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こんな舞台初めて!『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2018』アフターレポート

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2018年3月15日


こんな舞台初めて!『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2018』アフターレポート


 

こんな舞台初めて!『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2018』アフターレポート

 

自分が好きな作品をじっくり見たり、角度や作品との距離を変えて楽しんだり。美術館は様々な見方ができますよね。一方、舞台は決められた座席から皆が一つの演技を観るだけというイメージがあるかもしれません。現在、従来の舞台の概念を覆す公演が増えてきています。

 

『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2018』(以下TPAM)が、2月11日~19日に開催されました。TPAMは国内外のプロのパフォーマンスが期間中の9日間で一度に鑑賞することができ、アジアで最も影響力がある舞台芸術プラットフォームの一つとして知られています。そのため国内だけでなく、世界各地からアーティストや劇場のプロデューサー、フェスティバルディレクターたちが集まります。一般の観客も参加可能で、公演だけでなくディスカッションやセミナーなどで現在の舞台芸術を多方面から知ることができます。

プログラムはTPAMエクスチェンジ、TPAMディレクション、TPAMフリンジの3本立てとなっており、公募公演で構成されるフリンジプログラムの中から今回は2つのダンス公演を観に行きました。

 

 

 

どちらをみる?選べる左右2つの舞台 GRINDER-MAN『SEE SAW』

 

 

 

劇場に入るなりびっくり!会場であるシアタートラムは、通常は入った正面に舞台があるのですが、今回は劇場空間の中央に壁がしつらえてあり、その両側をはさむように舞台、客席があります。公演中は約30分のステージが全部で3回行われ、観客はどちらの舞台を観るのか、各ステージごとに自分で選択して移動することができます。私は最初と2回目のステージを左側、最後である3回目のステージを右側で鑑賞しました。

 

 

 


劇場内にふたつの舞台空間

 

 

 


終演後の様子 (2枚目撮影 杉田)

 

 

 


出演するのは6人のダンサー。私が最初に観ていた左側の舞台では女性3人が、逆側では男性3人が踊っていました。3回とも同じ側で展開していて、演目が入れ替わることはありませんでした。

 


6人全員を一度に見れるのは壁の横にスタンバイしている最初の一瞬だけで、踊り始めると手前にいる3人の作り出す空気に引き込まれます。3人のうち2人は顔にマスクをつけており表情を見ることはできません。唯一顔が見えるダンサーも無表情で3人の中では主導的に動いていく存在…と思いきや、関係性が変わり操られるかのように動く場面もみられました。

 

 

 



めまぐるしく変わる3人の関係性

 

 

 

 


ダンサーの息遣いが分かるほど近くで観ることもできます

 

 

 


始まる前はどちらから見よう?せっかく同じ空間にいるのだからどちらも見逃したくない!と思っていましたが、いつの間にか次々と変わる関係性やダンサー一人一人の動きの繊細さに釘づけになっていました。
それでも、たまに聞こえる着地音や手を叩くような音により向こう側でどんな舞台が展開されているのだろうとワクワクさせられます。

特に向こう側で気になったのは、踊っている3人の後ろに映像で6人が全員出てくるところ。実際に今踊っている映像が映し出されているのかどうかは分かりませんが、現実で踊っているダンサーと映像の中の人たちが溶け合っているかのようでした。

このように中央にある壁は舞台を二分するためだけではなく、映像を映し出すスクリーンになったり、壁の向こう側で起こっているステージに対する想像力をかきたてる重要な舞台装置になっていました。

 

 

 



 

 

 



壁には様々な映像が

 

 

 



個人的に好きだったのは男女どちらの組もやっていた、どんどん動きが大きくなっていくシーン。最初は手の動きと顔の向きだけで表現されていたモチーフが何度も繰り返されていくことで、最終的には腕を放り投げるように大きく使ったりその反動でジャンプをしたりと展開していくのが印象的でした。

どんどん広がっていく水紋のようだと感じたのですが、後から考えると別の場面で流れていた音の波形を示すような映像とリンクする振付だったのかなとも思います。複数回、同じシーンが見られるからこその気づきと楽しみ方かもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

入り口は右ー左のうち自分の直感で観る舞台を決めるというシンプルな選択から始まり、選んだ舞台に男性ー女性ダンサーという対象的な二者が登場します。作品中でも能動的ー受動的、反発するー寄り添うといった表裏の関係にあるものが多く登場しました。

 

その中で舞台脇に急に現れる向こう側で踊っているダンサー、手渡される衣装といった対比を感じない要素も登場します。それに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、それを含めて全ての事象が自分の中に積み上げられ選択肢になるというのがこの作品のテーマだったのではないかと思いました。

1度目のステージの後、移動して向こう側のパフォーマンスを観る、全く同じ席から見るけど焦点を合わせるダンサーを変える、正面から見ていたものを次は角度を変えて楽しむ…など1回経験したからこそ多角的に知りたい気持ちが公演中にどんどん膨らみ、3ステージと言わずもっと見たい!と思いました。

