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新進気鋭の陶芸作家、キム・リユウ氏をたずねて

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2014年1月8日


新進気鋭の陶芸作家、キム・リユウ氏をたずねて


Interview

新進気鋭の陶芸作家、キム・リユウ氏をたずねて

 

 

 

 

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寒さも厳しいこの時節、横浜・関内の茶の湯空間SHUHALLYで個展開催中の金理有氏をたずねました。マンションの一室に設えられた茶室に入ると、その空間が本来有しているクラシカルな雰囲気とは異なり、近未来的なメタリックな陶器や茶道具が、客人を迎え入れてくれました。2013年には個展を4回、グループ展を50回もこなしてきたキム氏——。茶会の合間にお話しいただきました。

 

 

 

 

世代感覚を落とし込む

SFあるいはプリミティブな世界

 

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陶芸始める前はストリートカルチャーにどっぶり浸ってて、サブカルやアニメ、SFとか大好きやったし、そっから逆に陶芸と出逢って、自分が触れてきた世代的感覚を作品に落とし込めるんじゃないかと思った。最初はすごく乗り越えるハードルが高かったですね。3回生くらいまではそんなに手に技術もついていないんで全然思い通りにいかんわーって。大学院での修了制作展では、宗教対立のコンセプトやったかな、ニュアンスの違うオブジェの群像を二つ作って、祭壇的なのと軍隊的な設えを作って向かい合わせるっていう展示をやった。縄文土器や中国の青銅器とか古代のものもすごい好きやったから、そういうプリミティブな情念みたいなのは作品の中に常に取り込もうという気持ちはありますね。

 

鉄筋コンクリートの映画にキムさんの作品出てましたよねって、こないだ知人に言われたんやけど、俺がそういうイメージを無意識に取り込んでて自分の表現の中に入れているのかもしれんけど。

 

自分でも普通にやっていて後から気付くってことも全然ありますからね。はなからそういうことを意図してやっているわけではなく感覚的に作っている中から自分の考えが逆照射されるっていうか。

 

 

 

 

“越境”と評され

——時代や国もよくわからんようなものを作る

 

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自分が日本人と韓国人のハーフで、国籍も名前も韓国やけどずっと日本に住んでいる、とかアイデンティティの揺らぎみたいのもあったから、時代や国もよくわからんようなものを作ろうというのが最初にあったんですね。

 

大学の時はある程度ふっきれていたんやけど、小中高とか、韓流ブームの前なんかは結構あからさまな差別的発言も普通にあったし。名前見ただけで警戒されたりとか、今より被差別体験が多かった時代やと思うんで。親父が日本人なのに何で俺を日本国籍にせーへんかったんやろって他意無く疑問に思うこともあったけど、うちの両親はアジア文化とかすごい好きやったから自分の血のルーツを忘れないようにってのがあったみたいなんすけど。二十歳の時に自分の意志でもう一回選べるんやけど、その頃にはもうどうでもよくなっていて。日本に住んでいて選挙権がないのは少し残念ではあるけど、まあこれは国策的にデリケートな問題やからしゃあないと思ってる。

 

 

 

 

まる10年くらい学生やって、自然と

——陶芸は自己表現の素材やったから

 

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元々焼き物って土のイメージが強いけれど、金属とも関わりが深くて、釉薬ってごく微量に鉱物が入っていて、その鉱物が焼成の効果でこういう色や質感が出る。ある程度の基礎的な知識と技術は大学で学びました。大学は美大の陶芸コースで、現代陶芸の先生が多かったから最初の課題から卵型のオブジェとか、自分のイメージのテーマに沿った造形物を作るとかで、オーソドックスなものは課題以外ではほとんど作ってない。一応轆轤やクラフトの授業もあるねんやけど、今みたいに真面目に取り組んでなかった。最初は陶芸は自己表現の素材だったから、発表する場も現代美術のギャラリーばっかり選んでやってたし。

 

けっこうずるずると大学にいて、ヌシ化していくっていう。学部4年行って、院2年、研究員1年、そこから助手もやったから丸10年くらいいて、20代の全てを大学に捧げるみたいな。助手といっても雑兵みたいなもんやから、学生のお目付役というか、自分も作家活動を見せるし、一緒にクラブ行ったりね(笑)。社会適合性の乏しいとこがあるんで、大学で働いていた時も毎日酒の匂いがしたりね(笑)。早く独立したい気持ちが漠然と昔からあった。学部4回の時は焼き物が面白くてしゃーない状態になっていたから、プロになるならへんというよりも続ける環境をどう確保していくかって事ばかり考えていて、自然な流れとして陶芸家になった。

 

 

 

 

大阪を拠点に、今はマネージメント全般も

——うちの門を叩きに来た変わりもんもいて

 

