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“視覚”で楽しめる香りの展覧会が開催?! 資生堂の香水瓶展「Les Parfums Japonais(レ・パルファム・ジャポネ)―香りの意匠、100年の歩み―」

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2016年11月20日

“視覚”で楽しめる香りの展覧会が開催?! 資生堂の香水瓶展「Les Parfums Japonais


“視覚”で楽しめる香りの展覧会が開催?!
資生堂の香水瓶展「Les Parfums Japonais(レ・パルファム・ジャポネ)―香りの意匠、100年の歩み―」

 

 

現在、東京・銀座にある資生堂ギャラリーでは、資生堂の香水瓶展「Les Parfums Japonais(レ・パルファム・ジャポネ)―香りの意匠、100年の歩み―」を開催しています。

資生堂といえば…皆さんもご存知の通り、化粧品の製造・販売を通じて、国内シェア1位を誇り、確固たる地位を築いているコスメブランドです。

この展覧会では、化粧品事業の経営に乗り出した初代社長である福原信三さんが、芸術とビジネスのコンビネーションを念頭におきながら、自らが取り組んできた化粧品づくりの姿勢に触れることができます。

嗅覚をくすぐられる”香り”だけでなく、視覚として楽しめる香水瓶には、どのような想いが込められていたのでしょうか?その真相を探るため、早速会場をレポートします!

 

資生堂パーラービルにある地下へと続く階段を降りていくと、優しいムスクの香りがギャラリー展示室へと誘います。

階段の踊り場から臨むことができる幻想的な空間に早くも胸を躍らせている私がいました。

 

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本展覧会は5つのカテゴリーに分けて展示がされています。

 

1.パリの芸術文化への憧れ

1913年、アメリカの留学を終えた福原信三さんは、パリを中心としてヨーロッパに立ち寄ります。

当時、工業デザインの世界を席巻していたアール・ヌーヴォーは全盛期を過ぎていたのにも関わらず、この写真のように美しい姿を残して人々が送る生活の中に日用品として溶け込んでいました。

今尚存在している奇跡…約100年前の優美な装飾。このような香水瓶をパリのおしゃれな街角で見つけたら心が高揚してしまいますよね!

福原さんにとってパリへの訪問は芸術文化に触れられる恰好の機会となり、帰国後に彼が手がける化粧品づくりには欠かせない必要な創造の根源となりました。

 

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こちらではプロジェクションを用いた展示方法を行なっており、時折蝶々が羽ばたいたりと…鑑賞者を楽しませる工夫もされていますよ。

 

2.香水制作のはじまり

帰国した福原さんは資生堂の経営に携わるなかで、製造・販売などの化粧品事業に力を入れ、特に香水の制作へとのめり込んでいきました。

銀座に開業した翌年の1917年には資生堂初の香水である「花椿」が誕生します!

こちらのセクションで紹介されている最初期に生み出された香水瓶をよく見てください…瓶自体を密閉する丸い柱、レーベルのデザインなど、パリの香水瓶と似ていませんか?!

それほどまでにパリで見た香水瓶の美しさに憧れを抱き、細部にまでこだわりを持って本格的な品質を目指しているのです。

 

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テーブルによって日本製とパリ製に分かれているので、行ったり来たりしながらじっくり見比べてみてください。きっと、香水瓶制作に情熱を傾けてきた福原さんの軌跡がわかると思います。

 

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室内の角に置いてある回転する展示机に置かれた二つの香水…シルエットを比べてください。試作から数年で完成した「花椿」がパリの香水瓶と全く遜色がありません!

 

3.「製品の芸術化」とオリジナリティー

香水制作を始めた頃の福原さんは日本の化粧品製造が直面している状況を西欧の模倣であると捉えていたそうです。

このような時代においても自らの芸術的な感性とこだわりを持ちながら香水制作に励んでいる姿勢に感服するとともに、私たちに日本の伝統とは?日本の文化とは?…そして、オリジナリティとは?その定義を問われているような気がしました。

 

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こちらに展示されている1918年から発売された「梅」「菊」「藤」は、レーベルに日本の家紋風にデザインされた金の焼き付けが施されています。

中でも、「Woo me」は「梅」と「私を愛して」の意味をかけた言葉で、ネーミングにユーモアとセンスを感じました。

 

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また、こちらには”銀座”ならではのものまで…象徴的で抽象的!素敵ですね!