 

 

 


踊り、映像、音楽それぞれに着目するのも良いかも

 

 

 

いつどこで何が起こる?ワンフロアで繰り広げられる回遊型パフォーマンス
ANTIBODIES Collective『ANTIBODIES Collective Performance』

 

 

 



どこにいても映し出されているタイマー

 

 

 

 

この舞台は観客が自由に会場内を歩いてパフォーマンスを楽しむ回遊型の作品で、会場中のいたるところにいるパフォーマーを見て回ります。パフォーマーは演じるだけでなく、音楽を演奏していたり、朗読を行なっている人もいます。

 

観客はその中で何を観るのか、何を聴くのかなど自分で判断し行動することができます。会場内で同時多発的に様々なことが起き、元の場所を見に戻ることなども可能ですが、壁によってフロアが区切られているため全てを一度に観ることができなかったり、壁が可動式なので上演中に空間が変化したりもします。まるで自分がどこかに迷い込んでしまったかのような非常に不思議な気持ちになりました。

 

 

 


タイムスリップしたような一昔前風の衣装とセット

 

 

 

入場して一番最初に目に入ったのは時限爆弾のようなカウントダウンされていく映像。開始すぐにも関わらずこの空間のタイムリミットが刻々と迫っている現実を意識させます。映像を見ていると何やら観客ではない人が観客に紛れてうろうろ。

目線を下に向けるとバルーンの下の床にも人がいたりと演者を思いがけない様々な場所で発見しました。バルーンから出ると紙飛行機を大量に折り机に並べ続ける女性がいたり、回り続ける装置の下を歩く警察官風の衣装の男性がいたりと自分の周り360度に見るべきものがたくさん。ずっと同じことをしているわけではなく、折った紙飛行機を飛ばしたりと思いがけない行動に出ることも。

このように分かりやすくパフォーマンスしている人だけでなく、壁と壁の間を見ると観客の様子を覗いているパフォーマーと目が合うこともあり、ドキッとする瞬間もありました。

 

 

 


パフォーマーに誘われ観客が出てくることも

 

 

 


自分の世界の中で踊り続けるダンサー。

観客たちの中を淡々と歩き続けるパフォーマー。

読み上げ続けられる詩。

ノイズサウンド。 

辺り一面を染め上げてどんどんと変わっていく照明、それによってできる影…。

アーティストたちが作り上げていく世界は無機質なようで、実は内に大きなエネルギーや意志があるようにも感じられます。

 

 

 


圧倒的な存在感と世界観

 

 

 


多ジャンルのアーティストが参加

 

 

 

混沌の世界の中で散らばってしまうのかと思わせてから、エンディングは今までそれぞれ別の衣装を着ていた人たちが全員黒の衣装を身にまとい、どこからともなく集まり、まるで儀式のように神秘的でした。

全員で踊り始めてからも、ただ揃った動きを見せるのではなく一人一人の全てのエネルギーを集約し、最後にはそのエネルギーを昇華させたところでカウントダウンは0になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

舞台を観に来ていたはずなのに夢の中にいたかのような余韻を残してくれる舞台でした。

 

どちらの公演も大人しく観るだけといった舞台とは異なり、ただ受け身になりがちな舞台鑑賞を新鮮に楽しむことができました。ANTIBODIES Collectiveの新作を鑑賞したい方は4月に横浜で公演があるのでチェックしてみて下さいね!

 

 

 


テキスト:杉田亜祐美
写真撮影
GRINDER-MAN:熊山准
ANTIBODIES Collective:Yoshihiro Arai

 

 

 

【公演概要】
国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2018
会期:2018年2月10日(土) ~18日(日)
主会場:KAAT神奈川芸術劇場、BankART Studio NYK、横浜赤レンガ倉庫1号館、YCC ヨコハマ創造都市センター、Bayani’s Kitchen、急な坂スタジオ、Amazon Club
公式HP:https://www.tpam.or.jp/2018/

 

 

 

『SEE SAW』
GRINDER-MAN
公演日:2018年2月9日(金) ~11日(日) 全5回公演
会場:シアタートラム
HP:http://grinder-man.com

 

 

 

『ANTIBODIES Collective Performance
YOKOHAMA』
ANTIBODIES Collective
公演日:2018年2月14日(水) 〜15日(木) 全2回公演
会場:YCC ヨコハマ創造都市センター 3F
カンパニーHP:http://antibo.org

 

【ANTIBODIES Collective次回公演】
エントロピーの楽園
公演日:2018年4月28日(土) 〜29日(日) 全3回公演
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
※詳細は公演HPをご確認ください。http://antibo.org/blog/2018/02/03/dis-location-dance-yokohama公演/

 

 

 

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