームラボのオフィスにて。
ミーティング・商談を行うスペースには黄色い壁に大きな鯉が描かれており、
それぞれの机の間には仕切りなどはなく、様々な声が聞こえてきて活気に満ちている。
(girls Artalk編集部=以下gA)
gA:
プログラマ、エンジニア、建築家や数学者など、デジタルにおける様々な分野のスペシャリストから
構成されているウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」を作ったきっかけはなんですか?
猪子さん:
インターネットが生まれ、新しい社会が始まるだろうと考え、新しい社会で
“何かを作り始める”ような仕事をしたいと思ってチームラボを作ったんだよね。
世界の人々に影響を与えられるような、もしくは何らかの形で
ちょっとでも人類が前に進められるようなものが作れたらいいと思った。
gA:
チームを仲間とともに数人で立ち上げたと聞いていますが、
社員が400人となるような大きな集団に発展することを想像していましたか?
猪子さん:
今のような規模感は、当時は何も考えてなかった。やっていったらこうなったよ。
gA:
日本企業の組織といった感じではなく、チームラボは有機的なつながりで、生き物のように
集団が大きくなっていったような印象を抱いています。今後はどのようになると思いますか?
猪子さん:
できればもっと大きいものを作りたい。待っていてもその機会がくるわけではないし。
だから自ら機会を作らざるを得ないし、自分たちがやりたいことをやるためには、
やりたい環境・状況を作らなきゃいけない。
そのために必要なことをやると、人数が増えていったし、これからも増えていくと思う。
gA:
なるほど…躍進的ですね。
今後どう展開されていくか楽しみです。
ところで、チームラボの発表された作品などを観ていると…
日本古来の風土や文化、日本画のテイストが散りばめられているように感じました。
どんなアーティストがお好きですか?
猪子さん:
日本画家は皆好き。伊藤若冲と曾我蕭白とか。大学時代から好き。
チームラボを始める前くらい、いっとき日本画を見に、よく回ってたよ。
あと同時期、京都の禅寺に、週末、月2で通っていた時期もあった。今もその影響は受けている。
それと村上隆さんはリスペクトしている。
gA:
映画や漫画など…好きな作品があったら教えてください。
猪子さん:
映画は観ないね。漫画はかなり好き。
今だと、『*ヒストリエ』。歴史ものは結構すきかも。
*『ヒストリエ』…『寄生獣』で知られる岩明均氏作。紀元前古代オリエント世界を描いた歴史漫画。
gA:
作品制作にあたって、インスピレーションをどのように得ますか?
作品をゼロから立ち上げる時はどのようにしているのでしょうか?
猪子さん:
チームラボが手掛けている日本画のような作品は、江戸時代の絵画から影響を受けている。
日本画は、描き方が平面的と言われているけど…そのように当時の人は見えていたのではないかと思っていて。
西洋の*パースペクティブとは違った論理構造だったのでは?とね。
作品を作るプロセスを通して、日本古来の空間認識を、論理構造を知るために作っている。
一旦空間を作り、伝統的な日本画の平面になるような論理構造を探して論理変換で平面にしている。
近代以前の日本人は本当にああいう風に空間が見えていたんじゃないか、
きちんとした論理空間で見れていたのではと思って模索しているんだ。
近代以前の日本人が世界をどう見て捉えていたのかに興味があるんだよね。
*パースペクティブ…西洋のカメラのレンズのような遠近法
gA:
その答えは見えましたか?
猪子さん:
どういう論理構造だったかの自分たちなりの答えはあって、作品を作ってるよ!
