feature

半立体絵画×ペンギン人間?! コラボが魅せる不思議な世界「團上祐志×ペンギン・カフェ 海と人の夢幻」

NEWS

2017年7月29日

半立体絵画×ペンギン人間?! コラボが魅せる不思議な世界「團上祐志×ペンギン・カフェ 海と人の夢幻」


半立体絵画×ペンギン人間?! コラボが魅せる不思議な世界「團上祐志×ペンギン・カフェ 海と人の夢幻」

 

1980年代に世界的に大流行したノンジャンルミュージックの楽団、ペンギン・カフェ・オーケストラ(PCO、現ペンギン・カフェ)。
キャンバスを時に解体し、写実、抽象、半立体という形で油彩画を発表している現役美大生、團上祐志さん。
音楽と絵画、ジャンルも時代も異なる2つの芸術が交差する時、一体どのように私たちの前に現れるのでしょうか?草月会館で開催された異色のコラボ展をレポートします!

 

◆ペンギン・カフェ・オーケストラのアートワーク展示

 

ペンギン・カフェ…。思わず反応してしまうキュートな響きですが、一体どんな楽団なんでしょう?新しくリリースされるアルバムを見てみると、不思議でちょっと不気味なペンギンの姿が描かれています。

 

 

ペンギン・カフェの新作アルバム『The Imperfect Sea』

 


振り向けば、マグロのカマのようなペンギンの頭が…

 

今回、来日するペンギン・カフェの前身であるPCOは、イギリスの音楽家サイモン・ジェフスによって結成され、1980年代に一世を風靡した音楽集団。アンビエント、ミニマル、テクノ、ニューウェーブなどの音楽が注目された時代に、あらゆるジャンルがミックスされた新しい音楽として人気を博しました。

サイモン・ジェフスの世界観は、日本での滞在が大きく影響を与えたと言われています。PCOの国境に縛られない音楽は日本でも強く支持され、1982年には来日公演が実現しました。2017年7月20日には3年ぶりとなる3rdアルバム『The Imperfect Sea~デラックス・エディション(+4)』がリリースされ、10月7日の東京公演にはやくしまるえつこ/永井聖一/山口元輝、10月9日のまつもと公演には大貫妙子のゲスト出演が決定しています。

 

 

現在は、サイモンの息子アーサー・ジェフスが中心となって、PCOの世界観を受け継ぎながらもメンバーを一新したペンギン・カフェとして活動中。

 

 


PCOのアートワーク。不気味なペンギン人間の姿が印象的

 

 

ペンギン人間のTシャツを着ているお客さんもいました。欲しいです…!

 

 

ペンギン・カフェは音楽だけでなく、ユニークなイラストのアートワークも印象的。一度見たら夢に出てきそうなペンギン人間は、実際にサイモン・ジェフスが夢で見た半人半ペンギンの楽団が基になっているんだとか。会場にはPCO時代のレコードジャケットやポスターが並べられていました。

 

 

ペンギンの頭をかぶってみました(笑)これであなたもペンギン人間!

 

 

◆團上祐志作品展「海と人の夢幻」

 

ミニ・ライブが行われるホール全体を会場として、團上さんのアート作品が展示されています。『The Imperfect Sea(不完全な海)』というアルバムのタイトルにシンパシーを感じたという團上さんは、「海と人」をテーマに展示を行いました。

 

 

《弔いの海》2017、キャンバス、木材、釘、油絵の具 サイズ可変 ©sara yasunaga

 

 


《祈る人》2017、キャンバス、木材、釘、油絵の具 サイズ可変 ©sara yasunaga

 

対になった《弔いの海》と《祈る人》は、巨大なキャンバスを畳んだり広げたりすることで、空間に合わせてサイズを変えられる作品。1点だけでは完結しない、まさに開かれた作品です。

 

團上さん自身のスタイルを保った上で、ペンギン・カフェと通じるものを考えた時、新作アルバムのタイトルにも使われている「imperfect(不完全な)」というワードが響いたと團上さんは言います。
「僕の作品は時に絵画を解体する非完成的なものなので、imperfectという言葉を聞いて、やっていこうとするものが近しいと思いました。「私たちは不完全な海を歩んでいる…」というのが、自分の中でしっくりきたんです。」