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今は大阪に住居兼工房、築90年の2階建てのぼろぼろのとこに住んでる。うちのすぐ向かいの長屋に家借りて、アシスタントの子に住んでもらって。近くには金属やってる子とか、大学で働いている子が住んでたり、ちょっとしたアーティストムラみたいなコミュニティが出来てる。この4月から弟子ができて、うちの門を叩きにきた変わりもんがいて。マネージメントや事務というよりは、それはお願いできたら楽とは思うけど、いきなりあれもこれは難しいから、今は制作をメインに覚えていってもらってて、俺がやらんでもいいようなことは彼にお願いして、その間俺はデスクワークや思考に集中できるっていう。

 

青山のニュートロンと契約してた時とかは、かなりの部分を委託してたこともあったんやけど。その依存関係がなくなった時のダメージを思い知ってしまったから。大変やった。預けてた作品もいっきに返ってきて。制作費の援助も受けてたし。情報の管理も全部任せてたし。今は自分のとこでやるようになってる。売上とかも折半せずにすむから、なんとかそれでグループ展こなすことでやっていけるなっていう見通しもたったから。その他のとことも契約したいって言われたんやけど、これこれこういう事情で俺はフリーの立場でいろんなとこと仕事するけど、より面白い舞台を与えてくれるとこに俺は力を注ぐだけですっていうお願いの仕方をしていて、アートフェアにしろ個展の会場にしろむしろ話しいただいたら全力でやりますって。

 

 

 

 

コラボレーション、枠を越えるおもしろさ

FUGAHUMとの場合

 

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レントゲンヴェルケっていうギャラリーのセレクションは自分の好きな感覚に近いかなっていう感じはあったけど、今はジャンルを超えて色んなことやってるんで、色んな人から評価いただいているなって感じはします。お茶人も現代美術の人も、ファッションの人も。今回はファッションブランドFUGAHUMの人ともコラボさせてもらって、来期のコレクションで俺の焼き物をアクセサリーに仕立てて貰ったり、プロダクト的な広がりもやっていきたい。

コラボの面白さは自分の枠を超えられるってことかな。一人だと自分の殻を破るようなアイデアってなかなかでてこんと思っていて、コラボした時って人の視点や感性が入ってくるから、自分では考えつかなかったような雰囲気が生まれたりするのが楽しくて。特に一人でやりますって拘らずに、楽しい人たちと一緒にやる真剣な遊びみたいなかんじですよ。

 

 

 

 

 

茶道の本流へ、ニュータイプとして

 

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今回のような茶席での展覧会はここ関内のSHUHALLYでの展示が初めてやって、茶事を意識して作品作っていたわけではないんですよね。茶の湯っていう部分でいえば、扱う道具とか使われる陶芸家も一定で、そういう保守的な層を巻き込みたい。ニュータイプとしてぶつけていきたい。

メインストリーム自体を変えていくってのが作家としてやりたいこと。作品作るのも作家の仕事やけど、ヨーゼフ・ボイスが言う「社会彫刻」ていう概念、自分が活動することで世の中の仕組みを少しずつでも変えていくっていうのは、昔から意識してやりたいなって思っている。展覧会に集まる人たちと何が出来るかとか、どういう空気を作っていけるか、人の意識をどう変えられるかっていうことに意識を置いてますね。

 

 

 

 

 

国際的な展望

2014年1月 シンガポールにて展示

 

来年はとりあえず1月にシンガポールで展示があります。Kult Magazineっていうストリートに特化したシンガポールの雑誌に記事載せてもらって、その編集長が持っているギャラリーで展示ってことになってる。CLEAR&EDITIONっていう六本木のギャラリーが仲介してくれているんですけど。

 

海外でどんどん展示やっていきたいですね。国を問わず、韓国や香港でもやりたい。これまでにNYで二回、ロスで一回、パリで一回、韓国でも展示やって。ロスのやつはグループ展にちょっと出しただけやから、西海岸でがっつり展示できる機会あるといいなって考えていて。カルチャー的にそっちの親和性が高いって、人からすごく言われて。俺はまだむこうのシーンを分かってないけどキムの作品は東海岸より西海岸って。村上隆さんにも言われた。そうとはまた別に、個人で動いているアメリカ人のアートマネージャーのライアン・ロス氏がフェースブックでずっと俺のこと見てて、ちょっと気になってきたから仕事せえへんって話しがあったりもする。

 

 

 

 

 

作品自体がキーとなる映画制作

 

