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~キュビズムへの飽くなき探求~野村康生個展「Dimensionism」

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2017年5月22日

~キュビズムへの飽くなき探求~野村康生個展「Dimensionism」


 

~キュビズムへの飽くなき探求~野村康生個展「Dimensionism」

 

 

 

野村康生の作品を鑑賞するには、キュビズムの理解が必要である。
キュビズムとは?立体派あるいは立体主義とも呼ばれるキュビズムであるが、ルネサンス時代からの1つの視点から描くという方法を否定し、様様な角度からの視点を平面に収めるという、近代美術を代表する革新的な芸術概念である。パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックがこの概念をスタートさせ、牽引した。
(浮世絵もある種のキュビズムなのではないだろうか…?)

 

 

キュビズムの発展の背景には、第一次世界大戦があったように思う。
奇しくも、そのような暗い背景がアインシュタインやピカソといった天才を生み出したのだから皮肉なものである。
科学が動けば哲学が動き、芸術が動く。
現代を当時の状況に似通っていると指摘する人もいる。

 

 

我々の世界は多次元世界である。11次元あると言われる。
宇宙的とも言える意識や思想を2次元という概念に当てはめるのは滑稽である。
キュビズムを探求する野村が「高次元」に行き着くのはごく自然な流れであったと言えよう。

 

 

数学的な観点からの芸術は、アート初心者には敷居が高く感じるかもしれない。
しかし、野村の作品を前にして人々は単純に「美しい」と感じるであろう。
それは黄金比の成せる技であり、正多面体が見せる正しさであり…。
野村のいう芸術の「根拠」があるからなのだ。
「構造」の向こう側へ―――。
今回、野村は等高線を用いて「座標系の運動」「回転」「レイヤー」という要素を加えた。
21世紀の現代の手法を持ってキュビズムのアップデートに向き合う、果敢な芸術家の姿がそこには在った。

 

 

取材・文:鈴木 佳恵
写真:新井 まる

 

【情報】 野村康生個展「Dimensionism」

会期:2017年4月21日(金) – 6月18日(日)
時間:12:00-20:00 ※月曜・毎月最終日曜閉廊
会場:hpgrp GALLERY TOKYO
住所:東京都港区南青山5-7-17 小原流会館 B1F



Writer

鈴木 佳恵

鈴木 佳恵 - Yoshie Suzuki -

フリーランスの編集者。
広告代理店に勤務後、フリーランスに。
得意分野は映画と純文学。
タルコフスキーとベルイマンを敬愛し
谷崎潤一郎と駆け落ちすることが夢。

 

暇があれば名画座をハシゴしています。