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奇想の曼荼羅がヴェネチアで展示。アートコレクティヴ「KHU」がアルテ・ラグーナ特別賞受賞

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2023年3月24日

奇想の曼荼羅がヴェネチアで展示。アートコレクティヴ「KHU」がアルテ・ラグーナ特別賞受賞


奇想の曼荼羅がヴェネチアで展示。アートコレクティヴ「KHU」がアルテ・ラグーナ特別賞受賞

 

約120か国からアーティスト、デザイナーが参加する世界的なコンテスト「アルテ・ラグーナ賞」。第17回目となる今年、ディレクターの山田遼志とアートディレクターの内藤愛によるアートコレクティヴ「KHU」の作品、『KA/SO』がフェスティバル&エキシビション賞を受賞した。

受賞に伴い、2023年3月11日から4月16日にかけて、イタリア・ヴェネツィアで開催されるファイナリストエキシビションに出展している。また、2023年初秋に中国・北京で開催される「ARTNOVA100」での展示も決定した。

 

 

『KA/SO』は、伊藤若冲による「果蔬涅槃図」の奇想的表現から派生した映像作品だ。山田遼志が立てたコンセプトとプロットに対し、内藤愛が造形のアイデアで応答しながら、表現を精緻化させていくという禅問答的なスタイルで、2年の制作期間を経て完成に至ったという。

 

素朴な野菜が無機質な反復運動を演じるさまは、野菜を野菜として認識すること、ひいては自分を自分として認識することから逃れる。しかし一方で、新たな認識もまた浮かび上がっていく。本作に使われているサウンド『trancefusion』は、ドイツを拠点に活動するミュージシャンOpal Sunnが担当した。映像とループ構造のサウンドが重なり合うことで、涅槃的解放感に誘われるだろう。

 

現在はティザームービーが公開中。2023年4月17日にYouTube、Vimeoにて本編が公開される。

 

『KA/SO』が展示される「ARTE LAGUNA PRIZE FINALISTS’ EXHIBITION 17」へ

 

「ARTE LAGUNA PRIZE FINALISTS’ EXHIBITION 17」の初日である3月11日の夕方。真っ白な霧に包まれ、ぼんやりと光る太陽が沈みゆく中で、オープニングレセプションとセレモニーが開催された。

会場は、1104年にヴェネツィア共和国により設置され、復元された、歴史ある国立造船所。本会場はヴェネツィア・ビエンナーレの本会場としても利用されている場所の一部であり、約1,000平方メートルのパビリオンスペースと特徴的な建築の中でアート作品に対峙することができる。

 


会場風景


会場風景


MONICA MARIONIによるパフォーマンス

 

会場は「絵画」「写真」「インスタレーション」「ビデオアート」「ランドアート&アーバンアート」「デジタルグラフィック&カートゥーン」「アートデザイン」の7つの部門に分かれ、世界各国のアーティストやデザイナーによる多様な作品が展示。オープニングイベントでは参加アーティストによるパフォーマンスも行われ、会場を盛り上げた。

 


セレモニーでは「第17回アルテ・ラグーナ賞」の審査員が最優秀賞を発表。CHIU CHIUによる『SELF-SERVICE BARBERSHOP』が受賞した。

 

最優秀賞の受賞者だけでなく、特別賞に選ばれたアーティストも、国際アート・レジデンスへの参加や国際ギャラリーでの個展、国際フェスティバルへの参加などが約束され、作家として世界で活躍するためのステップアップにもつながる。それぞれの作品には、若手作家たちの感性や思考、眼差しが投影され、非常にエネルギッシュな場となっていた。

 


ビデオアート部門の展示ブース。

 

KHUによる作品『KA/SO』は、北京で開催される「ARTNOVA100」に出展が決定した、ビデオアート部門の特別賞受賞作家とともに展示された。

 


鮮やかに、艶やかに動く野菜の曼荼羅。

 

そのユニークなアプローチに、審査員らからは、
「野菜の曼荼羅は官能的でオリジナリティがあり、魅了された」
「社会的で真面目な作品が多い中、このようにコンセプチュアルでありながら、ポップさを併せ持った作品は、我々に鮮烈な印象を与えた」
といったコメントが寄せられた。

 

山田と内藤は本賞の受賞を受け、
「私たちの記念すべき第一作目がこのような世界的な賞に選ばれたことを嬉しく思います。同時に私たちがつくるものは、ビデオアートの領域を超え、インスタレーションとしても表現しうるのではないか。そのような新たな課題感が生まれました」
とコメント。今後の活動の構想を広げるきっかけになったという。

 

山田と内藤は、KHUを「アーティストとして持続するためのシェルターであり、本質の新たな周縁を明らかにするための儀式の場として機能するもの」と表現する。そしてそのような場のあり方を「家」として捉え、「あらゆるものは執着する必要がなく、執着しないからこそ尊く美しいものとして存在できる」という東アジアの禅的思想に共鳴しながら、その思想が生み出す循環に軽やかに身を委ねる。

 

第二弾の制作も、このような考えのもと進行中だという。今後どのような作品が生み出されるのか、注目したい。

 

写真=KHU

文、会場写真=宇治田エリ

 

【KHU プロフィール】
ディレクターの山田遼志とアートディレクターの内藤愛によるアートユニット。2年間の準備期間を経て、 2022 年 3 月より活動を本格始動。「あらゆるものは執着する必要がなく、執着しないからこそ尊く美しいものとして存在できる」という東アジアの禅的思想に共鳴し、コンセプトにアートで応答するという禅問答のスタイルで作品制作を行う。「第 17 回アルテ・ラグーナ賞」フェスティバル & エキシビション賞受賞。
Instagram
https://www.instagram.com/khu_info/

 

【展覧会情報】

ARTE LAGUNA PRIZE FINALISTS’ EXHIBITION 17

会期|2023年3 月 11 日〜4 月 16 日

会場|Sestiere Castello, 6611, 30122 Venezia VE, Italy

主催|Arte Laguna Prize

https://artelagunaprize.com/exhibition-22-23/