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江戸時代にタイムスリップ!オールスター共演の浮世絵展覧会!

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2016年9月13日


江戸時代にタイムスリップ!オールスター共演の浮世絵展覧会!


江戸時代にタイムスリップ!オールスター共演の浮世絵展覧会!

 

現在、今年で開館50周年を迎える恵比寿の山種美術館にて、「浮世絵 六大絵師の競演 ―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重 ―」のタイトルのもと、名作揃いの浮世絵版画を集めた展覧会が開催されています。

浮世絵と聞いて、みなさんはどんな作品、どんな浮世絵師を思い浮かべますか?

葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿、、、彼らは日本のみならず、今や世界的に有名なアーティストです。先日には、パリでのオークションで喜多川歌麿の作品が、版画の史上最高額で落札されたのも記憶に新しく、近年において浮世絵に対する関心は高まるばかりです!

本展覧会は、山種美術館所蔵の保存状態の良い浮世絵版画、92点に出会うことができるまたとないチャンスです。

今回は、その見どころポイントをいくつかピックアップしてお届けします。

 

見どころ① 北斎のビビットな赤富士

展示会場に入るとまず最初に、北斎の有名な富士が待ち構えています。

こちらは「冨嶽三十六景」のうちの一枚、「凱風快晴」。

大胆な構図や、印象的な色で富士山が見える名所を描いたシリーズは、なんと北斎が70代の時に手がけたものです。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」1830(文政13) 年

 

どうして富士山なのに真っ赤なのでしょうか。皆さんは疑問に思ったことはありませんか?

それは、常軌を逸したこの赤富士は、朝陽が差して赤く染まった時間限定の姿を描いているからなのです。

朝焼けの空の青、もやの白、山の裾に向かってに緑色になっていく、、、色彩のコントラストが大胆で美しい一枚です。

「冨嶽三十六景」を手がけた北斎は、江戸時代後期に日本で普及した、ベルリンで発明された化学合成顔料の”ベロ藍”を使用しています。

植物性の青の顔料、藍とは異なる青で、奥行きのある表現を実現しています。老齢期にして新しい画材を採り入れる、北斎の制作における探求心、新しいものを求める心が名作を産みました。

またクローズアップしてみると、富士山の頂上に向かって赤色が濃くなっていることがわかります。作品を近くで見られる機会なので、摺りの色のグラデーションなど、巧みな技にご注目下さい。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」(部分)

 

見どころ② 春信のたおやかな美人画

お次は、鈴木春信の作品。

春信は、北斎よりも60年ほど前に活躍した、大人気の浮世絵師であり、華奢で可憐な美人や役者を描き、一世を風靡、後世の絵師にも多くの影響を与えました。

また、「錦絵」と呼ばれる、多色刷りの浮世絵版画を広めた立役者でもあります。

「梅の枝折り」は世界に数点しか現存しない春信の代表作です。

 

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鈴木春信 「梅の枝折り」1767-68(明和4-5)年頃

 

振袖を着た娘が、侍女とおぼしき女性の肩に乗り、梅の枝を折ろうとする姿を描いています。女性の小さな手が可愛らしく、二人の姿を写した柔らかな線と、塀の幾何学的な模様との組み合わせ、脱いだ草履は地面に無造作に転がっています。褪色はほぼなく、春信独特の淡い、やわらかな色彩を堪能できる一作です。

江戸時代の女性たちにとっての浮世絵の美人画は、装いのお手本になる現代のファッション雑誌のような媒体だったそうです。今日でも、春信が手がけた美人の上品な着物の色合わせや柄合わせは、コーディネートの参考になりそうですね!

 

さて、今度は人気の歌舞伎役者を描いた、江戸時代のブロマイドである役者絵を見てみましょう。

 

見どころ③ 写楽のインパクト大!リアルな役者絵

本展覧会では、残存枚数の少ない東洲斎写楽の代表作が3点も出品されています。いずれも役者の似顔を描いた大首絵(人物の上半身をクローズアップした形式)。
写楽は、時に役者から不平を言われるほどに徹底した、役所に現れない役者その人その者の顔つきを嘘なく描きました。その表現は、後世、フランスの画家、トゥールーズ・ロートレックにも影響を与えました。眉、鼻、口、三者三様に描きわけられ、皺まで逃さず描いた表情は、生き生きとしていて、今にも動き出しそうです。

 

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東洲斎写楽「三代目坂田半五郎の藤川水右衛門」1794年(寛政6)年

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東洲斎写楽「八代目森田勘弥の駕篭舁鶯の次郎作」1794年(寛政6)年

 

ここでは、技法にも注目しましょう。
人物の背景が、どことなく輝いているように見えませんか?
これは「雲母(きら)摺」といい、鉱物の一種、雲母の粉を使って画面に光沢を出す技法です。写楽の場合、人物を引き立たせるために、さらに特殊な技法を使用しています。
表面が輝いていて、役者たちが浮き上がっているようにも見え、とても迫力がありますね。

 

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東洲斎写楽「八代目森田勘弥の駕篭舁鶯の次郎作」(部分)

 

見どころ④ 広重と一緒に旅気分の名所絵

江戸時代は交通の便がよくなり、出版物の普及により、地方の情報も得やすく)、庶民の旅への憧れが高まりました。そうした時に、北斎や広重の、日本各地の名所を描いたシリーズの浮世絵が大変人気となりました。

