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和風美人塾 ~伝統美を探す旅~ vol.1 和える(aeru) 代表 矢島里佳さん

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2015年2月4日

和風美人塾 ~伝統美を探す旅~ vol.1 和える(aeru) 代表 矢島里佳さん


子どもたちに日本の伝統を伝える    
~和える(aeru) 代表 矢島里佳さん~

 

このコラムでは、“本当に良いものは、いつの時代も新しい”をテーマに、とりわけ日本の伝統的な芸術表現を推し進めている、さまざまなヒトやモノを紹介していきます。

その記念すべき第1回として、日本の職人の手技により生み出された日用品から出産祝いを届ける、21世紀の子どもたちのための『0から6歳の伝統ブランドaeru』の代表、矢島里佳さんにお話しをうかがいました。

矢島さんは、学生の頃から日本全国の職人さんにお会いしてインタビューし、その人々との出会いを“aeru”の商品開発とつなげている “日本にある宝物を発掘する天才” なのです。伝統産業の魅力を伝える活動をされている矢島さんの魅力に迫ります。

 

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◯モノを通して日本の伝統を“伝える”

“aeru”の直営店、“aeru meguro”の店舗に入った瞬間、思わず「素敵!!」と声が出てしまいました。こだわりの什器、シンプルでやわらかな内装、そして、aeruの商品たち。あまりの空間の素晴らしさに、ご挨拶もそこそこに、思わず矢島さんに店舗のこだわりについてうかがってしまいました。

—“aeru meguro”の店舗の空間は、“aeru”の商品が映える素敵な空間ですね。こだわりや工夫を教えてください。

矢島:
先人の知恵に習い、限られた空間をいかに有効活用するかを考えました。この工夫は、“節約”とは異なります。いつでも自由に動かせるように、商品を置くための大きな棚は、“階段箪笥”をイメージして作った可動式になっています。棚を移動することでイベントスペースとしても活用できる空間にしました。店内では、“aeru”の商品ができるまでの映像も映し出しています。

—これなら“aeru”の大切にしている、「モノが出来るまでの物語」をわかりやすく伝えられ、商品の魅力をお客さんも知り、楽しみながら商品を選ぶことができますね。この映像も“伝える”という事のこだわりだと思うのですが、“aeru”の接客スタイルは、“売る”のではなく、“伝える”ことを、一番大切にしているとうかがいました。この考え方は斬新だと思うのですが、なぜそのスタイルになったのでしょうか。

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矢島:
戦後、モノがない時代に生まれたモノづくり企業は、「物がないから作ろう!」ということで生まれた会社が多かったのではないかと思います。しかし、“aeru”は、21世紀のモノが溢れている時代に、あえてモノづくりをする会社として生まれてきました。

それは、ものが溢れている時代だからこそ、「自分の人生に本当に必要なものはなんだろう?」と真剣に考え、「人生を豊かにしてくれるのは、数ではなく質である。」という時代へと移り変わっている、過渡期ではないかと感じているからです。

経済成長を追求し、資源を大量に必要とする消費を続けていくと、地球がいくつあっても足りないということが明白になっています。しかしながら、まったくモノを生み出さずに人間が生きていくことも出来ません。

私たちは、「生きていくために最低限必要なものを自ら選び取り、それを大切に使い続ける」ことが、ゆるやかな経済成長と、心の豊かさの両立を実現する、一つの答えではないかと考えています。

だからこそ、子どものときから、ずっと使い続けられるものを大切に愛着を持って使い続けられる提案をしたいと思っています。そのためにも、「なぜその商品が生まれたのか」、

「どんな職人の技術が活かされているのか」、

「それを使う人にとって、どんないいことがあるのか」ということを考え、伝えて、ホンモノをつなげたいという想いから始まりました。

年齢、国籍、性別に関係なく、本当に必要な「これは!」と感じる物を、一人ひとりが自分の意思で選択できる社会を生み出たい、という想いから、“伝える”ことに、重きを置いています。

—説得力がありますね。商品の背景にある物語を知れば、そのものの価値を知ることができ、自分に対しても、大切な人にも、ただモノを贈るのではなく、そのモノに込められた想いや意味をも一緒に贈ることができますね。これからは、商品に対してもっと興味を持って、選択していく必要があるのですね。

 

◯“この子なら!!”という出逢いを大切に、一生使い続けてほしいという想い

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—たくさんの職人さんに直接会い、インタビューされているちのことですが、今までに何人くらいの職人さんとお話されたのでしょうか。

矢島:
大学生の頃から今まで、300人以上の職人さんにお会いさせていただきました。

—多くの職人さんに会いに行っていると、何をどの産地の職人さんと作ろうか迷ってしまうと思うのですが、商品化するものはどのように決めているのですか。

矢島:
商品を作る際には、必ず現地の職人さんと直接会って、打ち合わせを行っています。商品の生み出し方は、最初からイメージが決まっていたり、職人さんとお話ししているなかで浮かんできたりと、さまざまですが、常に赤ちゃん・子どもたちの役に立つ、と思ったものだけを商品化しています。

