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H E L L O, MY NAME IS PAUL SMITH

NEWS

2016年6月11日


H E L L O, MY NAME IS PAUL SMITH


2013年11月、ロンドンのデザインミュージアムで開幕した展覧会

「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」が、いよいよ日本上陸を果たしました。

日本では京都を皮切りに、東京、名古屋の3都市で開催されます。

今回は京都国立近代美術館での内覧会に参加してきました。

 

No.2

 

ランウェイモデル顔負けのシルエットが現れると、会場は憧憬のため息に包まれました。

語らずとも滲み出てくるアーティスト色溢れるポール・スミス氏。終始気さくでウィットに富んだ冗談を言いながら

も時々見せる鋭い眼に、彼の飽くなき探究心を感じ取ったのは私だけではなかったはずです。

ここからポール氏とデザインミュージアム館長のデヤン・スジック氏によるトークが始まります。

 

ポール氏は、昨今デザインの模倣が多くイノベーションが失われつつあることや、その反動で若手デザイナーたちが

作品にアイディアを満載に詰め込みがちな風潮に、警鐘を鳴らしていました。

“過去を多角的に見つめてインスピレーションを得る” とも語っており、つまり無から有は生み出せないことを意味し

ています。どうやらアーティストたちは互いに影響し合い、時代を肌で感じながら生きることを余儀なくされている

ようです。

 

一方でスジック氏は、この展覧会を催すに至った理由として、「ポールが、彼のファッションの根底には何があるか

をきちんと示すことが出来る人だから。そのようなアーティストはそう多くない。まあ、あとはポール・スミス展と

もなればお金も集まりやすいでしょ?笑」と会場を沸かせました。

箱に収まりきらない彼の感性を体現するにあたり、”情報過多の時代だこそ彼の人生を共有したかった” とコメント。

ポール氏への信頼と尊敬の念が伺えます。

 

No.3(俳優の松田翔太さんをアンバサダーに迎えて)

 

さあ、ここからポール・スミスの世界をご紹介します!

 

今回の展示品は、全てポール氏自らが選んだものです。彼のことを知ってくれた人が、自分と同じように小さなこと

から始めても大きな夢を実現できるんだと思えるようになって欲しい、といった願いが込められています。

 

No.4

No.5

 

10代から集めた絵画や写真。今回は厳選された約500点が展示されています。

約術的価値の有無に関わらず様々な作品をコラージュすることで、新たな価値やデザインが生まれる、というのが

ポール氏の考え方の一つです。

 

こうして並べると、一見何の変哲もない写真でも創造の光を放つから不思議です。

ただ、ここから自分がどう感じたか心に問いかけ、アウトプットをして対外的に精査されないと感性は磨かれない

ものなのかも….

 

No.6

 

1970年、ノッティンガムにポール・スミス1号店をオープンしました。窓のない、たった3メートル四方の広さで、

店というよりは部屋に近いものでした。

それを再現したのが、こちらの展示。

夢をもつ大事さ、その夢を努力して維持することの大切さを伝えたいというポール氏の思いが込められています。

 

No.7

 

“彼女がいなければ、何も実現できなかったでしょう” と話すポール氏。デザインスクール講師であった妻のポーリーン

氏は、ファッションビジネスの鍵となる要素を教え、事業を立ち上げるよう勧めたそうです。

リーンれた1号店には2人の優しい笑顔の写真が飾られています。ポーリーン氏への感謝の気持ちと優しさは、彼の成功

をより強いものにしていったことと思います。

 

No.8

 

ロンドン・コヴェントガーデンにあるオフィスは物で溢れています。世界中を旅して集められたもの全てが彼のインス

ピレーションの源になっています。

 

ポール氏は、布地に写真をプリントする技術を真っ先に取り入れたデザイナの一人でした。

イタリアでバスの車体に写真がプリントしてあるのを見て、自分の商品にも写真が使えたら面白いと考えました。

1980年代の初期のプリントには、自身が撮った写真が使われ、食品サンプルのスパゲッティまでもがシャツのプリント

となりました。

 

No.9

 

ポール氏がよく言う言葉、”アイディアはどこからでも湧いてくる、どんな物からでもインスピレーションは得られ

る”。そのアイディアがどこかへ行ってしまわないように、デジカメで写真を撮ったり、単語や電話番号に至るまで

ノートに書き留めます。

このコーナーではポール氏が撮りためてきた写真を映し、世の中のどういう物を観察してインスピレーションを得て

いるのか、彼の頭の中を表現しています。

 

