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『笛を吹く少年』だけじゃない! あのモネの幻の大作も オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-

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2014年8月28日

『笛を吹く少年』だけじゃない! あのモネの幻の大作も  オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの


『笛を吹く少年』だけじゃない! あのモネの幻の大作も

オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-

 

 

 

印象派好きなら一度は行ってみたいパリ・オルセー美術館。大きな時計をはじめ、駅舎だった頃の面影を残した大空間に、一歩足を踏み入れた時のあのワクワク感は忘れられません。そのオルセー美術館を代表する名画の数々が、なんと84点も出展されている『オルセー美術館展』が国立新美術館で開催されています。本展はフランス国外をでることがほとんどなかったという、モネの大作《草上の昼食》が日本初公開!ときたら見逃すわけにはいきませんね。

 

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1900年、パリ万博の際に建てられたオルセー駅の駅舎兼ホテルだった空間は、紆余曲折を経て、86年後の1986年に美術館として生まれ変わりました。同館では2月革命(1848年)から第一次世界大戦勃発(1914年)までの期間の作品を展示する役割があり、まさしく19世紀末の前衛芸術であった印象派、後期印象派のコレクションが充実していて、これが「印象派の美術館」と言われる所以。本展でも同時代の主流だった印象派の名品が目白押しです。

 

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エドゥアール・マネ  《笛を吹く少年》

1866年 油彩/カンヴァス 160.5×97cm

©RMN-Grand Palais (mus?e d’Orsay) / Herv? Lewandowski / distributed by AMF

 

 

展示室に入って衝撃を受けるのがこの作品。だれもが一度はどこかで見たことのある有名な、マネの「笛を吹く少年」です。笛を吹いている少年の服装はひどく立体感に欠け、袖のボタンと上着の前を止めるボタンが、ひと続きの列を作っているようにみえます。足元に小さな影がある以外は背景にも奥行きがなく、とても斬新。

 

それまでの絵画では人物や物には必ず影をつけ、遠近感を表現するのが当然と思われていた中で、この平面性を強調した大胆な表現は、サロン(官展)では大不評。マネの新しい表現への挑戦は、その後、同じくサロンに不満を持つ作家たちで印象派展(1874年)を開くことへと発展します。

 

 

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この展覧会ではオルセー美術館そのもののコンセプト通りに、印象派だけではなく写実主義やアカデミズムの作品も同時に出展されています。今では当時から主流だったかのように思われる印象派ですが、実際は写実主義やアカデミズムが主流で、印象派は前衛だったのです。

 

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7_かささぎ

クロード・モネ  《かささぎ》

1868-69年 油彩/カンヴァス 89×130cm

©RMN-Grand Palais (mus?e d’Orsay) / Herv? Lewandowski / distributed by AMF

 

今回の展示で私が一番のお気に入りだったのは、この雪景色を描いたモネの「かささぎ」です。当時の絵画では、雪は白で描くこと、影はその本体に黒を足した色など、色々と決まりがありましたが、モネは雪を白一色ではなく、黄色、ピンク、青など、パレットの様々な色を駆使して太陽に照らされる雪原を表現しています。みればみるほど素敵なこの作品ですが、描かれた1868年ごろはサロンへの入選は1点のみであり、この作品も落選したかもしれないとは!

 

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そして、忘れてはならないのが、日本初公開となる‘’モネ‘’の「草上の昼食」です。

 

モネの?と思った方は美術通ですね。大変有名なマネが描いた「草上の昼食」もオルセー美術館が所蔵していますが、同作品はオマージュやパロディといった形で様々な作家が同じ題材で描いています。本作はもとは大きな一枚の絵でしたが、サロン出展に間に合わず、マネは未完成のまま手放してしまいました。

 

再び彼の手に戻った時には作品が湿気で傷んでいたため、モネが二つのピースに切ってしまったというエピソードが残されています。モネがどんな思いでいたのだろうと、作品を前にして想いをめぐらせるのも、謎解きのようでまた楽しいです。絵に描かれた女性の服装は当時の流行のものだそうで、赤いレースの装飾や、水玉模様のシフォンのような生地など、今見てもオシャレだなぁと感じました。

 

 

13_草上の昼食

クロード・モネ 《草上の昼食》

1865-66年 油彩/カンヴァス 418×150cm(左) 248.7×218cm(右)

©Mus?e d’Orsay, Dist.RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

 

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そして写実主義の中からは農民を描くことで有名なミレーの「晩鐘」もみることが出来ました。農民の夫婦が一日の終わりに感謝して祈っている慎ましい姿が描かれている作品です。この絵の前に立つとなんとも言えず敬虔な気持ちになりました。

 

3_晩鐘

ジャン=フランソワ・ミレー  《晩鐘》  

1857-59年  油彩/カンヴァス 55.5×66cm

©Mus?e d’Orsay, Dist.RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

 

 

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ちなみに、当時主流だったアカデミスムの作品の中でも、最も評価されたカバネルの「ヴィーナスの誕生」も見応えがありました。神話に出てくる美の女神がベッドで眠るように、波の上で優雅に横たわっている姿が描かれています。ふわふわと舞うキューピッドに見守られる彼女をみて、エーゲ海にいるような心地良い気分に浸れました。

 

6_ヴィーナスの誕生

アレクサンドル・カバネル  《ヴィーナスの誕生》

1863年 油彩/カンヴァス 130×225cm

©RMN-Grand Palais (mus?e d’Orsay) / Herv? Lewandowski / distributed by AMF

 

 

 

 

 

オルセー美術館展

印象派の誕生 —描くことの自由—

Naissance de l’Impressionnisme : La libert? de peindre. Collections du mus?e d’Orsay

 

2014年7月9日(水)〜10月20日(月)

国立新美術館 企画展示室2E (東京・六本木)

(〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2)

http://www.nact.jp/

午前10時〜午後6時 金曜日は午後8時まで 火曜日は休館

*8月16日(土)以降の毎週土曜日および10月12日(日)以降は毎日午後8時まで

*入場は閉館の30分前まで

 

 

執筆:新井まる

記事監修:チバヒデトシ

撮影:洲本マサミ

モデル:高野麻衣、新井まる

 



Writer

【代表】新井 まる

【代表】新井 まる - MARU ARAI -

話したくなるアートマガジン「ARTalk(アートーク)」代表

株式会社maru styling office 代表取締役

 

イラストレーターの両親のもと幼いころからアートに触れ、強い関心を持って育つ。大学時代からバックパッカーで世界約50カ国を巡り、美術館やアートスポットなどにも足を運ぶ旅好き。新卒採用で広告代理店に就職し3年間勤務の後、アパレルEC部門の販促に約1年間携わる。人の心が豊かになることがしたいという想いから、独立。2013年にアートをカジュアルに楽しめるwebマガジン「girls Artalk」を立ち上げる。現在は「ARTalk(アートーク)」と改名し、ジェンダーニュートラルなメディアとして運営中。メディア運営に加え、アートを切り口にした企画・PR、コンサルティングなどを通じて、豊かな社会をめざして活動中。

好きなものは、自然と餃子と音楽と旅。

 

●Instagram: @marumaruc   

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