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イギリスのアートフェアを巡る二人旅(前編) 「フリーズ・ロンドン」をフォトレポート

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2017年11月3日


イギリスのアートフェアを巡る二人旅(前編) 「フリーズ・ロンドン」をフォトレポート


 

イギリスのアートフェアを巡る二人旅前編 「フリーズ・ロンドン」をフォトレポート

 

 

 

 

毎年10月にロンドンのリージェント・パークで開催されている、イギリス最大規模のアートの見本市「フリーズ・ロンドン(Frieze London)2017」が、10月5日~8日まで開催されました。

 

英語がまったくお手上げの筆者は、ロンドンで 文化を中心としたガイドとツアーコーディネーターをしている日本人の吉荒(よしあら)ゆうきさんに解説を依頼。今回、同時期に開催されるアートフェア「ジ アザー アートフェア(The Other Art Fair)」、「モニカ(Moniker)」(後編でご紹介します)にも、足を運んでみました。

 

 

  • 美術館で見た作品と出会うアートフェア、「フリーズ・ロンドン」

 

 

 

地下鉄で移動して最寄駅の「リージェンツ・パーク」駅へ。ここから歩いて数分で、会場となる巨大な白い特設テントが設置された、リージェント・パークが見えてきます。

 

 

フリーズ・ロンドン2017では約170のギャラリーが出展し、世界的なトップアーティストを含む1000人以上の作家の作品が展示・販売されました。コレクターや美術関係者も多く訪れることでも知られ、現代アートファンも著名作家の作品をたっぷりと堪能していきます。

 

 

筆者:「このテントはフリーズのために毎回、建てられるんですか?」

 

ゆうきさん:「そうそう。テントの巨大なサイズにもびっくりだけど、施設内がおしゃれなのにも驚かされますね」

 

ブース巡りの合間に寄りたいカフェや休憩用ラウンジ、お手洗いに至るまで、フリーズ・ロンドンはオシャレであります。アート関係者であろう訪れている人たちのファッションも!

 

これは入る前から期待が膨らみます。バックの中身の検査を受けて、いざ入場です。

 

 

 

 

ゆうきさん:「なにしろ中は広いので、1日がかりのつもりで来ないと回りきれません。計画的に動きましょう」

 

まず向かったのは、「フリーズ アーティスト アワード(Frieze Artist Award)」のブース。公募された作品の中で優秀な作家に贈られる賞で、賞金は1万ポンド(約145万円)です。今年受賞したのは、アンゴラの首都ルアンダで活動する作家Kiluanji Kia Hendaさん。アンゴラ独立戦争がテーマのインスタレーションで、魔術的な要素も含む内容になっていました。

 

 

 

ゆうきさん:「フリーズにはツアーガイドもあります。ここではみんなで輪になって地べたに座って聞いていて、若い人も参加しているのがいいですよね。戦争がテーマの展示だけど、中学生くらいの子も混じって聞いていて」

 

筆者:「フリーズに限りませんが、小さい子どもを連れて、ギャラリーや美術館に遠慮なく来られるロンドンの習慣も新鮮です。日本では子どもを連れて美術展を見に行くには気を使うし、人の目を気にしてそもそも連れて行かないかもしれません。歴史や政治もそうですが、アートから学べることはとても多いのに…」

 

会場では、幼いお子さん連れの家族も多く見られ、水を使ったインスタレーションや動物の彫刻など、小さい子は小さい子なりの興味の示し方をしていたのが印象的でした。

 

 

  • ロンドンの著名なギャラリーのブースへ

 

 

「ブースの数が多いので、有名どころから攻めましょう」という、ゆうきさんの提案で、まずは3つのギャラリーブースへ狙いを定めることに。美術館に展示されるような大物作家の作品に出会うことができました。

 

 

「リッソン(Lisson)」

 

リッソンはロンドン中心部のエッジウェア・ロードにあるギャラリーです。取り扱いアーティストに、アニッシュ・カプーア、艾 未未(アイ・ウェイウェイ)、リチャード・ディーコンなどがありました。

 

 

手前はアイ・ウェイウェイの作品

 

 

「ホワイトキューブ(White Cube)」

 

ホワイトキューブは、ロンドンの中心部セントジェームス地区と南部バーモンジーにある ギャラリーです。取り扱い作家は、アントニー・ゴームリー、ダミアン・ハースト、トレイシー・エミンなど。

 

 

女の子が見ているのは、ダミアン・ハーストの作品

 

右方にあるのは、アントニー・ゴームリーの作品

 

 

「ハウザー アンド ワース(Hauser & Wirth)」

 

今年のフリーズでも一味違うキュレーションだったのが、「ハウザー アンド ワース」。ロンドンの高級住宅地であるメイフェア地区にあるギャラリーです。

 