今回展示されているのは、広重が2、3年かけて手がけた東海道シリーズの最初の作品、「東海道五拾三次」です。こちらは、一図一図を画帖(冊子の形態)に仕立てて販売されたもので、全図に加えて題字までがそのまま残った貴重な作例で、初期のよい摺の状態がよく見られるそうです。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA歌川広重(初代)「東海道五拾三次 原・朝之富士」1833-36(天保4-7)年

 

こちらは、なんと画面から飛び出す富士山!広重は、穏やかな風景とそこに生づく人々の情緒ある作風が特徴ですが、この一枚では大胆に富士山が画面の枠を突き抜けています。
こちらは東海道中で富士山が最も美しく見える場所として知られていた、原という地を描いた一枚。この遊び心に江戸の人々も楽しい気持ちになったのでしょう。

また、細部に描かれた人々注目してみてください。

 

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歌川広重(初代)「東海道五拾三次 丸子・名物茶屋」1833-36(天保4-7)年

 

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歌川広重(初代)「東海道五拾三次 丸子・名物茶屋」(部分)

 

この作品では、芭蕉の句にも詠まれた、丸子の宿の名物、とろろ汁をすする旅人たちと、幼い子を背に給仕をする女性が見られます。
旅のつかの間のなんとも心あたたまる情景です。

「おいしい浮世絵」と紹介された今作、現代のグルメリポートのようで、浮世絵が情報メディアとしても楽しまれていたことがよくわかります。

他にも、干瓢(かんぴょう)を干す女性たち、突風に傘が飛ばされ慌てる人、激しい客引き戦争に巻き込まれる旅人たちなど、興味深い図ばかりです。
実は55枚ある本シリーズ、現在のその土地と、当時の地を比べてみても面白いですね。

また、あのヴァン・ゴッホも油絵で模写した、大雨に降られる瞬間を捉えた、広重の「名所江戸百景 大橋あたけの夕立」も注目の作品です!

今回の展覧会では、浮世絵の専門家である大久保純一氏(国立歴史民俗博物館)と藤澤紫氏(國學院大學教授)、お二人による、詳しく、わかりやすく、浮世絵への愛が伝わる解説パネルが多く用意されているので、初めて浮世絵を知る、楽しむ方たちにはぴったりです。

 

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ミュージアムショップでは、広重の作中の人物が印刷された、紙の小物類もありました。ちょっとお茶目で、くすっと笑ってしまうデザインです。他にも小粋な絵葉書や、香りの小物など、贈り物にも素敵な品物が揃っているのでお見逃しなく!

また美術館ロビーにあるcafe椿では、展示作品をモチーフにした本展覧会限定の和菓子がいただけます。目にも舌にも美味しく、鑑賞後の余韻に浸りながら至福の時間が味わえますよ!

 

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中央が、本記事掲載の北斎の「凱風快晴」、右下が春信の「梅の枝折り」をモチーフにしています。

オールスター出演のまたとない本展覧会ですが、浮世絵版画の染料は光に弱いので、作品保護のため、会期はわずか1ヶ月…山種美術館で江戸の人たちの美意識、あこがれに触れられてみてください!

 

本文・撮影 藤井涼子

 

【展覧会情報】

浮世絵 六大絵師の競演―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重―

会期: 2016年8月27日(土)~9月29日(木)

会場: 山種美術館 

ホームページ:www.yamatane-museum.jp/

開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

※但し、9月16日(金)に限り、開館時間を午後8時まで延長します(入館は午後7時30分まで)

休館日:月曜日(但し9/19は開館、9/20は休館)

入館料:一般1200円(1000円)・大高生900円(800円)・中学生以下無料

※( )内は20名以上の団体料金および前売料金。

※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。

[お得な割引サービス]

きもの・ゆかた割引:会期中、きもの・ゆかたでご来館のお客様は、団体割引料金となります。

※ 複数の割引の併用はできません。

徒歩でのアクセスJR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分. バスでのアクセス 恵比寿駅前より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分



Writer

Foujii Ryoco

Foujii Ryoco - Foujii Ryoco  -

生まれも育ちも東京。初めて歩いたのはフランスのアヴィニョンの橋。

海外に親戚の多い家系で育つ中で、日本美術に魅了され、 学習院大学文学部哲学科にて、浮世絵、ジャポニスムを研究、学芸員資格を取得。 その後、百貨店にてファッションアドバイザー、マネージャーを経験するも、 芸術の国・フランス留学への道が諦められず渡仏。
レンヌ第2大学大学院にて美術史を専攻、博物館でのインターン、ワークショップの参加、各地方の美術館、ギャラリー訪問、アーティストとの交流を通し、 芸術が日常生活に溶け込んでいる環境に感銘を受ける。

絵画のある空間は、芸術家たちが、私が私自身の心と向き合わせてくれる、大切な場所。 美術館や博物館は、未来のために存在する、なくてはならない場所、温故知新のための場所。

2016年9月よりパリへ。日仏の架け橋になることを目指し、日々精進。 狂乱の時代のパリで成功を収めた画家、藤田嗣治に憧れている。

blog: ryocofoujii.blogspot.jp
instagram: coco.r.f






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