—たくさんの職人さんや、伝統産業に触れ、磨かれてきた矢島さんの感性ならではの方法ですね。ところで、店舗内に金継ぎ※が施されている、とても不思議な商品がありました。この商品はどういったものですか。

※ 金継ぎ:壊れてしまった陶器を漆で接着し、金で繕って再び使えるようにする日本の伝統的な修復技術。

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矢島:
こちらは、「リペア」サービスのご紹介です。“aeru”の商品は、職人さんの手仕事で生み出され、お手入れをすれば一生使えるものばかりです。大人でも使えるデザインなので、子どものときからずっと使い続けられます。ですから、金継ぎという方法で割れてしまったコップや器をお直しをすることも可能です。また、漆の塗り直しや、和紙のボールの漉き直しも行っています。

思い出の品だから、大切に使い続けたいと思って頂ける限り、私たちも使い続けてほしいという想いから、リペアの依頼を承っています。

—今までは、お気に入りのものがあっても、壊れてしまったら「捨てる」という選択しかありませんでしたが、このサービスは本当にありがたいですね。そして、矢島さんの商品への愛、職人さんへの尊敬の念を感じます。

 

◯もう一つの宝物探し

—“aeru”では、プロデュース事業も行っているとのことですが、なぜ手がけられているのですか。

矢島:
企業様や一般の方を対象に「和えるプロデュース事業」という仕事をしています。企業様の秘めている魅力を“宝物”と考え、そこにある物語を見直し、“aeru”のパートナー職人様の技術を活かして、より多くの方々に魅力を伝えていくお手伝いをしています。

「想いを伝える方法」、「原点回帰」、「その仕事の意味」を捉え直し、もう一度手を入れていくお手伝いをする事は、“aeru”の商品開発と一緒だと考えています。

—“宝物探し”という点では共通点ですね。素敵なお仕事です!! 矢島さんの考える会社像をお聞かせいただけますか。

矢島:
ワークはライフの中の一部。ワークとライフのバランスを取るという考え方ではなく、人生の中に、仕事があり、子育てがあり、趣味があり、遊びがあり……と考えています。ですから、人生の段階に応じて、働き方も変容させていけばいいと考えています。社員、つまり仲間一人ひとりの状況を、お互いに共有しながら、限りある人生の時間を大切にしていきたいと思います。仕事と家庭をわけずに、家族のような仲間と、自然な流れの中で子育てをしていくような会社に発展していけたらいいなと思っています。

—働く女性としては、理想的な考えの会社です。子育てをしながら仕事をするのが、当たり前の世の中にはなってきていますが、現実にはその環境はまだ整っていないのが現状ですね。ぜひ実現して、自然な働き方の会社の先駆者として活躍していただきたいです。

 

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◯先人の知恵“当たり前は先人のおかげ”

矢島さんに、たくさんお話をうかがう中で一番印象的だったのが、矢島さんが何度もおっしゃっていた”先人の知恵”という言葉です。

「しなくても良い苦労とは、先人たちがすでに経験した大きな失敗で、失敗を活かすことが知恵だと思います。”先人の知恵”が詰まった伝統産業は、私たちの暮らしを豊かなものにしてくれるに違いありません。その日本の宝物を未来に残すために、“ホンモノ”の魅力を知って、活用していくことが大切です。」

今当たり前だと思っていることが、実は先人のおかげであるということに、たくさんの職人さんと出会った矢島さんとお話しする中で、気がつくことができました。物が溢れた時代になった今、私たちは先人たちの知恵に、もう一度学ぶ必要があるのではないかと思います。

「“aeru”のホンモノの定義は、

”本”当に子どもたちに贈りたい日本の“物“=ホンモノ」とおっしゃっていた矢島さん。

“aeru”のホンモノの商品を使った子どもたちは、“先人たちの知恵”や職人さんの素晴らしい技術、物語を知って、それらが、失ってはいけない日本の“宝物”であると気がつくことでしょう。これから生み出されていくであろう、たくさんのホンモノの商品がとても楽しみです。

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取材・執筆:高橋里佳
撮影・記事監修:チバヒデトシ
写真提供:株式会社和える

 

矢島里佳 (やじまりか)

1988年生まれ、東京都出身慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科卒。
「21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなげたい」という想いから、2011年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業と同時に株式会社和えるを設立。子どもたちの日常品を日本全国の職人と共につくる“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げる。また、イベント企画、講演会やセミナー講師、雑誌の連載、書籍出版など、和のコンシェルジュとして幅広く活躍している。
・和える公式Facebookページhttp://www.facebook.com/aeru.jp
・和える公式twitter https://twitter.com/aeru_
・矢島里佳公式twitter https://twitter.com/Rika_Yajima