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ゴッホとゴーギャン展開催記念!学芸員さんによる講演会&座談会

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2016年11月11日

ゴッホとゴーギャン展開催記念!学芸員さんによる講演会&座談会


ゴッホとゴーギャン展開催記念!学芸員さんによる講演会&座談会

 

芸術の秋。平日のとある夜。大人の女性限定にひっそりと開かれたのが東京都美術館「ゴッホとゴーギャン展」を記念して行われたトークイベントです。

大橋菜都子氏(東京都美術館学芸員)による基調講演「ゴッホとゴーギャン展・見どころ紹介」と羽田美智子氏(女優)大橋奈都子氏(東京都美術館学芸員)行武知子氏(日経おとなのOFF編集長)のスペシャル座談会「画家をもっと身近に感じてみませんか」が開催されました。

 

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まず、初めのプログラムである大橋氏の講演では、展覧会の見どころ3点が紹介されました。1つ目はゴッホが書いた自画像の画風の移り変わりです。ゴッホは、モデルを雇うお金の余裕はなかったけれど、試してみたい絵の技法がどんどんどんどん湧き上がっていく。そこで自画像の作品で思いついた技法を描きいれたとのことです。そんな中で、ゴッホとゴーギャンの2人は生き方だけでなく絵の描き方も大きく異なっていきました。ゴッホの方が激しい筆使い、鮮やかな色彩が特徴的。一方のゴーギャンは、輪郭性をしっかり描いて面に色を置いていくような、平面的かつ装飾的な画面というのが特徴的です。さらに、見どころの2つ目ともいえるゴッホとゴーギャンが描いたそれぞれの「収穫」作品で、最も大きな違いが明らかになります。

 

大橋氏:

ゴッホが手がけた収穫の作品は、自身が「ある1点の静物画を除き、ほかのすべての作品を完全に圧倒する」と言っていました。2人の収穫を比べると、ゴッホは現実の世界を絵画の中に再現していて、ゴーギャンは現実から着想を得ながらも夢や記憶や想像を絵画に取り入れて頭の中で組み替えて作品にしています。

 

こうした違いがありながらも、生涯にわたり、2人はお互いに響きあっていきます。

 

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大橋氏:

ゴッホが描いたゴーギャンの肖像画はありません。でも「ゴーギャンの椅子」という作品は、ゴーギャンは写っていないものの、彼をどう見ていたかというある意味肖像画的なものといえます。一方、ゴーギャンが描いたひまわりは、なかなか見る機会が少ない絵でしょう。私たち同様に、ゴーギャンにとってもひまわりはゴッホを象徴する花でした。ゴッホへの追悼やオマージュを感じられるこの作品。3つ目の見どころでもあるこうした2人交流の足跡を楽しんでほしいです。

 

また、さらに続く座談会でも、羽田氏が感じたこの展覧会の見どころが語られました。

 

羽田美智子氏:

この展覧会は2人の物語と物語が交錯していること、そこから離れてどんな風に花開いて行ったのかがストーリーになっていてわかりやすくて面白かった。

私は、ゴーギャンの椅子の上に何でろうそくと本を描いたんだろうと考えました。いろんな解釈あると思いますが、ゴッホにとってゴーギャンは、想像力を鼓舞してくれるような道標のような存在で、尊敬のまなざしをもっていたんだと感じました。ゴーギャンはゴッホに対して少しつれないように見えますが、でも最後の最後に現れたゴーギャンが描いたひまわりがゴッホへのラブレターのように感じて涙が出てしまって。絵画展を見ているというよりは、壮大な大河ドラマを見せていただいたような気持ちになりました。

 

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この感想を受けて大橋氏もこの展覧会を開催するにあった背景をお話してくれました。そもそも学芸員さんは、絵の説明をするだけでなく、展覧会の企画から携わり、会場のパネル、図録、物販のスペースに関することなど様々なことに幅広く携わるそうです。作品の後ろはどの色にするのか、会場ごとにテーマカラーは決めるのか決めないのか、文字や言葉を差し込んでいくのか、そういったことはかなり悩んで決めていかなければいけないということになります。今回の展覧会も2人の関係性をより強く伝えていくために、そういった細部の1つ1つの構成を、きっと考えに考え抜かれたのだろうなあと感じました。

大橋氏:

