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~Remains~ ラジカセと舞踏とシンセサイザーの邂逅

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2015年1月28日


~Remains~ ラジカセと舞踏とシンセサイザーの邂逅


ピアノで添える音模様

 

~Remains~

ラジカセと舞踏とシンセサイザーの邂逅 

 

 

 

 

ラジカセを愛用していた時代がいつの間にか過ぎ去り、今ではインターネットを介した機器で音楽を聴く時代になりました。
機器は軽量化し重みを感じることなく、気軽にダウンロード・コピーによって音データを取り込んでいます。
私は小学校4年生頃までカセットテープの時代を経験し、その後CD/MDへ、さらに現在へと変わる時を見ておりますが、すでにカセットテープを経験していない新しい世代が成人を迎えています。
音を聞くための機器が発展する経過を見るのは、今後新たな操作方法について行けるか心配になりながらも、冷静に考えれば面白いことです。

 

 そんな中、カセットテープを現在に普及させる趣旨をもつ企画が昨年11月に行われました。
「カセット&ラジカセ普及企画VOL.2」と題したもので、始まりは2014年3月に浅草橋天才算数塾で行われた、
カセットとラジカセにスポットライトを当てるイベントです。

会場は神宮前BLOCKHOUSEで、主催はデザインアンダーグラウンドの松崎順一さん、なりすレコードの平澤直孝さん、
浅草橋天才算数塾のセクシーキラー君の3名の方です。
 この企画では12日間の期間中にいくつかのイベントが行われたのですが、私はアーティストのハラサオリさんと共演しました。ハラサオリさんは、現在東京藝術大学に通いながら、国内・国外で活発に舞踏を中心とした活動をされています。 

 

「完全な踊り手ではなく、身体は空間の一部として存在し空間と共に在る、
よって空間を構想することも表現の一部」 

 

- とはハラさんの言葉。
ハラさんは自らを踊り手だとは思っていなく、身体が空間を舞うことは踊り手とはまた別の世界が開いているようです。

 

 

 

二人の公演タイトルは
『Remains』

 

ビクともしない強い存在感のもの(=ハラさん自身)が壁にもたれていて、

照明はLEDライト一本のほぼ真っ暗な空間の中でシンセサイザの一音が響きます。

 

 写真2

写真1

 

 写真のようにクールな空間から始まり、ある曲が繰り返されます。

 哲学者 ジャン=ジャック・ルソー(1712年~1778年 主にフランスで活躍した)作曲の誰もが知っているあの曲です。

 

日本では『むすんでひらいて』と称されて広く伝わる童謡ですが、

もとは1752年10月18日にフランスのルイ15世の前で公演された後、1753年3月1日より一般公開されたオペラ『村の占い師』(Le Devin du village)において、第8場のパントマイム劇で用いられた曲だといいます。この1節では「ルソーの新しいロマンス」というタイトルで歌詞が付けられ、その旋律がヨーロッパ各国へ広まったようで、現在では、旋律は同じで曲名が国によって異なり、日本では、賛美歌・唱歌・軍歌を経て、第二次世界大戦後に現在広く知られている童謡『むすんでひらいて』に至ったようです。

この『むすんでひらいて』をラジカセのテープと鍵盤のついたシンセサイザで何度もremain(存続)し循環していく中で、ハラさんによってラジカセが葬送されるかのように寡黙に運ばれていきます。
10台を軽く超えるラジカセの量は、まるでこの空間が「墓場」であるかのようです。

 

ライトの点滅や空間全体の照明の変化、カセットの早送り/巻戻し時に生じるノイズの連鎖、複数のラジカセによる『むすんでひらいて』の輪唱(順次~同時再生)、ハラさんの身体表現、乱れた巻テープの残骸、音に反応するミラーボール…
これらがクールにルソーの『むすんでひらいて』にリンクしていき、さらにはハラさんの抱えるラジカセからルソーについての説明が再生されます。

そして再び、10台以上のラジカセは葬送されるかのように寡黙に運ばれ、見たことのある景色に変わり、

公演最初のほぼ真っ暗の中でシンセサイザが一音だけ鳴り響く空間に。
びくともしないハラさんの存在感のある身体がシンセサイザを操作する私の手を強く引っ張って1分弱の沈黙。そして公演は終わります。

