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人から人へ、伝統を継ぐ匠を捉えた写真展『TRANSMISSIONS people-to-people』

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2016年9月18日


人から人へ、伝統を継ぐ匠を捉えた写真展『TRANSMISSIONS people-to-people


人から人へ、伝統を継ぐ匠を捉えた写真展『TRANSMISSIONS people-to-people』

 

9月30日まで、CHANEL銀座の4階シャネル・ネクサス・ホールにて、イタリア出身の写真家、ティツィアーナとジャンニのバルディッツォーネ夫妻による写真展、『TRANSMISSIONS people-to-people』が開催されています。

夫妻は、マダガスカルで出会ってから30年間、「人間、日常空間、文化の多様性」をテーマに共同制作を続けています。本展覧会は、2010年より取り組んでいる「知識の伝承」をテーマにした長期プロジェクトの一環です。

 

p9018695-1バルディッツォーネ夫妻、ティツィアーナ氏(左)とジャンニ氏(右)

 

どのようにして様々な伝統技術を子や弟子に伝えるか、またそこにはどのような意味があるのかという疑問、そして師弟間の交流や強い姿勢への感動が、二人の活動する動機だといいます。

イタリア、フランス、日本ほかアジア諸国やアフリカの国々を旅する中で、40種類を超える分野、100人以上の師弟に出会った夫妻は、彼らの関係性、細かな表情、動きを写真に捉え、本展覧会を迎えました。

 

では、さっそく作品を鑑賞しましょう。
展示は3段階に組み立てられています。

 

1Encounter (出会い)

2Impregnation (手ほどき)

3Learning(学び)

 

1Encounter (出会い)

p9018749エントランス・「Indigo palette」アブバカル フォファナ、書道家、藍染職人、マリ 2011年

 

この章では、師と弟子の出会いの姿が様々な形でカメラに収められています。師と向き合う時、言葉は必要なく、師匠が正しい姿勢をとり、弟子が真似る、そんな沈黙の瞬間があるとバルディッツォーネ夫妻は語ります。

 

写真、奥手に写っているのは、マリ系フランス人の職人が藍で染めた布を干している光景。元は茶色に染まった布が風に吹かれて酸化し、青色になる過程を撮影した作品。彼らは、グローバリゼーションの世界で生きている伝統に着目しています。この職人は日本で藍染の名工に出会ったことにより、自分の技法を洗練させることが出来たといいます。

 

p9018707「Circulation of knowledge」セシルゴルドンとスリージャヤイン、インド 2012年

 

インドの古武術カラリバヤットの師範の称号を得た最初の西洋人、フランスの女優兼ダンサーを捉えた作品。

 

2Impregnation (手ほどき)

p9018721画面左 「Forged to Nature」修行中の遊牧畜産家 モンゴル 2011年
画面右 「Educated to Nature」ウォダベの父親と息子 ニジェール 1999年

 

こちらの2枚の作品は対照的です。ニジェールにいる遊牧民の父親は幼い息子に蒔の選び方を教えているところ。モンゴルにいる遊牧民の子は同じくらいの年でも一人で遊牧に出かけるように教えられます。父に手ほどきを受ける子、すでに独り立ちをしていると背中で語る子、文化によって手ほどきを受ける年齢も様々です。

また、夫妻は被写体となる人々の生活に自然に馴染むよう心がけて撮影をしていますが、牛は二人の存在に気付き、じっと見つめています。

 

p9018736左「The touch」セーブル焼、七宝の工房、フランス 2013年
右「Listening to incense」二十一代目蜂谷宗苾 日本 2012年

 

こちらの作品は五感に着目した連作の2点です。手で釉薬を触り、不純物を感じ取る職人の手は触覚を、張り詰めて香りに集中する香道家の横顔は嗅覚を、それぞれ表現しています。個人的に白と黒の作品が対照的に並べられていたところに、日本らしさを感じました。

 

3Learning(学び)

p9018745
「Repetitions」エステルゲネコとミッシェルルエ フランス 2012年

 

セーブル焼の工房で、器を釉薬の入った桶に沈める前に、正しい動作を何度も繰り返し練習する二人の陶工の姿。

 

p9018756左「Three Energies」三輪和彦、陶芸家、日本 2012年
右「Water Energy」堀木エリ子、和紙デザイナー、日本、2012年

 

創作の出来のよしあしを決める、ろくろ、土、自身の手。完成した作品は道具、作家の手、胎土の融和の結果だという陶芸家。大きなたわしを使って和紙の表面に水を浴びせる、水のエネルギーを最大化させる技を披露する和紙の匠。学びによって自然の素材を思いのままに扱う姿です。

 

100人の匠たちの名前が刻まれた、オマージュが展覧会の最後を飾ります。

 

p9018761

 

バルディッツォーネ夫妻は語ります。

我々が捉えたかったのは、伝統の技そのものではなく、それを伝える人の姿なのです。」

と。

 

girlsartalkが内覧会の際に、日本の匠は彼らの目にはどう映るかと夫妻に質問したところ…

日本は私たちが撮りきれないほどに、多くの匠や文化が現存していて、人間国宝という制度があり、選ばれた匠は文化の重要な部分を保存し、伝承することを使命として生きている。彼らからは情熱だけでなく、責任感を感じる。ある師匠は自分の動作を繰り返し見せることで弟子に伝え、また別分野の師匠は弟子に真似をさせるのではなく哲学を伝えていた。どちらにもInnovation(革新)とTradition(伝統)が共存している。

と、答えて下さいました。日本には、伝統文化を次世代へ伝え、さらに革新をし続けている匠が多く存在するのだと。

 

最後に、特別に夫妻からgirlsartalkの読者の皆さんにいただいたメッセージをお送りします。

ティツィアーナ氏は、日本の女性に向けて:

自分が喜べる、好きなことや、好きな仕事は犠牲を払っても絶対に追求すべきです。自分の好きなことを仕事にすることは何にも勝るいいことです。

ジャンニ氏は、芸術家を志す人に向けて:

(もし、アートを作り出したいと思うのなら、)急いで作るのではなく、時間をかけて丁寧に作ることが重要です。お金をかけることではなく、人生における満足を得ること。何かを目指すのなら、よい先生を探すことです。いい生徒は、いい伝承ができる。お互いの融合で素晴らしいものが生まれるはずです。

 

脈々と受け継がれる、人の営みとしての「伝承」。「伝える」人々の姿は皆、純粋で美しく、「自分が人生で人に伝えられることとは?伝えたいこととは?」と、自問する機会にもなるかもしれません。

 

文:藤井涼子  写真:藤井涼子・新井まる

 

【情報】

TRANSMISSIONS people-to-people

会期:2016年9月2日(金)~9月30日(金)

   12:00~20:00 (入場無料・無休)

会場:シャネル・ネクサス・ホール

   中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F

ホームページ:http://www.chanel-ginza.com/nexushall/2016/transmissions/

 



Writer

Foujii Ryoco

Foujii Ryoco - Foujii Ryoco  -

学習院大学文学部哲学科(日本美術史専攻)卒業・学芸員資格取得後、アパレル会社にて勤務。
フランス、レンヌ第二大学で博物館学やミュージアムマネージメントを学び、インターンを経験。
パリ滞在中は通訳、翻訳者、コーディネーターとして勤務。
日頃の関心はジャポニスム、日仏の美術を通しての交流。
フランスかぶれ。自称、半分フランセーズ。
アートは心の拠りどころ。アーティストの想いを伝えられるような記事をお届けしていきたいです。
Contact:Facebook・Foujii Ryoco#Instagram・coco.r.f






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