feature

アールデコの美術館で、過去の記憶に耳を澄ます「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち」

NEWS

2016年10月1日


アールデコの美術館で、過去の記憶に耳を澄ます「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊


アールデコの美術館で、過去の記憶に耳を澄ます
「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち」

 

9月22日から東京都庭園美術館では、「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち」が開催されています。

主人公は、美術館という空間と「亡霊たち」です。ホラー映画やお化け屋敷よりも身近に「亡霊たち」の存在を味わえます。聴覚・視覚・触覚をフル活用する展示ですので、ぜひ会場で体験してみてください。

本館1階にある作品《さざめく亡霊たち》(2016)では、男女のささやくような声がアールデコ装飾の美しい室内に響きます。題名通り、展示室内に足を踏み入れた瞬間に見えない人の声が聞こえてきてゾクッとしました。声にじっと耳をすませたり、声の音源を探したりして「亡霊たち」の声を味わいました。声は日本語なのですが、昔風の話し方でエキゾチックな雰囲気があります。撮影セットの中に自分が入りこんで、昭和の白黒映画を俳優たちの声だけで鑑賞しているようです。

 

img_4527

 

本館2階に《影の劇場》(1984)があります。
この作品は、のぞき窓から鑑賞します。のぞいてみると…

 

img_7345

 

また驚きました! 暗闇の中から涼しい風が顔に吹きかかってくるので、視覚的にも触覚的にもヒヤリとします。しかしよく見ると可愛らしい形で、家族で作ったハロウィンの飾りのようです。

 

Processed with VSCO with c2 preset

 

こちらは、他ののぞき窓から…

また、同階の暗室では心臓の鼓動に合わせて赤いライトが点滅する《心臓音のアーカイブ》の展示があります。室内に入った瞬間は視覚からも、聴覚からも、緊迫するような印象を受けますが、少しの時間室内に留まり、その環境に次第に慣れてくると、心地よく感じていることに驚きました。

 

img_4485

 

新館ギャラリー1では、《帰郷》(2016)と《眼差し」》(2013)が展示されています。

 

img_4735

 

《帰郷》はヴェール越しに見える金の山で、《眼差し》は瞳がプリントされたヴェールです。この黄金色の山の正体は、災害時などに使うエマージェンシー・ブランケットで覆われた大量の古着です。《眼差し》はヴェール1枚に1人の目がプリントされ、風にゆらゆらと揺れています。なぜか奥へと進みたくなる心地良さがありながら、顔が分からない人々に見つめられる緊張も同時に感じます。

新館ギャラリー2では、《アニミタス》(2015)《ささやきの森》(2016)という二つの作品が映されています。ギャラリー2に入ると干し草の香りが充満しています。決して飼育小屋のような匂いではなくて、自分の部屋でハーブティーを飲みながらくつろいでいる時のような匂いです。

 

img_4725

 

《アニミタス》は、チリのアタカマ砂漠で音を発する数百の日本製風鈴を映しています。この砂漠は高地にあり、世界で最も乾燥した場所の一つで、星の観測が行われています。この風鈴は、ボルタンスキー氏が誕生した時の星の配置を描いています。

 

img_4730

 

反対側のスクリーンでは、豊島(香川県)の山の中腹にあるインスタレーション《ささやきの森》が映っています。《アニミタス》と同じく風鈴が揺れているのですが、この作品は日の当たる森の中にあるので、とても和やかな気持ちになります。

ちなみに、この二つの映像の上映時間は約13時間です。この映像を見ながら、ゆっくりと時間を過ごす1日も良さそうですね。1日中見ていれば、ほぼ半分見られます。

実は、今まで紹介してきた作品には、それぞれ哲学的な意味が含まれています。確かに存在したはずの人々の不在、誰にでも必ず訪れる死、匿名性などを作品を通して見る人に伝え、「人」という存在を問いかけてきます。

しかし、ボルタンスキー氏は、その問いに確かな答えがあるとは思っていないようです。また、作品を見る人それぞれが自分の人生や考えを通して静かに考え、笑えると思っても悲しいと思ってもどちらも正しいそうです。

作品の音、姿、触感、匂いを体験して自分なりに静かに考える展覧会です。

 

「アール・デコの花弁 旧朝香宮邸の室内空間」が同時開催されています。ボルタンスキー氏の作品と一緒に、美術館本館のアールデコ作品をじっくり見て、学ぶことができます。

 

Processed with VSCO with 6 presetボルタンスキー氏、東京都庭園美術館にて。

 

本文・耳塚里沙

写真・新 麻記子 耳塚里沙

 

【展覧会情報】

会期:2016年9月22日(木・祝)– 12月25日(日)

会場:東京都庭園美術館(本館・新館)

ホームページ:http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/ 

休館日:第2・第4水曜日(9/28、10/12・26、11/9・24、12/14)

開館時間:10:00–18:00

*ただし11月25日(金)、26日(土) 、27日(日)は夜間開館のため20:00まで

(いずれも入館は閉館の30分前まで。)

観覧料:一般900(720)円  大学生(専修・各種専門学校含む)720(570)円

中・高校生・65歳以上450(360)円

※上記観覧料で「アール・デコの花弁  旧朝香宮邸の室内空間」展もご覧いただけます。

( )内は前売りおよび20名以上の団体料金。

小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。

身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者一名は無料。

教育活動として教師が引率する都内の小中・高校生および教師は無料(事前申請が必要)。

第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料。

アクセス:JR山手線「目黒駅」東口/東急目黒線「目黒駅」正面口より徒歩7分、都営三田線・東京メトロ南北線「白金台駅」1番出口より徒歩6分

 



Writer

耳塚 里沙

耳塚 里沙 - mimizuka risa -

学生ライター。

大学では日本美術史を専攻中。

明治時代の洋画について勉強している。

美術館に行くことが好き。

将来は学芸員として美術館で働きたいと考えている。

 






トップへ