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今一番やりたいなと思っているのが、2013年にアカデミー賞のサイエンティフィック&テクニカルアチーブメント賞を受賞したニクソン・フォン氏と京都で会った時に自主制作で映画撮ろうよって話しになった。コミッションワークって、映画の舞台装置として写されるわけやけど、それとは逆に作品が話しのキーになるような撮り方、作品こそがホラー映画のキーポイントになっていくような、作品から考える映画作りをしようという話しになった。ニクソン・フォン氏がH・P・ラヴクラフトの小説がすごい好きで、基本的にはクトゥルフ神話的な感じなんやけど。まさにあそこに出てくる世界観とかキャラクター、古の神々は自分の作品のイメージとマッチしているなって気はしていて。ほんとに忙しい人やから、日本に来た時にちょっと会ってちょっとずつ話し進めていくって感じだから、まだ全然時間はかかるかもしれないけど。

 

 

 

 

 

作品のひとつの要素としての身体感覚

轆轤(ろくろ)ライブ

 

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器が出来て、作品ですってのもあるけど、その時の身体感覚も作品の要素の一つやと思ったから、轆轤(ろくろ)ライブってのも今までに4回くらいやった。クラブとかライブハウスとかでDJに音楽かけてもらって、それに合わせて俺が乗りながら轆轤ひくっていう。

 

変な話し、轆轤って愛撫と一緒だと思っていて、土をいなして、器にするために最初穴あけてそれを広げるんやけど、土が乾きすぎていると指がひっかかって綺麗な穴があきへんから、最初はきちんと水で濡らしてあげて、真ん中の位置を指先で探りながら、プスッと入れていくんやけど、内側の壁を押して広げていくんやけど、無理な力を加えると、痛いってぐちゃぐちゃってなるから、どこを触ってほしいのか、どう動きたいのか指先で反応見ながら広げていく。すごいたまってたときに轆轤触って、これやべーって感じたことがあって。笑

 

 

 

 

 

アーバン陶芸

陶芸家ブランディングの件

 

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 撮影:田村孝介、茶人:松村宗亮

 

女性が多いと男性も心が和らぐので、気軽に展覧会に遊びにきてくれたらなって思いますね。僕の作品は男の子好きする世界観なんやけど、最近はけっこう作品好きっていう女の子が来てくれるようになった。

 

まぁ結婚という形にこだわってはいないけど、パートナーがいたらいいっすよね。最近は展覧会とかで忙しくて、相手に寂しい思いをさせたり、作品とかでなんでそんなに気違いみたいになってるの?ってなることもしばしば笑。

 

陶芸家モテるとか、陶芸家儲かるんだぜ、ていうプロ野球やサッカー選手みたいな憧れの職業になればいいなと思うから、そういう演出はありだと思う。作務衣着て田舎に引っ込んでバキンとか無口に割ってるのが陶芸家だけじゃない。都市型、都市に生きる陶芸家っていうモデルがあってもいいかもしれない。アーバン陶芸とか言うてたこともあったけど、陶芸家のイメージを変えていけたら良いですね。

 

 

 

 

 

 

 

KIM’S Exhibition 2014

 

The Neo Folk Exhibition (ネオフォーク展)

今回のインタビューでも案内いただいたシンガポールでの展示です。

2014年1月14日(火) -3月1日(土)

Ikkan Art Gallery

http://ikkan-art.com/?cat=9

 

 

ARTs of JOMON展

今年3月にNY、Chelseaにて行われたARTs of JOMON展が青森県に帰ってきます。より深化した縄文とコンテンポラリーアートの饗宴をお楽しみに!

2014年2月14日(金)-2月23日(日)

10:00-17:00

青森県立美術館コミュニティーギャラリー

http://www.aomori-museum.jp/ja/

Tel: 017-734-9147(青森県地域活力振興課)

 

 



Writer

★【代表】新井 まる

★【代表】新井 まる - MARU ARAI -

アート専門webマガジン「 girls Artalk 」代表 / 株式会社maru styling office 代表取締役

 

イラストレーターの両親のもと、幼いころからアートに触れ、強い関心を持って育つ。

大学時代からバックパッカーで世界38カ国を巡り、美術館やアートスポットなどにも足を運ぶ旅好き。

新卒採用で広告代理店に就職し営業として3年間勤務の後、アパレルEC部門の販促に約1年間関わる。その後、一念発起して独立。アート専門webマガジン「girls Artalk(ガールズ・アートーク)」を立ち上げ、アートの魅力を伝えることに日々奮闘している。

 

好きなものは、餃子とお酒と音楽と旅。

 

 

 

★「 girls Artalk(ガールズアートーク) 」は、「ガールズトークをするように、アートの話をしてほしい」という想いからできた、アートをもっと身近に楽しむためのアート専門webマガジン。各分野で活躍する女性ライターやモデルたちがリアルな目線で情報を発信。アート業界から注目を集めている。

 ♡アートwebマガジン「 girls Artalk 」 http://girlsartalk.com/

 






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