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日本酒を美しく楽しむ。お酒と酒器と料理のマリアージュのポイントとは?

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2018年2月28日


日本酒を美しく楽しむ。お酒と酒器と料理のマリアージュのポイントとは?


 

日本酒を美しく楽しむ。お酒と酒器と料理のマリアージュのポイントとは?

 

 

アートは見るだけではなく、五感を使って楽しむこともできるもの。食に関しても、お酒、器、料理…と季節を五感で味わうこと自体が日本の文化であり、アートと言えるでしょう。今回は日本酒の味わいのみならず、全国各地の蔵元を長年取材・執筆してきたライターの藤田千恵子さんに、日本酒をアートとしてより深く楽しむポイントを伺いました。

 

 

 

「食」も「アート」も感覚を研ぎ澄ませることで響いてくるもの

 

 

 

girls Artalk(以下、gA):日本酒の世界に精通している藤田さんですが、「食」と「アート」との共通性についてどのように考えていらっしゃいますか?

 

藤田千恵子さん(以下、藤田さん):「食」と「アート」の共通点は、どちらも人に力を与えるものであること。提供する“人”がそのまま表れるものであることが、食(酒)=飲食とアートとの共通性でしょうか。目を凝らして見つめる人にだけ姿を顕わし、耳をすませて聴く人にだけ聴こえてくるものがある。そんなふうにこちらが五感をすませて味わおうとする姿勢に呼応するように響いてくるのは、飲食とアートの共通性かな、と思います。

 

 

 

お酒×器×料理の組み合わせをアーティスティックに楽しむ

 

 

 

 

 

 

gA:日本酒を楽しむために必要な道具が酒器ですよね。器そのものにも芸術性があるので、酒器選びはこだわりたいところですが、材質・形状・大きさなど、さまざまな器の中からどれを選んだらいいか迷ってしまいます。

 

藤田さん:器を選ぶ時は、まずは酒の身になってみる(笑)。もしも、自分がスパークリングのお酒であったとしたら炭酸ガスを含んでいるので勢い良く吹き上げたい。そうしたら、それを受け止めてくれる長さのあるグラスを求めます。自分がお燗酒だとしたら、優しい香りを広げられる朝顔型のクラシックな盃を求めます。あるいは、口当たりが柔らかくなる漆器の盃でひと肌のお燗酒を飲むのも、なまめかしい感じ(笑)で好きです。

 

gA:“なまめかしさ”を日本酒で感じるのもまた素敵ですね。季節感を感じるためには、どのように酒器選びをすればいいのでしょうか?

 

藤田さん:春の新酒を飲むのであれば、フレッシュな味わいと涼しい風味を生かすガラスの素材で。寒い冬の晩に、少し熟成したお酒をお燗で味わうのであれば、ほっこりするような土ものの器を選びます。酒器として作られたものに限らず、台湾のお茶を利くための茶器も、素材が薄くて味を吟味しやすく日本酒を飲むのにも向くと思いますよ。

 

gA:藤田さんがお好きな酒器の作家さんも気になります。

 

藤田さん:沖縄の大嶺実清さんの陶器や、自分で山に入って木を選び、木地師のお仕事から始める南木曽の小椋正幸さんの漆器が好きですね。湯島の木村硝子店のグラス各種も愛用しています。

 

 

 

 

 

 

gA:お刺身には日本酒が合うといいますが、どんなお酒でも合うのですか?

 

藤田さん:時に例外もありますけれど、淡い味の食には淡い酒、濃い味の食には濃い酒を組み合わせるのが失敗のない基本の組み合わせです。お刺身、と一括りにされがちですが白身と赤身とでは、合うお酒も変わってきます。白身のお魚には、繊細な白身の味を味わうための淡麗できれいな味わいの酒を。赤身であれば、少しコクと酸味のある柔らかな旨みのある酒を。サバやイワシなどの光りものであれば、脂を流してくれるような、少し熟成感のあるお酒のぬる燗も美味しい組み合わせだと思います。

 

gA:日本酒には大きく分けて純米酒と本醸造酒があると思いますが、どういったお酒がおすすめですか?

 

藤田さん:日本酒は嗜好品なので、純米酒・本醸造それぞれのお好みがあるかと思いますが、私個人の嗜好としては米と米麹だけで醸造された純米酒を選んで飲んでいます。口当たりも優しいし、酔い覚めも爽やかですし。よく、「おうちに帰るまでが遠足です」と言われるけれど、それを真似るなら、「翌朝目覚めるまでが飲酒です」(笑)。純米酒は、舌に優しいだけでなく、身体全体にも優しいです。

 

gA:今の季節におすすめのお酒と、お料理の組み合わせがあれば教えてください。

 

藤田さん:今の季節におすすめなのは、絞りたてで少し渋みや苦みのある春の新酒生酒と、春の山菜のほろ苦さとの組み合わせ。それから、しぼりたてのガス感のあるお酒とフライや天ぷらの組み合わせ。たらの芽やこごみの天ぷら、鯵フライなどにスパークリングの新酒はよく合います

 

gA:想像しただけで美味しそうです!お料理にお酒を合わせるには、お酒を覚えることも重要になってきますね。

 