「人は見ているようで、実は見えていない」

これはポール氏がもう一つよく言う言葉。

自分自身ととことん向き合う姿勢が感じられます。

 

No.10

 

パリにあるとあるホテルのベッドルームが、ポール氏にとっての初めてのショールームとなりました。

最終日の終わりの時間になってやっと、一人の客から初めての注文を受けたのです。

ポール氏のビジネスの幕開けとなりました。

 

No.11

No.12

 

カメラ、オートバイ、スノーボードと様々なコラボレーション作品が並んでいます。

 

No.13

No.14

No.20

 

ロンドン・コヴェントガーデンの本社にあるデザインスタジオの再現。

デザインは、映画、写真、アーティストなど様々なものを参考にしています。

その際特に重要なのが “色”。

PAUL SMITHの代名詞であるストライプは、厚紙に色糸を巻きつけて縞が出来るようにゆっくりと作っていきます。

そうすることで、色合いや服にした時のストライプのバランスが確かめられるのです。

なので、コンピューターでストライプをシミュレーションすることはない、とポール氏自身強く語っていました。

 

No.15

 

ノッティンガムのポール・スミス社にあったものを使い、この展覧会の為に特別に製作した作品です。

こちらはなんと、約7万個のボタンを使っての作品となります。

海外のポール・スミスショップにあるドミノを壁一面に敷き詰めたドミノルームや、コインを敷き詰めたメンズルーム

の革新的なデザインの細部を参考にしました。

 

No.16

No.17

 

そして最後に、PAUL SMITHのアーカイブコレクションがパリコレの映像と共に見えてきました。これまで辿ってき

たポール氏のインスピレーションの集大成というべき作品の数々です。

今シーズンのテーマは「independent mind = 何ものにもとらわれない独立心」。

伝統とモダンの融合を軸とし、英国紳士服の特徴である縦長でタイトな線を残しつつも、歩いた後に残る柔らかなフォ

ルムやvividな差し色が、ポール氏自身序盤で話してくれた「自分を差別化する」ための小さなステップとして、私たち

へヒントを与えてくれているのかもしれません。

 

No.18

 

ファッションは自己表現のツールだと言いますが、ではなぜ人は自己表現をするのか。

ポール氏を見ていると、デザイナーとして自分を知ってほしい!といった一方通行型ではなく、世の中の驚きや楽しさ

を一緒に共感したい、といった一種の繋がりを求めているのではないかと思います。

万物からインスピレーションを受ける方なので、その分自分も世にそれを返す。その繰り返しで、自身のキャパシティ

ーも増え続けるのではないでしょうか。

これだけインスピレーション溢れる展示会のなかで、改めてアウトプットの重要性を感じる機会に恵まれたことに感謝

いたします。

 

N0.19

 

ポール氏にHELLOを言いに、是非会場へ足を運んでみてください。

 

 

文:川口可南子

 

 

【情報】

ポール・スミス展

HELLO MY NAME IS PAUL SMITH

会場:京都国立近代美術館

会期:2016年6月4日(土)〜7月18日(月)

時間:9:30〜17:00 (金曜日は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで

当日券:一般1,500(1,200)円 / 大学生1,200(900)円 / 高校生900(600)円 ※()内は団体料金

 

東京会場

会期:2016年7月27日(水)〜8月23日(火)

会場:上野の森美術館

当日券:一般1,500(1,300)円 / 高校・大学生1,200(1,000)円 / 小学・中学生500(300)円 ※()内は団体料金

前売券:一般1,300円 / 高校・大学生1,000円 / 小学・中学生300円  ※絶賛発売中

 

名古屋会場

会期:2016年9月11日(日)〜10月16日(日)

会場:松坂屋美術館

当日券:一般1,100(900)円 / 高校・大学生900(700)円  ※()内は団体料金

前売券:一般900円 / 高校・大学生700円  ※絶賛発売中



Writer

川口 可南子

川口 可南子 - Kanako Kawaguchi -

5歳より、青春の全てを捧げたバレリーナとしての15年間の時間が私の宝物。
その後NYやLAでブロードウェイやコンテンポラリーのレッスンを通じて、表現の幅を広げてきた。

アメリカ西海岸で生活しモデルとしてショーや撮影に参加。ファッション界のプロ達が、センスを頼りに猛スピードで仕事をする様に圧倒されながら、モデル業、写真やアパレル、ブランディングについて学ぶ。

パリジェンヌになって、かのHelmut Newtonと撮影の日々……
昼間、商社で働きながら来世へ思いを馳せています。