これまでのゴッホ展はいくどとなく開催されてきていますが、新しい切り口でゴッホを見せたいという話がありました。ゴッホ研究者の第一人者である「ゴッホとゴーギャン展」の監修者のシラール・ファン・ヒューフテンさんからご提案もあり今回の企画が生まれました。

 

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さらに話は美術鑑賞全般について広がっていきました。行武編集長からの質問で羽田氏、大橋氏の絵画作品の楽しみ方を教えてもらいました。羽田氏は、19歳でこの世界に入った後、セゾン美術館で開催されたウィーン美術展で、クリムトの接吻やエゴン・シーレなどその他様々な絵画に出会って感銘受けたそうです。その後、実際にウィーンにいく機会があり、画家と絵のつながり、画家の人生に触れる体験があったことが美術への関心の大きなきっかけになったとのことで、美術×旅の楽しさを多く語られていたのが印象的でした。旅先で好きな美術館に行き、好きな作家に出会うと、またその作家のゆかりのある場所へ旅する……と、絵を通して世界がつながっていく様子が紹介され、聞いていると私も次の旅に思いを馳せてわくわくしてしまいました。絵の楽しみ方は旅の楽しみ方でもあり、それは人生の楽しみ方とも言えるのかもしれません。

 

大橋氏:

1つの展覧会を見て、好きな作品、そうではない作品が必ずあると思います。1つ1つを真面目に全て見るとちょっと疲れてしまうので、自分の好きという感覚を素直に感じることがいいと思います。そこからまた別の展覧会に発展できたら素敵だと思いました。

 

確かにお気に入りの1枚を見つけるのは展覧会の醍醐味ですよね。よく一緒に行った友人とそれぞれのお気に入りを決めて最後に発表します。意外とかぶっていなかったり、反対に絶対かぶらないと思っている時に同じだったりして、なかなか面白いものです。

 

羽田氏:

人が精神を込めて作ったものには何か魂があってそれは無言なんだけど、それを受け取るこちらの感性を問われているような気がします。ゴッホもゴーギャンも、10年、20年の間で描いていて、人生の中で本当にいいものができる時期って、そんな風に短いものかもなんて感じました。こんな風に作家さんが自分の人生に問いかけるものが必ずあるんですよね。

作品って目の前にあると今も生きていて息吹を感じれる。それが本物の絵を見る一番のメリットだと感じます。時代や人種を超えて、筆のタッチから何かを感じることができる。筆の後って人生の足跡にも似てますよね。作家たちがどういうのをよしとして、美としたのか、それを教えてもらえるそれが大好きなんです。

 

何だかもう一度ゴッホとゴーギャン展に足を運びたくなってしまいました。

絵と旅と人生のつながりを感じられた心地よさがじんわり胸に広がる…そんな秋の夜長となりました。

 

最後に、今回の講演会では、パナソニックのエアーマッサージャー「レッグリフレ」の体験会も行われました。参加者のみなさんは、アートの余韻とともにリラックスした秋の夜となったようでした。アートのイベントにこんな特典もついているのかと驚きです。

また、ゴッホとゴーギャン展のレポートも別途の記事で詳しくお伝えしているのでぜひご参照ください。(http://girlsartalk.com/feature/23178.html

 

文:Yoshiko

 

【イベント概要】

羽田美智子さん&学芸員さんに学ぶ美術展の楽しみ方〜画家をもっと身近に感じてみませんか〜

開催場所:日本経済社新聞カンファレンスルーム

 

【ゴッホをゴーギャン展】

会場:東京都美術館 企画展示室
会期:2016年10月8日 – 2016年12月18日

開室時間:9:30~17:30 ※入室は閉室の30分前まで

 



Writer

Yoshiko

Yoshiko - Yoshiko -

東京都出身。中高は演劇部に所属。大学、大学院と心理学を専攻し、現在は臨床心理士(カウンセラー)として、「こころ」に向き合い、寄り添っている。専門は、子どもへの心理療法と家族療法、トラウマや発達に関することなど教育相談全般。

子どもの頃から読書や空想、考えることが大好きで、その頃から目に見えない「こころ」に関心があり、アートや哲学にも興味をもつ。

内的エネルギーをアウトプットしているアートと沢山携わりたいとgirlsartalkに参加した。昨年はゴッホ終焉の地であったオーベルシュルオワーズを訪れるため、パリに一人旅をし、様々なアートを見てまわる。