今回、ケンブリッジ大学の歴史学者である、メアリー・ビアード(Mary Beard)氏とのコラボレーションにより、博物館の内装をブースに反映したような展示になっています。古銭などの骨董品の展示のほかにも、照明やFIRE EXIT(非常口)、オーディオガイドまで再現されています。ちなみに、これらの骨董はネットオークション「イーベイ(eBay)」で購入したものなのだとか。

 

ゆうきさん:「ポンピドゥ・センターで行われた『大地の魔術師展』(1989年)以来、文化財とコンテンポラリーアートを相対的に見せる展示は、今までも何度かありました。ただ、アートフェアのブースで見せるのは珍しいですね。骨董品や考古学的な資料に混じって、著名な近現代アーティストの作品も並んでいますよ」

 

ゆうきさんが指差した先にあるのは、ジャコメッティのブロンズ作品。探すと、ルイーズ・ブルジョアやマーティン・クリードなどの作品も。

 

 

 

 

ブース内に、売店も再現

 

 

 

他のブースでも、著名なアーティストの作品が見つけることができました。

 

トーマス・ルフの作品を贅沢に展示したブース。昨年、東京国立近代美術館の企画展でもあったシリーズも

 

チームラボの映像作品

 

イギリス人のアートユニット、ギルバート&ジョージの作品

 

筆者:「すぐ名前が分かる作品は特に、自分のような一般庶民に手が届く値段ではないと知っていますが、アートフェアの会場では美術館で見るより距離が近く感じられるのが不思議です」

 

ウンウン、と頷くゆうきさんも気になる作品と出会ってしまいます。

 

「あ、これジャスパー・ジョーンズ展にあった作品!」と、ゆうきさんが反応したのは見覚えのある作品。それも昨日見たばかりのものでした。

 

アメリカの画家ジャスパー・ジョーンズの《THE SEASON’S》のリトグラフ

 

前日ゆうきさんの案内で、私たちはロンドン・ピカデリーにある美術館「ロイヤル アカデミー オブ アーツ(Royal Academy of Arts)」に行っていました。そこでは、ジャスパー・ジョーンズとマティスの企画展が開催されていて、ジャスパーの作品も初期から近年のものまで鑑賞していたのです。その中でも、ゆうきさんがお気に入りの作品として挙げていたのが、この作品でした。なんという偶然…。

 

「買えるような値段じゃないのは分かっているけれど…」
「参考に値段を聞いて見ようかなあ。でもやっぱり、どうしよう…」

 

そう迷っている様子に「アートラバーだったら、やっぱりそうなりますよね」と、筆者も深く共感したのでした。

 

 

さてフリーズには、トークイベントやパフォーマンスなど多数の企画があり、カフェなどの飲食店も併設されていて楽しみは尽きません。ただ、ゆうきさんとの会話でたびたびあがるのが、「アートを見るにもキャパシティーがある」という事。

 

筆者:「せっかくこれだけのブースが出ているのに、後半は全く頭に入らなくなってきて、多くの作品に囲まれていながら残念でなりません」

 

ゆうきさん:「たくさん見られるのは嬉しいことですが、最初から飛ばしすぎると頭の中が飽和状態になってしまうんですよね。会場マップをチェックして、休憩もはさみながら見たいものから見るといいと思います」

 

会場内のカフェスペース

 

 

イギリスだけでなくパリ、メキシコ、ニューヨーク、アフリカと、世界各国から有数のギャラリーが出展している、フリーズ・ロンドン。現代アートの市場の流行や今、力のあるギャラリーが一目で分かるため、海外旅行で現代アートスポットを探す際に出展ブースを参考にしてみるのもお薦めだとか。

 

美術館がコレクションするレベルの作品も並ぶ見本市とあって、現代アートファンには堪らないイベントかもしれません。美術館やギャラリーの鑑賞とはまた違った、お祭りらしい活気もありました。後編に続く…。

 

 

 

文・写真:石水典子

ガイド:ArtLogue代表 吉荒ゆうきさん

(公式サイト http://www.artlogue.net

 

 

【概要】

「Frieze London 2017」

会期:2017年10月5日〜8日

会場:Regent’s Park

住所:1 Montclare Street London E2 7EU, UK

公式ホームページ:https://frieze.com

 

 

 

 

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Writer

石水 典子

石水 典子 - Noriko Ishimizu -

ライターです。

元々は作家志望でしたが、藝大受験で4浪し断念。予備校生時代に周囲にいた、アーティストの卵たちの言葉に影響を受けた10代でした。

今は、取材することで言語化されていない言葉を引き出し文章化するインタビュアーとして、アートの現場に関わりたいと思っています。

そして今、興味があることは場の活性化です。

 

好きなアーティストは、ヨーゼフ・ボイス、アンゼルム・キーファー、ダムタイプ、ナムジュンパイクなど。日本根付研究会の会員で、江戸時代から続く細密彫刻、根付(ねつけ)の普及に努めています。






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