 

 40分位の公演がクールで抽象的なものになりました。

 

素晴らしいデザインのたくさんのラジカセをビジュアルとして配し、それに加えて30台以上ものラジカセを使用しました。
こんなにもたくさんのラジカセを操作できるとても贅沢な機会と、存在していることが作品になるかのような個性を放つハラさんと共に公演を行えたことを光栄に感じました。 

 

 

写真3

写真4

こんなにラジカセって美しくしっかりしているんだ!と感じる写真

 

 

回想的にコラムでお送りしましたが、この公演は時間が経てば経つほど記憶に蘇ります。

 

 

 【以下、 当日プログラムノートより引用】

~Remain~(タイトル決めはハラさんによる)

 

 remain … 残る、残存する、存続する、生き残る
remain … 遺骨

繰り返される記憶の反復が途切れ消えたときに残った身体を亡骸と呼ぶのなら
ラジカセもまた音の遺骨と言えましょう。

(ハラサオリ / 構成・振付)

 

ラジカセ… 懐かしい響き。
物質から魂が抜けていくように、また新しく吹き込まれるように。
普段から演奏を神事だと思っている私。
デジタル機器にはないテープを巻く音や特有のノイズがあるカセットテープの特徴を演奏に生かしたいと思っています。
ふたたびラジカセが身近に感じることができるようにとの思いが詰まった一晩です。

(寒川晶子 / 音響・演奏)

 

 

一部衣装協力:成田久(キュキュキュカンパニー)
音声協力:ともこ
機材提供:松崎順一
製作:ラジカセ企画

 

 

 

 

公演後にはラジカセを抱えてハラさん(右)と記念写真を撮りました。

写真5 
ハラさん(左) 、壁にはパフォーマンスで使用した巻テープが。

 

 

 

 

写真6 
たくさんのラジカセとハラさん(右)

 

 

 

最後に、ハラさんは近日、東京藝術大学にて卒業制作のパフォーマンスを予定されていますのでご紹介を!

 <ハラサオリ 東京藝術大学卒業・修了制作展>~東京藝術大学上野校地内総合工房棟~

終了制作:
「W1847mm×D10899mm×H2812mmのための振付」(パフォーマンス)

①    大学美術館3Fにて記録写真展示 (1/26-31)

②    総合工房棟3Fにて実演パフォーマンス (1/29-31)
・1月29日(木)13:00-、 16:00- ★ゲスト: 藤原えりみ/美術ジャーナリスト
・1月30日(金)13:00-、  16:00- ★ ゲスト:ハラサオリ母+父 ※父はパネル出演
・1月31日(土)11:00- ★ゲスト: 佐々木敦/批評家
上記のように展示とパフォーマンスの2つの形態にて発表されます。(展示はすでに26日よりスタート)

② の会場:
 【東京藝術大学上野校地内総合工房棟3Fエレベーターを降りて直進、
プレゼンテーションルームを通過してぶつかるT字路を左折した廊下】にて。

 

パフォーマンス では、批評家の佐々木敦さんや美術ジャーナリストの藤原えりみさん、ハラさんのお母様など豪華ゲストが!
当日券も少しあるようですので是非ハラさんのオフィシャルサイト内
http://www.halasaori.com  で詳細をご覧になられることをオススメします。

 

ハラサオリ(パフォーマー/モデル)
日常的な運動にひそむ美しさや不自然をテーマとして、パフォーマンス、映像、ドローイングなどを制作している。
東京藝術大学デザイン科修士在籍中。 www.halasaori.com

 

 

 

 

 



Writer

寒川 晶子

寒川 晶子 - Akiko Samukawa -

ピアニスト

フェリス女学院大学音楽学部器楽学科を卒業。
神奈川県民ホール主催「アート・コンプレックス (塩田千春〜沈黙から〜展) 」でデビュー。
エルメス特別エキシビジョン「レザー・フォーエバー」(東京国立博物館表慶館) レセプションやファッションショー、美術館、プラネタリウム、寺院、イルフ童画館などでコラボレーションや記念演奏会に多数出演。
ピアノを中心とした作曲や即興演奏も行う。

オフィシャルホームページ http://akiko-samukawa.com






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