コンピューターに空間を作って論理構造で平面化している。
例えば写真もある論理変換から平面になっているじゃない?それとは違うやり方で平面化してるんだよね。
デジタルによってアートの美をどう拡張していくかを大切にしているけど、
古来の空間認識の長所をデジタルでの表現に利用できるのではと思ってやっている。
立ち止まってアートを見るのは、西洋的なパースペクティブな観点からでしょ。
それは西洋の空間認識がそうさせている視点の問題なんだよ。
古来日本の見方は、立ち止まる必要性はない。
視点を固定させないから、走りながらでも歩きながらでも、踊りながらみてもいい。
デジタルは、今まで以上に空間アートを作りやすい。
なので、お台場で今年5月までやった「踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」の”踊る”は、
今までは立ち止まらされていた鑑賞者も立ち止まる必然性はないし、踊ってみてもいい。
「カラス」の作品なんて、子供たちは、踊りながら見ていたよね。
▼追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 – Light in Dark
http://www.team-lab.net/all/art/crows_dark.html
それと花の作品は、花で埋め尽くされた空間の中に人が近づくと花があがる仕組みになっていて、
花の空間の中に入っていけるの。空間と立体の境界を破壊した作品。
▼Floating Flower Garden – 花と我と同根、庭と我と一体
http://www.team-lab.net/all/art/ffgarden.html
で、見に来てもらった銀座の「クリスタルユニバース」はこれらと違っていて、
立体のオブジェクトとからっぽの空間。その境界線をなくしていけるのでは?というプロジェクト。
光の点描画から、彫刻を作ることでオブジェであっても空間が作れるのでは、という発想からなんだよ。
gA:
わー、面白いですね!
当たり前とされている今までの概念がデジタルで変わりますね。
新たに追い求めているテーマはありますか?
猪子さん:
基本的には変わらない。あとは「*デジタイズド・ネイチャー・アート・プロジェクト」。
デジタルは最終的に光と音で非物質でしょ。だから自然と共存しやすいの。
人と物の方が自然と対立するんだよ。御船山楽園の池での作品は、水面に映し出された鯉が、
池に浮かんで進む小舟とインタラクティブに反応して泳ぐ。自然が自然のままアートになるんだよね。
*「デジタイズド・ネイチャー・アート・プロジェクト」:
http://www.team-lab.net/concept/digitizedcityartproject.html
▼小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング-
http://www.team-lab.net/all/art/mifuneyama.html
gA:
チームラボの作品に触れるようになって、デジタルの概念が前より身近になりました。
「えのすい×チームラボ ナイトワンダーアクアリウム 2015」(新江ノ島水族館)も
日曜日の夜にも関わらず閉館まで大混雑してましたよ。
猪子さん:
まじすか。それはうれしいね。
gA:
最後に、読者にメッセージをいただけますか?
猪子さん:
えのすいきてね!
色々難しい話もしちゃったかもしれないけどまず体感しにきて。
これから、クリスマスバージョンが始まるから。女子同士、もちろん男子といくのも最適だよ!
ハーバード大学での展示を終え、かなりお疲れのご様子の中、インタビューに応じてくださった猪子さん。
時には長い沈黙と鋭い視線でスリリングなインタビューとなった(笑)
人類を前に進めるため、体力も気力も限界ぎりぎりまで追い込んで日夜クリエーションにいそしむ姿に感服し、
次はどのような作品が作り出されるのか、チームラボの挑戦に目が離せない。
チームラボ
プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、
編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。
アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。
【チームラボ展示情報】
えのすい×チームラボ ナイトワンダーアクアリウム2015
会期: 2015年7月18日(土)~2015年12月25日(金)
会場: 新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19-1)
開館時間: 17:00~20:00 ※17:00から開催する夜間スペシャルイベント
料金: 大人2,100円、高校生1,500円(生徒手帳等提示の必要有)、小・中学生1,000円、3歳以上600円
※水族館の入場料金のみでご覧いただけます
URL:http://www.enosui-wonderaquarium2015.com/
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『チームラボデジタルアート作品「Flowers in the Sandfall」
タカシマヤ ウォッチメゾンの空間を美しく彩る 〜時を刻む砂の流れと花の世界〜』
https://girlsartalk.com/common/feature/19275.html
文 :川嶋一美 写真:洲本マサミ(SUMODESIGN LLC.)
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