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「見せる自由/見る自由」 ー表現をめぐる制約について考える!ー

NEWS

2016年6月17日


「見せる自由/見る自由」 ー表現をめぐる制約について考える!ー


現代美術のファンにとって「新たな表現との出会い」はとても魅力的な出来事です。

時にはそこから受ける刺激や共感が自分にとってかけがえのない経験になることもあるでしょう。

 

しかしその一方、旧来の常識に挑むような表現は批判的なまなざしの対象になることがあるのも事実です。

とりわけここ数年は、作品として発表されたものに対して展示の取りやめが求められたり、あるいはそれが法に

触れるものとして訴えられるといった事例が続いています。例えば、東京都現代美術館に展示された会田家(会

田誠氏とその家族によるユニット)の作品《檄》に対する撤去要請もそのひとつです。

 

山内コラム画像01
東京都現代美術館で2015年に開催された企画展「ここはだれの場所?」に展示された会田家の作品《檄》。

 

「アート」という言葉は一見、とても自由な雰囲気をまとっているようにみえます。ですが、実際のところ、

私たちの目の前にある作品の中には様々な制約との交渉やたたかいを経たうえで(あるいはそれらが現在進行形

の状態で)その姿を見せてくれているものも少なくありません。また、アーティストが作品を通じて社会的な

課題に関わろうとすればするほど制約を受けやすくなるということも、見過ごしてはならない現実といえます。

 

山内コラム画像02愛知県美術館が入っている建物(愛知芸術文化センター)の外観。2014年、同館の企画展「これからの写真」で展示された鷹野隆大氏の写真作品に対し、愛知県警察は刑法175条に抵触する可能性を理由に作品撤去あるいは展示室の封鎖を求めました。

 

このように、新しい表現が世の中へと生み落とされる時、多かれ少なかれそこには「反響」が生まれます。

時にそれは激しい不協和音をともなうこともあり、それを封じ込めようとする人が現れることもあるでしょう。

ですが、その不協和音を受け止めることは多様性や個性を認め合うことととてもよく似ていて、それは私たちが生きる

社会の自由度を測る尺度ともなります。

 

山内コラム画像03
2016年5月9日、 その表現が刑法175条に抵触するとして逮捕・起訴されたろくでなし子氏の判決が東京地裁で言い渡されました。

 

山内コラム画像04
同日 判決後に開かれた弁護団主催の説明会には海外メディアをはじめ多くの報道陣が取材に訪れました。

 

とはいえ、多様な表現活動のなかにはそれを目にする人の心(あるいは身体)を不快にするだけでなく、それによって

傷つけられる可能性があるものも全く存在しないわけではありません。そのようなものと出会った時、私たちは

どのように振る舞うべきなのでしょうか。

また、「その時」あなたがひとりであるとは限りません。もし、なんからのトラウマを抱えた人と一緒だったら?

とても小さな子どもを連れている時だったら?あなた自身がその場で彼らの目をふさぎ、作品を否定する側になること

だってありえるかもしれません。そして、同じようなことが大きな力をもつ組織(例えば美術館そのものや警察など)

によって行われた場合、それは作品を「見せたい人」だけではなく多くの「見たい人」の権利も奪うことになります。

 

山内コラム画像05
東京都現代美術館では2016年に「キセイノセイキ」と名付けられた企画展が開催されました。

 

山内コラム画像06同展の会場の一部。その壁には作品タイトルや作者名を記したキャプションが設置され、さらにスポットライトもあてられています。しかしそこに作品は展示されていません。

 

 

私がプレス担当をつとめるシンポジウム「美術と表現の自由」(会場・東京都美術館、主催・美術評論家連盟)は

美術をとりまくこのような現状をうけ企画されました。この「表現の自由」は「見せる自由/見る自由」と言い換え

てもよいでしょう。つまり、これはアーティストやキュレーターなど作品を示す側だけでなく、それを「見る側」に

も大きく関わっているテーマなのです。プログラムの内容は、表現と制約をめぐる出来事に第一線で接してきた研究

者による事例発表、そしてパネルディスカッションにより構成されています。この機会を通じて、みなさんも表現の

自由について一緒に考えてみませんか。

 

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シンポジウム「美術と表現の自由」

主催:美術評論家連盟 http://www.aicajapan.com/

日時:2016年7月24日(日)13:00~17:00

会場:東京都美術館 講堂

発表者およびパネリスト:小勝禮子、土屋誠一、中村史子、林道郎、光田由里

モデレーター:清水敏男

 

入場無料、申し込み不要(当日先着順 12:30開場)

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山内舞子  (キュレーター)   Yamauchi Maiko

山内ポートレート

京都大学大学院文学研究科美学美術史学専修修士課程、国立西洋美術館インターンシッププログラム(教育普及)修了。美術館学芸員として50本以上の展覧会の企画・広報にたずさわり、現在は、フリーランスのキュレーターとして活動。展覧会企画、美術評論のほか、ワークショップやツアーなど様々なアートイベントのプランニングを手がける。美術評論家連盟(Association Internationale des Critiques d`Art, Japon)事務局員。

 








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