藤田さん:お酒と人との出会いにも共通点があるかと思います。初めて会った人のことを素敵だな、と思ったら、まずはその人の名前をチェックするように、美味しいと感じたらまずは銘柄名を記憶する。そうすれば、また再会することができますから。そのあとに出身地(酒蔵)を覚える。県と酒蔵を覚えておけば、同じ蔵の別のタイプのお酒とも出会えます。

 

gA:日本酒も、人と同じく出会いを大切にしたいものですね。お酒の味わいと個性を覚えるおすすめの覚え方があれば教えてください。

 

藤田さん:お酒の味わいと個性は、擬人化すると覚えやすいです。華やかな香りのある大吟醸であれば「女王様」のような酒。お酒自体が自己主張せずに料理を引き立ててくれるのであれば「名脇役のような酒」といった具合です。

 

 

 

 

 

 

gA:寒い日が続くと、お燗酒なども楽しみたくなりますよね。その温度のポイントもあるのでしょうか?

 

藤田さん:基本は、42℃~45℃くらいだと失敗がないと思います。「生酛」「山廃」などのたくましい酒質のものは50℃を超えても、味わいの輪郭がくっきりしてきて美味しく飲めることが多いです。お燗をするという楽しみ方はお米のお酒特有のもの。最強の食中酒ですから、自分好みのお酒が一番美味しく飲める温度帯を探りながら、旬の食材と組み合わせて楽しく遊んでください。

 

 

 

日本酒と酒器と料理。知れば知る程奥深い日本酒の世界へ

 

 

 

 

 

 

gA:お話を聞いていると、ますます日本酒を極めたくなります。日本酒初心者やこれから極めたい人たちへアドバイスやメッセージをお願いします。

 

藤田さん:日本酒の世界は、汲めども尽きぬ深い世界ですから、好きなお酒は一生の伴侶になってくれるものだと思います。と、同時に生身の人間が醸すものですし、どう出荷されて誰がどう扱って店頭に並ぶかということで味わいも変わってきますから、一期一会のもの、という側面もあります。

 

日本に住んで日本酒を飲むことの幸せのひとつは、同じ国内に生産者の方々が暮らしている、ということです。日本酒は、風味そのものも魅力的ですが、それを醸している方々もまたそれぞれに魅力的、素晴らしい人間性の持ち主です。現在は、各県の酒造組合が開催するお酒の会や蔵元さんを囲む会も増えていますから、「造った人と共に味わう」スタイルのイベントに参加してみるのも蔵元さん達の個性やお酒の背景が垣間見えて楽しいと思います。

 

そして、大切なのが、日本酒は季節感を味わえるお酒であるということ。これは一例ですが、春は「新酒生酒」、夏は「無濾過生原酒のロック」、秋は「ひやおろし」、冬は「お燗酒」などなど、春夏秋冬にそれぞれの楽しみがあります。

 

 

 

言葉のプロとして長年活動してきた藤田さん。流れるように紡ぎ出されるその語り口は、日本酒のさらに奥深い世界へと私たちを誘ってくれます。そんな藤田さんが、春にふさわしい日本酒×酒器×料理を選定し、語りあう「春のとなり、の宴」が3月11日(日)の1日限りで行われます。箱根・強羅の人気旅館「円かの杜」の料理を全国の名酒と共に味わえる、まさに至極のイベント。当日は、聞き手にプロデューサーであり音楽評論家の立川直樹さんを迎え、立川さんが選曲した音楽とともに春のお酒と酒器と料理のマリアージュを堪能することができます。お酒の持つさまざまな表情に触れながら、じっくりと季節と向き合う。美しい食の世界へ、一歩足を踏み入れてみませんか?

 

 

 

文:宇治田エリ 写真:新井まる  

 

 

 

 

【イベント概要】
日本酒・春の悦楽「春のとなり、の宴」
開催日時:2018年3月11日(日) 18:30
開宴 開催場所:強羅円かの杜
https://www.ikyu.com/dg01/tieup/2018/00002057/

 

 

 

藤田千恵子 プロフィール

撮影:林 渓泉

 

ライター。群馬県生まれ。日本酒の味わいのみならず酒蔵の文化・杜氏蔵人の精神性に惹かれて各地の蔵元を取材執筆。著書に「日本の大吟醸100」「杜氏という仕事」(新潮社)、「おとなの常識・日本酒」(淡交社)、「美酒の設計」(マガジンハウス)、「極上の調味料を求めて」(文藝春秋)等。2001年より日本酒と醗酵食品・伝統調味料の啓蒙をはかる「醗酵リンク」主宰。2004年より長野県原産地呼称管理制度日本酒官能審査員。「ダンチュウ」「あまから手帖」日本酒特集等、雑誌寄稿多数。



Writer

宇治田 エリ

宇治田 エリ - ERI UJITA -

フリーランスライター

美術大学・大学院にてビジュアル・コミュニケーション・デザインを学ぶ。大学職員、グラフィックデザイナーを経て、ライターに転向。現在は、ライフスタイルやカルチャーを中心に、さまざまなWebメディアで執筆中。

 

アート情報や、作家の思いを伝えることで、若手作家がより活動しやすい環境を作ることができればと、 girls Artalkに参加した。

 

インスタレーション作品や庭園など、感覚の指向性が変化する瞬間を捉えられる作品が特に好き。

 

photo by NANAKO.Murayama






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