 

4.日本の香水ー戦後から現在へ

欧米における東洋趣味の流行、東京オリンピックの開催に併せ、1964年に日本調の香水「禅」を海外向けに発売しました。

瓶の表面には日本の漆工芸を代表する高台寺蒔絵に着想を得たデザインが施されており、日本の伝統工芸というと東洋文化と香水という西洋文化が見事にマッチングしています。

また、「禅」を挟んだ両側には「琴」と「舞」という書が瓶にあしらわれた素敵な香水瓶が展示されており、国際的に活躍した書家である篠田桃紅(しのだとうこう)さんと町春草(まちしゅんそう)さんによるもの。

 

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これが福原さんが目指したオリジナリティーの結晶…見事に大ヒットをした所以がわかる気がします。

 

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また、こちらには一般発売されていない株主優待品である「水の香り」が展示されていました。「水の香り」???…そのネーミングに惹かれてしまいます…嗚呼、その香りを少しでいいから嗅いでみたい!!!

 

5.ウィットと恋のかけひき

こちらのセクションでは、遊び心を感じされるものや、恋の駆け引きを思わせる、ロマンティックな香水のネーミングに着目しています。

インタラクティブ・アート分野における作品制作を手がけている「plaplax(プラプラックス)」とのコラボレーションにより実現した展示空間では、

香水のネーミングをフランス語で囁く男女の声と室内の壁や地面を這う流動的な言葉の戯れに、官能的に想像力が掻き立てられ、新しい香水瓶の世界を体験できます。

 

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香水瓶という小さな世界に、宇宙が広がっているような、スケールを感じたという「plaplax(プラプラックス)」さん。

その魅力を少しでも伝えられるように展示を構成したそうです。

 

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こちらを左から順番に『軽はずみ』、途中『再開の時』や『願えば叶う』などを経て…『さよならは言わない』がラストを飾ります。

辿ってみると男女の恋愛模様が浮かび上がってきます…個人的に『さよならは言わない』をつけている女性に会ってみたいと思いました。

また、読み上げられる声色にも種類があるのでこちらは展覧会に行ってからのお楽しみ!

 

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こちらの1917年に発売した『ニュームンヘイ』は、枯れ草の丘の上で男女が月を見ながら愛を語らっている意味が込められているそうで…「月が綺麗ですね。」という文句でお馴染みの夏目漱石を思い出しました。

 

駆け足で紹介してしまいましたが…
“視覚”で楽しめる香りの展覧会にご興味を持っていただけましたか?

初代社長である福原信三さんによって培われてきた資生堂100年もの歴史を紐解いてきましたが、“ただ小さくて可愛いい工芸品である香水瓶”というイメージを払拭させられた内容の背景には、香水瓶に魂を吹き込む”一人のアーティストとして存在している福原信三さん”の姿を感じました。

しかし、福原さんの“香り”はこの世には存在しません。そして、記憶を手繰り寄せることさえも不可能です。ですが、香水瓶というアートから福原信三さんという人物の気配を読み取ることは可能です。

 

そして、今回取材した資生堂ギャラリーだけでなく、SHISEIDO THE GINZAや資生堂銀座ビルでも、香水瓶の関連展示が開催されておりますので、併せてご覧になってみてはいかがでしょうか?

 

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1Fでは「plaplax(プラプラックス)」による「水の波紋」をテーマにした演出をしているウィンドウ。

2Fでは資生堂銀座ビルでは資生堂の戦後から現代までの香水瓶(約50点)を「悠・優・誘・遊・幽」の5つのキーワードでグルービングした展示。

 

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視覚が満たされたら嗅覚も…

一輪の椿のたおやかで凛とした美しさをイメージした資生堂の最新作「Evey Bloom」を身に纏いながら、銀座の街に繰り出してみたはいかがだろうか?

 

文:新麻記子   写真:新麻記子、丸山順一郎、資生堂

 

【情報】

「Les Parfums Japonais ―香りの意匠、100年の歩み―」 開催概要

公式HP:https://www.shiseidogroup.jp/gallery/index.html

主催:株式会社 資生堂

会期: 2016年11月2日(水)~12月25日(日)

会場: 資生堂ギャラリー

東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階

Tel:03-3572-3901 Fax:03-3572-3951

平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00

毎週月曜休(月曜日が祝日にあたる場合も休館)

入場無料