 

 

    
作品のキャンバスに開けられた穴や切れ目 ©sara yasunaga

 

 

油彩作品を中心に発表している團上さん。PCOとはジャンルも年代も異なりますが、今回の企画を持ちかけられた時、どう感じたのでしょうか。
「僕はファインアートの中でファインアートを作っているつもりですが、美術を存続させるそれをホワイト・キューブでやらなければならないとは考えていません。今回絵画が半立体になっていったように、美術の枠組み自体も拡張してゆく、こういったコラボも進んでやっていくべきだという気持ちが強いんです。だから今回呼んでいただいて、本当に嬉しかったですし光栄です。」

 

ペンギン・カフェの音楽も、自由に領域を横断しています。お話を伺う中で、團上さんの作品とペンギン・カフェの音楽に通じる部分が見えてきました。

 

 

今回の展示について語ってくれた團上祐志さん

 

 

音楽とのコラボは、團上さんにとって初めての試みだそうです。今回の展示を準備するにあたり、改めてペンギン・カフェの音楽を聴きはしたものの、コラボだからといって相手に合わせるのではなく、「僕は僕で思いきりやりました。」とのこと。
「コラボレーションというのは、1を作るために0.5と0.5を足すようなものではありません。お互いを薄め合うのではなく、角が立っている同士をぶつけていかなければならない。そのために必要な集中力を持っていたいと思っています。」
團上さん自身、絵画とパフォーマンスという異なる形式の表現を行っているからこその言葉でしょう。一見、反発し合うような関係性からこそ、思いもよらない新しい輝きが生まれるのかもしれません。

 

 

DM掲載作品《航路を導き給え》2017、キャンバス、木材、釘、油絵の具 変形F20  (ポスターデザイン:riku hoshika)

 

 

「新しいものを無理に生み出すのではなく、むしろ通りすぎてしまった中でないがしろにされたものは無いか。時代を観察することを大切にしたい。」との考えから、歴史の再解釈に興味があるという團上さん。歴史と誠実に向き合いながら、新しいものを作っていこうという姿勢は、とても刺激的でした。今後の活動が楽しみです!

 

 

◆ペンギン・カフェ トーク&ミニ・ライブの様子

 

 

今年10月のペンギン・カフェ来日公演に先立ち、リーダーであるアーサー・ジェフスと、ヴァイオリンのダレン・ベリーが来日。7月9日、アルバムリリース記念にペンギン・カフェのトーク&ミニ・ライブが開催されました。

 

 

椅子がぎっしり並べられた会場が満席!天井が鏡張りなので、ステージに飾られた團上さんの作品がさらに拡張していきます

 

 

キーボード、ヴァイオリン、クワトロ…。さまざまな楽器を自在に操り、不思議な世界へと誘う音楽を披露

 

 

草月アートプロジェクトディレクター、勅使河原季里さんが参加する場面も

 

 

コンサート終了後に。向かって右から、アーサー・ジェフス氏、團上祐志さん、ダレン・ベリー氏、筆者。とても気さくな方々でした!

 

 

◆日本前衛芸術の聖地、草月アートセンター

 

 

会場となった草月会館は、日本の現代芸術を語る上で欠かせないアートスポット。丹下健三設計の館内に、イサム・ノグチの傑作石庭《天国》が広がる贅沢な空間です。

 

さらに、前衛芸術の発展に大きく貢献した「草月アートセンター」発足の地でもあります。1958年に設立された草月アートセンターは、安部公房原作『砂の女』(1964年)で知られる映画監督・勅使河原宏によるディレクションの下、ジャンルにとらわれない先鋭的な芸術の創造、発表の場となりました。オノ・ヨーコやジョン・ケージ、ロバート・ラウシェンバーグら、名だたるアーティストたちが実験的なイベントを行った場所なのです。

 

歴史ある場所で今回開催されたのは、半立体絵画とアルバムアートワークという異色のコラボ展。なぜこのような企画が実現したのか、勅使河原宏氏の娘であり、草月アートプロジェクトのディレクターを務める勅使河原季里さんにお話を伺いました。

 

 

愛犬を抱きながらお話をしてくださった勅使河原季里さん

 

もともとPCOの大ファンで、ライブに何度も足を運んだという勅使河原さん。ペンギン・カフェの2人が来日することになり、主催のプランクトンから企画の提案を受けたので、絶対に何かやりたいと思ったそうです。「彼らはすごくアーティスティックで、アートが好きな人たち。だからアートを一緒にインスタレーションできたらいいねという話になったんです。」アーサー氏は父親にサイモン・ジェフス、母親に彫刻家エミリー・ヤングという芸術一家に育った人物。そんな彼が率いる楽団のコラボ相手に選ばれたのは、1995年生まれの現役美大生、團上祐志さんという若き日本人画家でした。

 

「父(勅使河原宏氏)が草月アートセンターをやっていた時、オノ・ヨーコさんは20代だったし、ジャスパー・ジョーンズやマース・カニングハムなど、若い人たちがここで色々なことを起こしたんです。私も力強い才能を持った若いアーティストたちを紹介していきたい。」と語る勅使河原さん。お父様の意思を継ぎ、若手芸術家を探していた時、友人に紹介されたのが團上さんだったそうです。「面白い作品だったので、何でも好きなことをやっていいよと言って、今回お願いしました。」

 

もともと草月アートセンターでは、絵画やダンスといったジャンルを飛び越えさまざまな人が一緒になって自由に活動していました。今後もその精神を受け、著名な芸術家を呼ぶだけに留まらず、若い人たちとのコラボレーションを積極的に企画していきたいとのこと。私たちもこの場所で、かつての「ジョン・ケージ・ショック」のような歴史的な瞬間に立ち会えるかもしれないと思うと、ワクワクが止まりません!

 

文:稲葉 詩音
写真:丸山 順一郎

 

 

【アーティストプロフィール】

 

團上祐志(だんがみ ゆうし) 写真 sara yasunaga
1995年生まれ、愛媛県松山市出身、武蔵野美術大学油絵科油絵専攻
再現描写的な肖像作品から、抽象的な油彩造形、身体表現と領域横断的な制作を行う。ロサンゼルス、
ニューヨーク、デンバーのギャラリーでの展示と活動の幅を広げている。

 

 

 

ペンギン・カフェ
1980年代に一世を風靡したPCOのリーダーであるサイモン・ジェフスの息子、アーサー・ジェフスが中心となり結成。2011年に新生ペンギン・カフェとしての初のアルバム『ア・マター・オブ・ライフ…』を発表し、本格的に始動した。2017年、3作目となるアルバム『The Imperfect Sea~デラックス・エディション(+4)』をリリース、10月には3年ぶりの来日ツアーを行う。

 

 

ペンギン・カフェ来日公演2017
10/5(木)東京・渋谷クラブクアトロ
10/7(土)東京・すみだトリフォニーホール 
★スペシャル・ゲスト:やくしまるえつこ、永井聖一、山口元輝
10/9(月・祝)まつもと市民芸術館主ホール
★スペシャル・大貫妙子
10/10(火)大阪・梅田クラブクアトロ 
総合info:プランクトン03-3498-2881 http://www.plankton.co.jp/penguin/index.html

 

 

 

ペンギン・カフェ
『The Imperfect Sea~デラックス・エディション(+4)』
VITO-127/2,500円(税別)

 

 

 

2015年リリースのEP『Penguin Cafe Umbrella EP 1』より、ペンギン・カフェによるコーネリアスのカバー「Birdwatching in Silent Forest (Penguin Cafe version of Cornelius track)」

 

 

【概要】
ペンギン・カフェ 新作アルバム
“The Imperfect Sea” リリース記念イベント
『海と人の夢幻』
会期:7/3(月) ~ 7/12(水) 9:30~19:00
会場:赤坂草月会館 2F
住所:東京都港区赤坂7-2-21 
入場料:無料



Writer

Sion

Sion - Sion -

イタリア留学を経て、東京大学で表象文化論修士号取得。
現在はコンテンポラリーアートギャラリー勤務。

好きなものはアートと言葉。
日常世界がアートに浸されるのが夢。